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中学生編
ふたごvsかぞく
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また大きい人がやってきた。
「正道~、柔~、いってきま~す」
この大きい人は、よく自分達を持ち上げる。この行為は“だっこ”と言うらしい。
そして、ほっぺをほっぺにくっつけてくる。
「ああ~、この感触がたまらない。学校にも連れて行きたい」
がっこう。それがなんなのか知らないけど、少し前からそのがっこうが始まったとかで大きい人はあまりみかけなくなった。暗くなると戻ってくる。
「馬鹿を言っとらんで登校せんか。遅刻するぞ」
もっと大きい人は、そう言いながら大きい人の手から自分達をとりあげる。
そして、お尻をぽんぽん叩いた。
「まだうんちはしておらんな……おしっこも……うむ、しておらぬ。外さずともオムツの線の色で判別できるとは便利な世の中になったものよ。美樹など何度俺を謀っておしっこを引っ掛けたことか……」
「父さん、遅刻するよ!」
「ぬうっ! この俺としたことが!」
自分たちをまた寝かせて、走って行くもっと大きな人。
「朝から騒々しい人達ねえ」
笑いながら、自分たちにとって最も見慣れた人が近付いてくる。この人の呼び方はもう覚えた。
「まー、まー」
「まま、まま」
「はい、ママが来ましたよ」
そしてまた、だっこされる。やはり、この人のだっこが一番落ち着く。
自分たちはよく寝る。他にすることが無い。できることが無いと言う方が正しいのかもしれないけれど、どのみちそんな複雑な思考もまだできやしない。
お腹が空いたら泣いてしらせる。するとママがごはんを飲ませてくれる。おいしい。
うんちが出たら泣いてしらせる。するとママがオムツを交換してくれる。
交換してもらった直後、今度はおしっこが出てしまった。
「まとめてしてちょうだい」
そう言ってママはため息をつく。
なんだかおもしろくて、自分たちはきゃっきゃとはしゃいだ。ママも笑顔になった。
あ、青い人だ。
【今日も元気だね】
ママが「ちょっとお掃除するわね」と言って離れると、今度はこの人がきた。
この人は、大きい人と似ている気がする。
青い人は、自分たちの近くに誰もいない時にだけやってくる。
そして特に何もしない。ただ見守ってくれる。
ママが“おそうじ”を終わらせて戻ってくると、そちらを見つめて嬉しそうに、そしてちょっと寂しそうに笑ってからいなくなる。
ママは自分たちを、よく“ベビーカー”というものに乗せてお出かけする。普通のより大きくて大変とたまにぼやく。
いつもの道を歩いていると小さい人に出会った。ママは「だがしやのおばあちゃん」と呼ぶ。まだ自分たちには長すぎておぼえられない。
「こんにちは~」
「こんにちは。お散歩かい?」
「はい、お買い物がてら。あ、そういえば仏壇に供えるお菓子も買わなきゃ」
ママがそう言うと、小さい人は「ほっほっほっ」と笑う。
「無理にここで買わんでええんじゃよ」
「いえ、たまにはあの人の好きだった駄菓子を供えようかと思って。スーパーには売ってなかったので」
「そうかい? なら五○円が五つで二五○円になるよ」
「はい」
「ちょうどね、ありがとう」
ママから丸いものをもらった小さい人は「また来てね」と言った。自分たちはきょとんと目を見開く。
あの人は、どうして青い人と同じ色で光ってるんだろう?
「それはあたしが夏流だからだねえ」
「かながれ? あ、そういえばこのお店、そういう名前でしたね」
ママも目をぱちくりする。小さい人の言ったことが、よくわからなかったらしい。
ぼくとわたしとおんなじ。また楽しくなって手を叩く。
「あら、どうしたの急にはしゃいで?」
「ふふ、本当に元気な子達だ。もう少し大きくなったら二人でうちに来るかもしれないね。その時が楽しみだよ」
外が暗くなった。ママは自分たちを寝かせ、あっちのほうで「ばんごはん」を作ってる。自分たち以外はママの“ごはん”とは別のものを食べる。あれはあれで美味しそうなので、いつか口に入れてみたい。
「ただいま~」
大きい人の声だ。帰ってきた。
「よ~し」
大きい人はバシャバシャと音を立て、手を洗ってから近づいてくる。
「お姉ちゃんが帰って来たぞ~?」
おねえちゃん。よく自分でそう言っている。それがこの人の呼び方なのだろうか?
