1 / 3
1.療養所
しおりを挟む
坊ちゃんがまだ学校にあがる前の出来事でございます。
私は坊ちゃんの一等好きなぬいぐるみでした。母さまが縫ってくれた宝物だと、どこへ行くにも一緒でした。
それが平々凡々なウサギのぬいぐるみにとってどれだけ幸せか、想像に難いでしょう。
しかし母さまは病の床にありました。重い病でした。とうとう命も危ないということになり、その年の夏は療養所に行くことが決まりました。坊ちゃんはそれについていかれたのです。
黒塗りの車が私たちを置いて帰っていきました。
療養所は雑木林の中にありました。空気は澄んでおり、木々のさざめきが美しい林でした。
ひと通り身の回りの整理が終わると、私を抱きしめたまま、坊ちゃんは探検に行きたがりました。
二階建ての小さな療養所の中はあっという間に探検し終えてしまったのですね。
母さまはベッドに寝たまま、お医者さまとお話されていましたので、坊ちゃんはすっかり退屈してしまったのでしょう。
看護の方からお許しをいただき、坊ちゃんは私を連れて林の中に踏み入って行きました。よく晴れて、ヒバリの声がこだましておりました。
私は坊ちゃんの一等好きなぬいぐるみでした。母さまが縫ってくれた宝物だと、どこへ行くにも一緒でした。
それが平々凡々なウサギのぬいぐるみにとってどれだけ幸せか、想像に難いでしょう。
しかし母さまは病の床にありました。重い病でした。とうとう命も危ないということになり、その年の夏は療養所に行くことが決まりました。坊ちゃんはそれについていかれたのです。
黒塗りの車が私たちを置いて帰っていきました。
療養所は雑木林の中にありました。空気は澄んでおり、木々のさざめきが美しい林でした。
ひと通り身の回りの整理が終わると、私を抱きしめたまま、坊ちゃんは探検に行きたがりました。
二階建ての小さな療養所の中はあっという間に探検し終えてしまったのですね。
母さまはベッドに寝たまま、お医者さまとお話されていましたので、坊ちゃんはすっかり退屈してしまったのでしょう。
看護の方からお許しをいただき、坊ちゃんは私を連れて林の中に踏み入って行きました。よく晴れて、ヒバリの声がこだましておりました。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる