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魔法師団長と副団長

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セインが侍従として離宮で働くことが決まり、セインは制服に着替えてていた。

「セイン、似合ってる!」

サラは無邪気にセインに抱きつく。

「ん、ありがと」

セインがなんなくサラを抱き止め、チュッとリップ音をたて唇にくちづける。サラは嬉しそうにはにかむ。使用人たちはなんとも複雑そうな顔だ。

「サラ様、そろそろ」

侍女のリサがサラに話しかける。

「あっ!そうだったわ。今日は魔法師団の方で稽古をつける約束だったわね。2人とも魔法師団長にもらった制服とローブに着替えるのに手伝ってくれない?」

「「承知しました!」」

先ほどまでサラが嬉しそうにセインに抱きついたりしているのを見て、少しむくれていた侍女2人。サラから直接指名が入り、セインに勝ち誇ったように口角を上げている。

「ささ、殿方は出ていってくださいまし。サラ様の身の回りのお世話は私たち2人の仕事なんですから。」

そう言ったのはサラのことが大好きすぎるマリーだ。リサはというとまあ…おんなじ感じである。セインは悔しそうにしながら部屋を出ていくが、出ていくときにニヤリと笑ったことに気づいたものは誰もいなかった。

サラは着替え、近衛騎士団の訓練場に行った時と同じように茶髪に緑の瞳に変装した。
魔法師団は近衛騎士団と違い訓練場の場所は誰でも知っている。だが、中の練習風景は見えないように結界でおおってある。サラが訓練場に入ると20歳代の若い銀がかった髪に淡い青色の瞳をした青年に話しかけられた。魔法師団長だ。

「ひと月ぶりですね、王妃様。」

「ええ、お久しゅう。私はセインです。」

サラの言いたいことがわかったのか、団長が返事をする。

「それは失礼致しました、セイン様。では、こちらへどうぞ。」

そう言って団員たちが訓練しているだろう奥まで連れて行ってくれた。
団員たちが訓練しているのを見てサラはふと思う。

「お仕事の方はどうなさいましたか?」

団長はビクッとするが、サラはそれを見逃さない。

「どうなさいましたか?団長様?」

サラは団長に詰め寄る。

「…え、えっと「えっと?なんですか?どうかなさいまして?」

「ふ、副団長に任せております!でっ、ですが休憩時間ですっ!」

団長が自分の職務放棄を認めたが、あくまで休憩時間だという。

「あら、そうなんですの?」

「そっ、そうでございまっす!」

団長がかんだ。サラは手を叩いて団員たちの注意を向けさせる。皆の視線が一斉にサラに向かい、サラは問いかける。

「皆様に聞きたいことがございます。魔法師団長はこの時間は休憩時間ですか?副団長に任せてあると言っているのですが、仕事を休憩時間に他の人に任せるのが魔法師団なんですか?」

皆がざわめき出す。知らない人が急に話し始めたこともそうだが、そもそも休憩時間は休憩時間で、その人の仕事を他の人がやる必要はないのだ。そして今は執務室で書類仕事を行なっているはずの団長が訓練場にいる。

「違いますよ。団長っ!あなたは今日中にやらなければならない仕事を、まだ休憩時間でもないのにほっぽりだして何やってるんですかっ!いい加減にしてください!」

今までいなかった誰かが団長に向かって怒っている。

「ク、クロード…」

「ク、クロードじゃありませんよ!あなたが仕事を投げ出すのは何回目です?言ってくださいっ!」

「あの、お名前をお伺いしても?」

サラは誰か分からなかったので話途中に割り込んで入ってしまった。第三者の声に冷静さを取り戻したのか、クロードとかいう男が自己紹介をする。

「これは失礼いたしました。私、魔法師団副団長にクロードと申します。あなたのお名前をお伺いしても?」

サラは聞かれたんだからこっちも応えなきゃいけないよねと自己紹介をしようとする。

「もうしおくれ「こちらは今日稽古をしてくださるセイン様だ。」

サラを遮り団長がいう。でも王妃と言わないだけで近衛騎士団長よりマシだ。
はあーと副団長の方からため息が聞こえる。

「仕事を抜け出したと思ったら、稽古をしてくださる先生ですって?まずお前がボコられろ!」

「「「「ふっ、副団長っ!」」」」

怒りのあまり暴言が吐かれた。団員たちが焦って副団長と言う。だが、副団長の怒りは止まらなさそうなので、サラが先手を打つことにした。

「その願い叶えましょうか?」

「いいのですか?あ~、ありがとうございます!死ななければ何しても構いませんから!」

副団長が嬉しそうに笑いながら言う。近衛騎士団副団長は部下に苦労させられているが、魔法師団の方は団長らしい。

「もちろんそのつもりです。安心してください。」

副団長に審判を任せ、2人は所定の位置に移動する。

「それでは始めっ!」
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