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 訝るメイベルに、二人の目がなんだか生暖かいものになる。さらに眉を寄せていると、客が来たのかドアベルの音が微かに聞こえ、マリリンの三角の耳がピクリと動いた。

「お客様だわ。残念だけど、話はここまでね」
「え、店長? ねぇ、ロアナさん、分かってないって何……」
「ああ、悪いけど、そこの野菜の下拵えお願いね。今日は団体客も来るから」
「え、何時に?」
「あと一時間くらいかね?」
「早く言ってよ!」

 下拵えだけ終わらせても意味はない。客が来た時にいかに早く料理が出せるかが重要だ。ロアナの腕前は承知しているが、手際の良い調理を可能にしているのがその下準備なのだ。

 メイベルは壁にかかったエプロンを引っ掴むと、後ろ手でリボンを結びながら今日の予約内容を確認する。

「団体客が二組もいるじゃない! 時間は少しズレてるけど……」

 『白猫亭』を訪れるのは予約客だけではない。どれがどのくらい出るかなんて正確な数は分からないが、だいたいの傾向はこれまでの経験から分かっている。あとは臨機応変に対応するのみだ。

 壁側に置かれた低い椅子に座り、小さなナイフを手にまずは山と積まれたジャガイモに手を伸ばす。そしてそこからひたすらナイフを動かし続けた。
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