大きい人は自分たちが起きているのを確認すると、また持ち上げた。
そして床に座らせる。何がしたいのだろう?
「正道、柔」
自分も座った大きい人は、そう呼びかけてくる。まさみち。やわら。それは自分たちのこと?
「お姉ちゃんは今日一日頑張ってきました。二人にも頑張って欲しいです。二人が立派な日本男児と大和撫子になれるよう、お姉ちゃんは心を鬼にするよ」
なんでか、どこかで聞いたことがあるような気のする言葉。
「さあ、今日こそ立って歩いてみよう! それと、ママのことはママって呼べるんだから、お姉ちゃんのこともお姉ちゃんって呼ぼうね!」
ヘイカモン! そう言って手を叩く大きい人。ママの「気の早い子ね」という声も聞こえてくる。
よくわからない。自分たちは、またきょとんとして首を傾げた。
でも、そのうち何かをしなければならないのだと考え、二人で大きい人の方へ近づいてみる。
「う~ん、惜しい! はいはいじゃなくてたっちであんよしてほしかった!」
また、よくわからないことを言う大きい人。それからがばっと自分たちを二人まとめてだっこする。
「でも可愛いから満点! あ~、今日も勝てなかった。二人ともずるいなあ、可愛すぎるんだもん」
こういうのをなんて言うのかは覚えた。デレデレって言うらしい。
「えー、れー」
「てーてー」
「え? 今なんて言った? もしかして、お姉ちゃんって言おうとした!?」
ちがう。
「ついに覚えてくれたんだ! ママ! やっぱりこの二人って天才だよ!」
「はいはい、赤ちゃんのうちはみんな天才。さっ、元天才のお姉ちゃん、そろそろ家事を手伝って」
「は~い」
大きい人は口をとがらせながら自分たちをベッドに戻すと、ママと一緒にごはんを運び始めた。
眠くなってきたので、自分たちは寝ることにした。
ぱちっ。目を開けると、もっと大きい人がいた。
「おお、すまん、起こしてしまったか」
「今まで寝てましたもんね。今夜ちゃんと寝られるかな?」
もっと大きい人とママが、自分たちをそれぞれ一人ずつ抱き上げる。
「なに、子供は寝るのが仕事だ。絵本でも読み聞かせてやればまた眠るだろう」
「ふふ、じゃあ今日もお願いします。読み聞かせはセンパイの方が得意ッスもんね」
「任せよ。ただし、センパイはやめるのだ」
「はい、あなた」
どうやら自分たちはまた眠らなければならないらしい。もうそんなに眠くないから上手に眠れるかわからない。
不安に思っていたら、今まで寝ていたのとは別の場所に寝かされた後、青い人が静かに近付いてきた。
【今日は二人とも疲れてるみたいだしゆっくり寝かせてあげて。おじさんが少し手伝ってあげるからね】
青い人に頭を撫でてもらうと、また眠くなってきた。
……………………。
「おや、もう眠ったのか?」
「珍しいですね、疲れてたのかしら?」
「我らも寝るとするか」
「はい、おやすみなさい」
カチリ。
「うむ、おやすみ」
我が子らと 妻の温もり 腕の中
【おやすみ、みんな】
目を開けると、また大きい人がいた。やっぱり青い人に似ている。
「おはよう正道、柔。さあ、今日はまずお姉ちゃんがオムツを換えちゃうぞ!」
いつも元気な人だ。
そういえば、たまに来る元気じゃない人は、次はいつくるのだろう?
