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 朝食の間、クロードの視線を感じてはいた。

 自分が嘘をついたり隠し事をするのが苦手だということは分かっている。別に、ルシアスから言われたことを子供たちはおろか、クロードに知られたとしても問題はない。……ない、はずなのだが、何となくその話題に触れられることが怖くて、メイベルは逃げるように出勤した。

 だが、ずっと逃げ続けることなどできやしない。同じ屋根の下で暮らしているのだ。逃げようがない。

「領主の息子に何か言われたのか?」
「えっ?!」

 『白猫亭』からの帰り道。迎えに来てくれたクロードが突然切り出した言葉に、メイベルはすっとんきょうな声を上げた。夜中で人通りがないからか、その声は嫌に響く。慌てて口を閉じ、どう答えるべきかと悩んだ末、結局は頷いた。

「老朽化が激しいから……教会を建て直す話が出ているそうです。孤児院は……取り壊しになると」
「そうか……」

 元々、建て直しの話は前からあった。祀られている女神の信仰は根強いため、教会がなくなる心配はない。ただ、問題は孤児院の方。今は亡きシスターへの敬意から大目に見てくれていたに過ぎないのだ。

「子供たちの行き先が決まってからの話だそうですが」

 子供たちの里親は随時探している。今いる八人の中で、行き先が決まっているのはクラリアだけだ。

「……君は、どうするんだ?」
「私、は……」

 グッと唇を噛む。孤児院はメイベルの家だ。シスターが亡くなって、家まで無くしたくなくて必死になって頑張ってきた。シスターが守ってきたものを、子供たちを守る。それだけを支えに生きてきたのだ。それが無くなるなんて、何を目的に生きればいいのか分からない。
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