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中学生編
母vs父子
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私、大塚 麻由美は三十路に入ってから憧れのセンパイと再会し結婚した。そしてその時すでに私には、大学時代に早逝した婚約者との間の子、歩美がいた。
ごーてつセンパイは連れ子の存在を気にするような人ではない。むしろ子供好きなので喜んでうちの子も受け入れてくれた。歩美も歩美で当時からセンパイに懐いておりすぐに父子として打ち解けられたため、私としては本当に助かった。その後の生活も色々あったけれど幸せそのもの。
でも、実は一つだけ不満がある。
「ふふふ、こやつらめ良く寝ておる」
「かあいい~」
居間で胡座をかき、私との子、柔と正道を膝に乗せて笑う夫。そして妹弟の寝姿を目にハートマークを浮かべながら、わざわざ貯金して買った自分用のちょっぴりお高い機種で撮影する娘。
私は知っている。この二人には、お互い我慢し続けていることがあると。
(下手につついて気まずくなったらと思って見守ってきたけど、もう限界だわ)
双子を可愛がりつつ、夫はちらちら歩美の方へも視線を走らせているし、歩美は歩美でたまに撮影の手を止め、何かを考え込んでしまう。
まったく、いつまで恥ずかしがってるの! アシストしてあげますよもう!
「あなた、正道と柔はそろそろお腹が空く頃なので……」
「む、そうか? そういえばそれなりに時間が経っていたな」
まずは食いしん坊の正道から抱き上げ、私の手に預ける夫。う~ん、男の子と女の子をいっぺんに授かったのは嬉しいんだけど、こういう時には困るわね。なんとかあの膝の上を空っぽにしないと。かといって歩美に片方任せたら本末転倒だし……。
ん? 正道のオムツのこの感触──これは使える。
「あら、ウンチしてるわ。ひょっとして柔もかしら?」
「ふむ、柔は……少なくとも、おしっこはしておるな」
最近のオムツは脱がせなくてもわかるんですよ。とっても便利。
「なら二人とも替えます。柔もこちらに」
「手伝おう」
「私も!」
「ストップ! 今回は私一人で!」
作戦が瓦解しかけて、ついつい美樹ちゃんみたいに拒絶してしまった。もう、どうしてあなた達はすぐに私の仕事を取ろうとするの?
「二人とも座ってて! いい? 手伝っちゃ駄目!」
「な、何故だ?」
「ママ?」
ううっ、怪しまれてる。我ながら大根役者だなあ。でも大丈夫。この二人は察しがいいからヒントさえ出せば後は勝手に気付いてくれる。正道のオムツを外しプンと漂ってきた匂いに顔をしかめつつ、その一手を打ち込む。
「えーと、そういえば歩美、あなた小さい頃はおじいちゃんっ子だったわよね」
「へ? 何さ突然」
「しょっちゅう、おじいちゃんの膝の上に座ってたじゃない」
「!」
「ほう……」
よし、食いついた。
驚く歩美と、ゆっくり腰を下ろす夫。再び胡座をかいて頷く。
「なるほど、そういうことか……」
やっぱりわかってくれましたねセンパイ。そういうところ大好きッス!
彼はパンと自分の膝を叩いた。音に驚き正道がビクッとする。ちょっとちょっと、そういうのはウンチを拭いてる時にはしないでください。危うく事故りかけましたよ。
まあ、何はともあれセンパイは、まだ困惑して突っ立ったままの歩美に問う。
「歩美よ」
「え、えっと……」
「俺の膝にも座ってみるか?」
「……」
歩美もやはり、私の言いたいことには気付いたらしい。
そういうことよ遠慮は無用!