あの人がくると青い人が嬉しそうなので、またくるといいな。そう思いながらオムツを換えてもらう。
「ぎゃあ! 正道はうんちだ!」
「うろたえるな。まずは拭いてやるのだ」
「正道~、柔~、いってきま~す」
この大きい人は、よく自分達を持ち上げる。この行為は“だっこ”と言うらしい。
そして、ほっぺをほっぺにくっつけてくる。
「ああ~、この感触がたまらない。学校にも連れて行きたい」
がっこう。それがなんなのか知らないけど、少し前からそのがっこうが始まったとかで大きい人はあまりみかけなくなった。暗くなると戻ってくる。
「馬鹿を言っとらんで登校せんか。遅刻するぞ」
もっと大きい人は、そう言いながら大きい人の手から自分達をとりあげる。
そして、お尻をぽんぽん叩いた。
「まだうんちはしておらんな……おしっこも……うむ、しておらぬ。外さずともオムツの線の色で判別できるとは便利な世の中になったものよ。美樹など何度俺を謀っておしっこを引っ掛けたことか……」
「父さん、遅刻するよ!」
「ぬうっ! この俺としたことが!」
自分たちをまた寝かせて、走って行くもっと大きな人。
「朝から騒々しい人達ねえ」
笑いながら、自分たちにとって最も見慣れた人が近付いてくる。この人の呼び方はもう覚えた。
「まー、まー」
「まま、まま」
「はい、ママが来ましたよ」
そしてまた、だっこされる。やはり、この人のだっこが一番落ち着く。
自分たちはよく寝る。他にすることが無い。できることが無いと言う方が正しいのかもしれないけれど、どのみちそんな複雑な思考もまだできやしない。
お腹が空いたら泣いてしらせる。するとママがごはんを飲ませてくれる。おいしい。
うんちが出たら泣いてしらせる。するとママがオムツを交換してくれる。
交換してもらった直後、今度はおしっこが出てしまった。
「まとめてしてちょうだい」
そう言ってママはため息をつく。
なんだかおもしろくて、自分たちはきゃっきゃとはしゃいだ。ママも笑顔になった。
あ、青い人だ。
【今日も元気だね】
ママが「ちょっとお掃除するわね」と言って離れると、今度はこの人がきた。
この人は、大きい人と似ている気がする。
青い人は、自分たちの近くに誰もいない時にだけやってくる。
そして特に何もしない。ただ見守ってくれる。
ママが“おそうじ”を終わらせて戻ってくると、そちらを見つめて嬉しそうに、そしてちょっと寂しそうに笑ってからいなくなる。
ママは自分たちを、よく“ベビーカー”というものに乗せてお出かけする。普通のより大きくて大変とたまにぼやく。
いつもの道を歩いていると小さい人に出会った。ママは「だがしやのおばあちゃん」と呼ぶ。まだ自分たちには長すぎておぼえられない。
「こんにちは~」
「こんにちは。お散歩かい?」
「はい、お買い物がてら。あ、そういえば仏壇に供えるお菓子も買わなきゃ」
ママがそう言うと、小さい人は「ほっほっほっ」と笑う。
「無理にここで買わんでええんじゃよ」
「いえ、たまにはあの人の好きだった駄菓子を供えようかと思って。スーパーには売ってなかったので」
「そうかい? なら五○円が五つで二五○円になるよ」
「はい」
「ちょうどね、ありがとう」
ママから丸いものをもらった小さい人は「また来てね」と言った。自分たちはきょとんと目を見開く。
あの人は、どうして青い人と同じ色で光ってるんだろう?
「それはあたしが夏流だからだねえ」
「かながれ? あ、そういえばこのお店、そういう名前でしたね」
ママも目をぱちくりする。小さい人の言ったことが、よくわからなかったらしい。
ぼくとわたしとおんなじ。また楽しくなって手を叩く。
「あら、どうしたの急にはしゃいで?」
「ふふ、本当に元気な子達だ。もう少し大きくなったら二人でうちに来るかもしれないね。その時が楽しみだよ」
外が暗くなった。ママは自分たちを寝かせ、あっちのほうで「ばんごはん」を作ってる。自分たち以外はママの“ごはん”とは別のものを食べる。あれはあれで美味しそうなので、いつか口に入れてみたい。
「ただいま~」
大きい人の声だ。帰ってきた。
「よ~し」
大きい人はバシャバシャと音を立て、手を洗ってから近づいてくる。
「お姉ちゃんが帰って来たぞ~?」
おねえちゃん。よく自分でそう言っている。それがこの人の呼び方なのだろうか?
