水と涙

コード

目が覚めた午前5時。
頼む、太陽。今日は少し遅れてくれ。
寝坊してくれ。
ねぇ、頼むから。
ねぇ、ねぇ・・・。
目を開けたくないんだ。
光が怖いんだ。
ドタ、ドタと、階段を上ってくる音。
起こしにくる……！？
そんな時、ふとある事が頭をよぎった。
"嫌なら行かなければいい"
そうだ。そうすればいい。そうするはずた。
でもそれはできなかった。私の中の何かが許さなかった。
できない。
「美桜。起きなさい」
「んんんんん」
深く、布団を被った。
「嫌なら、行かないでいいのよ。時には、逃げなきゃいけない時だって…」
「嫌だ！」
勢いよく布団を跳ね飛ばした。
「行きたくないよ。家から出たくないよ。一歩も、今日は。でも…………逃げたくないよ………っ」
泣きそうだ。
ほらまた、泣けない自分に苦しくなった。
「勝手なこと言ってごめん、」
すると母はベットの上で強く、強く美桜を抱きしめた。
「美桜。。。あんた、大きくなったね」
「身体はね」
「もし、もっと早く気付いてあげられてたら………」
肩に"水"を感じた。
それは母の流した、大粒の涙だった。
「そんなこと言わないでよ…。私ももっと早く言えば………」
母の肩に"水"は無い。
「私のために泣いてくれてありがとう・・・っ」
母の肩に"水"は無い。
互いの鼓動を感じ取る。
母の鼓動は早かった。私と同じくらい早かった。
今日は何処ぞの物語の最終回みたくなりそうだ。