──この子は“父親”の膝に座ったことが無い。実父の雨道さんは歩美が生まれる前に亡くなってしまったし、私とセンパイが結婚した時にはもう大人にだっこをねだる歳では無くなっていた。
でも、弟と妹がお父さんにだっこされてるのを見るたび、ちょっとうらやましく思っていたのよね? ママ、ちゃんと気付いてたんだから。
あなたもあなたです。お父さんになったんだし「あやつはもう大きいしな……」なんて考えなくていいんです。
「どうした、臆したか?」
「むっ! 別に怖くなんかないし!」
いや、だからなんであなた達はすぐ勝ち負けの問題にするの?
まあいいか、今回は都合がいいものね。きっと照れ隠しでしょうし。
ぷんぷん怒って勢いをつけ、ごーてつセンパイの膝に座──れない歩美。中腰の状態で動きを止めてしまう。
「……くっ、う……」
顔が真っ赤。中学生だもんね、気持ちはわかる。私だって中学に上がる前には父さんにべたべたくっついたりしなくなった。
でも、このチャンスを逃したら次はいつになるかわからないのよ。
同じように思ったのだろう、センパイが歩美の腰を両脇から掴み、強引に持ち上げて膝へ座らせた。
「ちょ、父さん!?」
「まだまだ軽いものよ。この程度なら十人乗ろうがビクともせん」
そう言って頭を撫でてやるうち、あの子も観念してセンパイに体重を預けた。
「なるほど……こういう感触か。じいちゃんと同じでゴツゴツしてるけど、やっぱりじいちゃんより大きいなあ」
目を瞑り、背中やお尻から伝わって来る感触に意識を集中させた歩美は、やがて何かを察して瞼を開ける。
「……父さん、ちょっとお腹出てきた?」
「ぬうっ、気付いたか」
「中年だもんね」
「今度、当間のやつと稽古して鍛え直す……」
「はは、おじさんなんだから別にいいと思うけどね、お腹が出てても」
だんだん馴染んできたようで肩の力が抜けていく二人。
そのうちセンパイの巨体が震え始める。正道達を起こさないよう笑いを噛み殺しているようだ。
「くく、くくっ……」
「何? いきなり悪役みたいな笑い方して」
こら! 私もそう思ったけど。
「何、このでかい図体も無駄ではなかったのだと思ってな。中学生のお前を膝に乗せても違和感が無い」
「おお」
なるほどと手を打つ歩美。たしかにジャストサイズですね。センパイが大きい分、普通の父親と小さい子の組み合わせに見える。
「じゃあ父さんは、私のためにでっかくなったわけだ」
「ああ、そうかもしれん」
「ふふ」
大成功。一旦離れたら、きっとまた恥ずかしがって同じことはできなくなるでしょうし、今のうちにたっぷり父と子の絆を深めてください。
オムツを替えてあげた双子を抱き上げ、私も二人の対面に座る。
あ、ちゃんと手は洗いましたよ。
「よかったわね歩美」
「ママ……さっきの演技、下手すぎ」
「でも上手くいったじゃない」
「そうだけどさ」
呆れ顔の我が子から視線を外し、今度は夫に呼びかける。
「あなた、次は私もお願いしますね」
「うむ、受けて立とう」
「ほら歩美。膝に座るくらい大人同士でもやることなんだから、あなたも遠慮いらないの。これからもどんどんお父さんに甘えなさい」
「いや、親子と夫婦じゃ感覚が違うから。ていうか娘の前であんまりいちゃつかないでよ。親のそういうの見るの恥ずかしいんだよ」
「でも結婚したのが遅かったから、ママとしてはまだまだ新婚気分なのよね。当面は我慢して」
「くうっ……!」
父と母 仲睦まじく 子は照れる
「そ、そろそろ私、勉強しようかな」
「待て待て。俺はまだ堪能し足りん。念願の長女との触れ合いだ、もう少し座っていくが良い」
流石ッスねセンパイ。子煩悩。
「恥ずかしいから! やっぱり中学生にもなって親の膝に座る子なんていないよ!」
「よそはよそ、うちはうちだ」
「そういうこと」
「うああああああああああああ~……」
じたばた暴れ出す歩美。センパイにがっしり掴まれてて逃げられないけど、その表情はやっぱり、嬉しさを隠し切れていなかった。
ごーてつセンパイは連れ子の存在を気にするような人ではない。むしろ子供好きなので喜んでうちの子も受け入れてくれた。歩美も歩美で当時からセンパイに懐いておりすぐに父子として打ち解けられたため、私としては本当に助かった。その後の生活も色々あったけれど幸せそのもの。
でも、実は一つだけ不満がある。
「ふふふ、こやつらめ良く寝ておる」
「かあいい~」
居間で胡座をかき、私との子、柔と正道を膝に乗せて笑う夫。そして妹弟の寝姿を目にハートマークを浮かべながら、わざわざ貯金して買った自分用のちょっぴりお高い機種で撮影する娘。
私は知っている。この二人には、お互い我慢し続けていることがあると。
(下手につついて気まずくなったらと思って見守ってきたけど、もう限界だわ)
双子を可愛がりつつ、夫はちらちら歩美の方へも視線を走らせているし、歩美は歩美でたまに撮影の手を止め、何かを考え込んでしまう。
まったく、いつまで恥ずかしがってるの! アシストしてあげますよもう!
「あなた、正道と柔はそろそろお腹が空く頃なので……」
「む、そうか? そういえばそれなりに時間が経っていたな」
まずは食いしん坊の正道から抱き上げ、私の手に預ける夫。う~ん、男の子と女の子をいっぺんに授かったのは嬉しいんだけど、こういう時には困るわね。なんとかあの膝の上を空っぽにしないと。かといって歩美に片方任せたら本末転倒だし……。
ん? 正道のオムツのこの感触──これは使える。
「あら、ウンチしてるわ。ひょっとして柔もかしら?」
「ふむ、柔は……少なくとも、おしっこはしておるな」
最近のオムツは脱がせなくてもわかるんですよ。とっても便利。
「なら二人とも替えます。柔もこちらに」
「手伝おう」
「私も!」
「ストップ! 今回は私一人で!」
作戦が瓦解しかけて、ついつい美樹ちゃんみたいに拒絶してしまった。もう、どうしてあなた達はすぐに私の仕事を取ろうとするの?
「二人とも座ってて! いい? 手伝っちゃ駄目!」
「な、何故だ?」
「ママ?」
ううっ、怪しまれてる。我ながら大根役者だなあ。でも大丈夫。この二人は察しがいいからヒントさえ出せば後は勝手に気付いてくれる。正道のオムツを外しプンと漂ってきた匂いに顔をしかめつつ、その一手を打ち込む。
「えーと、そういえば歩美、あなた小さい頃はおじいちゃんっ子だったわよね」
「へ? 何さ突然」
「しょっちゅう、おじいちゃんの膝の上に座ってたじゃない」
「!」
「ほう……」
よし、食いついた。
驚く歩美と、ゆっくり腰を下ろす夫。再び胡座をかいて頷く。
「なるほど、そういうことか……」
やっぱりわかってくれましたねセンパイ。そういうところ大好きッス!
彼はパンと自分の膝を叩いた。音に驚き正道がビクッとする。ちょっとちょっと、そういうのはウンチを拭いてる時にはしないでください。危うく事故りかけましたよ。
まあ、何はともあれセンパイは、まだ困惑して突っ立ったままの歩美に問う。
「歩美よ」
「え、えっと……」
「俺の膝にも座ってみるか?」
「……」
歩美もやはり、私の言いたいことには気付いたらしい。
そういうことよ遠慮は無用!
──この子は“父親”の膝に座ったことが無い。実父の雨道さんは歩美が生まれる前に亡くなってしまったし、私とセンパイが結婚した時にはもう大人にだっこをねだる歳では無くなっていた。
でも、弟と妹がお父さんにだっこされてるのを見るたび、ちょっとうらやましく思っていたのよね? ママ、ちゃんと気付いてたんだから。
あなたもあなたです。お父さんになったんだし「あやつはもう大きいしな……」なんて考えなくていいんです。
「どうした、臆したか?」
「むっ! 別に怖くなんかないし!」
いや、だからなんであなた達はすぐ勝ち負けの問題にするの?