大きい人は自分たちが起きているのを確認すると、また持ち上げた。
そして床に座らせる。何がしたいのだろう?
「正道、柔」
自分も座った大きい人は、そう呼びかけてくる。まさみち。やわら。それは自分たちのこと?
「お姉ちゃんは今日一日頑張ってきました。二人にも頑張って欲しいです。二人が立派な日本男児と大和撫子になれるよう、お姉ちゃんは心を鬼にするよ」
なんでか、どこかで聞いたことがあるような気のする言葉。
「さあ、今日こそ立って歩いてみよう! それと、ママのことはママって呼べるんだから、お姉ちゃんのこともお姉ちゃんって呼ぼうね!」
ヘイカモン! そう言って手を叩く大きい人。ママの「気の早い子ね」という声も聞こえてくる。
よくわからない。自分たちは、またきょとんとして首を傾げた。
でも、そのうち何かをしなければならないのだと考え、二人で大きい人の方へ近づいてみる。
「う~ん、惜しい! はいはいじゃなくてたっちであんよしてほしかった!」
また、よくわからないことを言う大きい人。それからがばっと自分たちを二人まとめてだっこする。
「でも可愛いから満点! あ~、今日も勝てなかった。二人ともずるいなあ、可愛すぎるんだもん」
こういうのをなんて言うのかは覚えた。デレデレって言うらしい。
「えー、れー」
「てーてー」
「え? 今なんて言った? もしかして、お姉ちゃんって言おうとした!?」
ちがう。
「ついに覚えてくれたんだ! ママ! やっぱりこの二人って天才だよ!」
「はいはい、赤ちゃんのうちはみんな天才。さっ、元天才のお姉ちゃん、そろそろ家事を手伝って」
「は~い」
大きい人は口をとがらせながら自分たちをベッドに戻すと、ママと一緒にごはんを運び始めた。
眠くなってきたので、自分たちは寝ることにした。
ぱちっ。目を開けると、もっと大きい人がいた。
「おお、すまん、起こしてしまったか」
「今まで寝てましたもんね。今夜ちゃんと寝られるかな?」
もっと大きい人とママが、自分たちをそれぞれ一人ずつ抱き上げる。
「なに、子供は寝るのが仕事だ。絵本でも読み聞かせてやればまた眠るだろう」
「ふふ、じゃあ今日もお願いします。読み聞かせはセンパイの方が得意ッスもんね」
「任せよ。ただし、センパイはやめるのだ」
「はい、あなた」
どうやら自分たちはまた眠らなければならないらしい。もうそんなに眠くないから上手に眠れるかわからない。
不安に思っていたら、今まで寝ていたのとは別の場所に寝かされた後、青い人が静かに近付いてきた。
【今日は二人とも疲れてるみたいだしゆっくり寝かせてあげて。おじさんが少し手伝ってあげるからね】
青い人に頭を撫でてもらうと、また眠くなってきた。
……………………。
「おや、もう眠ったのか?」
「珍しいですね、疲れてたのかしら?」
「我らも寝るとするか」
「はい、おやすみなさい」
カチリ。
「うむ、おやすみ」
我が子らと 妻の温もり 腕の中
【おやすみ、みんな】
目を開けると、また大きい人がいた。やっぱり青い人に似ている。
「おはよう正道、柔。さあ、今日はまずお姉ちゃんがオムツを換えちゃうぞ!」
いつも元気な人だ。
そういえば、たまに来る元気じゃない人は、次はいつくるのだろう?
あの人がくると青い人が嬉しそうなので、またくるといいな。そう思いながらオムツを換えてもらう。
「ぎゃあ! 正道はうんちだ!」
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