シャム猫

ジョエルの場合４８

楽しい時ってのは、何でこんなに、時間が経つのが早いのか。


「じゃあ、また、明日ね」


１６時３０分

そろそろ、部屋に帰ってないといけない時間。

するっと、腕の中から抜け出されると、寂しくて、もう少しと引き止めたくなる。


「そんな顔しないで、帰れなくなる」


そっと、俺の頬に手を添え、唇を寄せてきて、触れる寸前に、そう言われた。

帰らないで欲しいと思う気持ちが、表情に出てしまっていたのだろう。


湖箔に好きになってもらいたい。

湖箔に触れたい。

湖箔と付き合いたい。

湖箔に受け入れてもらいたい。

そう願うその都度、もし叶うなら、それだけで充分、そう思っていたのに、一つの願いが叶うと、次の願いが、それも叶うと、更に・・・際限がない。

湖箔と一つになれたなんて、奇跡のような事なのに、それだけで満足ができなくなっている。


湖箔とずっと一緒にいたい。


今回の願いは、当分叶いそうにない。

この学園を卒業する時、湖箔は１８、俺は２７、大学を出る時、２２と３１・・・長い。

遠距離は無理だ。

心変わりされそうで、怖い。

湖箔がどこの大学に進むのか分からないが、できれば一緒に住みたい。

誰よりも近くにいたい。

まだまだ先の話なのに、今から不安になってる。

こんなんじゃ、ダメだな・・・


「ジョエル？大丈夫？」

また顔に出てたか？

「・・・大丈夫。でも、もう少しＫＩＳＳしたい。いい？」

コクンッ

「いいよ///」

腕を引き、再び膝の上に座らせ、〝愛してる〟と囁きながら、何度も唇を重ねた。


「俺も、愛してるよ」

恥ずかしいといって、なかなか言ってくれないが、ハニカミながら、そう返してくれた。

今は、それで充分。

今は、そう満足するべきなのだろう。

ずっとはいられなくとも、すぐに会える場所にはいるのだから。