まあいいか、今回は都合がいいものね。きっと照れ隠しでしょうし。
ぷんぷん怒って勢いをつけ、ごーてつセンパイの膝に座──れない歩美。中腰の状態で動きを止めてしまう。
「……くっ、う……」
顔が真っ赤。中学生だもんね、気持ちはわかる。私だって中学に上がる前には父さんにべたべたくっついたりしなくなった。
でも、このチャンスを逃したら次はいつになるかわからないのよ。
同じように思ったのだろう、センパイが歩美の腰を両脇から掴み、強引に持ち上げて膝へ座らせた。
「ちょ、父さん!?」
「まだまだ軽いものよ。この程度なら十人乗ろうがビクともせん」
そう言って頭を撫でてやるうち、あの子も観念してセンパイに体重を預けた。
「なるほど……こういう感触か。じいちゃんと同じでゴツゴツしてるけど、やっぱりじいちゃんより大きいなあ」
目を瞑り、背中やお尻から伝わって来る感触に意識を集中させた歩美は、やがて何かを察して瞼を開ける。
「……父さん、ちょっとお腹出てきた?」
「ぬうっ、気付いたか」
「中年だもんね」
「今度、当間のやつと稽古して鍛え直す……」
「はは、おじさんなんだから別にいいと思うけどね、お腹が出てても」
だんだん馴染んできたようで肩の力が抜けていく二人。
そのうちセンパイの巨体が震え始める。正道達を起こさないよう笑いを噛み殺しているようだ。
「くく、くくっ……」
「何? いきなり悪役みたいな笑い方して」
こら! 私もそう思ったけど。
「何、このでかい図体も無駄ではなかったのだと思ってな。中学生のお前を膝に乗せても違和感が無い」
「おお」
なるほどと手を打つ歩美。たしかにジャストサイズですね。センパイが大きい分、普通の父親と小さい子の組み合わせに見える。
「じゃあ父さんは、私のためにでっかくなったわけだ」
「ああ、そうかもしれん」
「ふふ」
大成功。一旦離れたら、きっとまた恥ずかしがって同じことはできなくなるでしょうし、今のうちにたっぷり父と子の絆を深めてください。
オムツを替えてあげた双子を抱き上げ、私も二人の対面に座る。
あ、ちゃんと手は洗いましたよ。
「よかったわね歩美」
「ママ……さっきの演技、下手すぎ」
「でも上手くいったじゃない」
「そうだけどさ」
呆れ顔の我が子から視線を外し、今度は夫に呼びかける。
「あなた、次は私もお願いしますね」
「うむ、受けて立とう」
「ほら歩美。膝に座るくらい大人同士でもやることなんだから、あなたも遠慮いらないの。これからもどんどんお父さんに甘えなさい」
「いや、親子と夫婦じゃ感覚が違うから。ていうか娘の前であんまりいちゃつかないでよ。親のそういうの見るの恥ずかしいんだよ」
「でも結婚したのが遅かったから、ママとしてはまだまだ新婚気分なのよね。当面は我慢して」
「くうっ……!」
父と母 仲睦まじく 子は照れる
「そ、そろそろ私、勉強しようかな」
「待て待て。俺はまだ堪能し足りん。念願の長女との触れ合いだ、もう少し座っていくが良い」
流石ッスねセンパイ。子煩悩。
「恥ずかしいから! やっぱり中学生にもなって親の膝に座る子なんていないよ!」
「よそはよそ、うちはうちだ」
「そういうこと」
「うああああああああああああ~……」
じたばた暴れ出す歩美。センパイにがっしり掴まれてて逃げられないけど、その表情はやっぱり、嬉しさを隠し切れていなかった。
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