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私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと優れた知性で知られていました。私たちが暮らす城は、エルキュールの父であるヴァンデール伯爵が統治するものでした。

出会った当時、私はただの未熟者な娘で、エルキュールは将来有望な騎士でした。婚約の知らせが届いたとき、私は漠然とした不安を感じていました。立派な城に行くなど思ってもみませんでしたから。結婚生活なんて本当にできるのかと、あれこれ空想しました。しかし、エルキュールと初めて目が合ったとき、その不安はすぐに恋心に変わりました。

貴族社会では珍しく、私とエルキュールは恋愛の末に結婚しました。もちろん、出会いのきっかけ自体は婚約です。つまり政略結婚ではあったのですが、互いに一目惚れしました。私にとって、人生で初めての一目惚れでした。しかも、その相手と結婚することになったのです。これ以上の喜びはないでしょう。

そしてエルキュールもまた、私の夫になった後も、私にだけに愛情を向けてくれました。市場への買い物の際も、夫は私の手を引いて一緒に行きました。そのたびに新鮮な果物や華やかな花を買い、私を喜ばせてくれました。また、室内での時間も夫は一緒に過ごすことを好み、トランプゲームをしようと誘い、時には私が勝つまで何度も遊んでくれました。

夫婦一緒に過ごす日々は、一見すると平凡なものでしたが、私にとって特別なものでした。結婚したばかりの頃は、城の敷地があまりにも広いため、その全体像を把握するだけでも大変でした。夫はそんな私を気遣い、城の中も外も、まるでデートするように案内してくれました。庭園では花の名前を一つ一つ教えてくれて、私たちは一緒に花束を作り、寝室に飾ったこともあります。また、夫は剣術も教えてくれました。彼の手が私の手を握る瞬間、私は天にも昇るようなときめきを感じたのを覚えています。

夫婦なのだからこれくらい当然かと思うかもしれませんが、夫婦が仲良く一緒にいることは、貴族社会ではまれなことなのです。

私は、二人の愛情がずっと変わらないものと信じていました。

しかし、夫婦関係は一夜にして一変しました。忘れもしません。じめじめとした雨が窓ガラスを濡らす憂鬱なある晩のことでした。

私が夫の部屋を訪ねると、見知らぬ女性がベッドに寝ていました。私はショックで何も言えず、口を覆いながら部屋を出ました。

その日をきっかけに、私たち夫婦はまるで正反対に舵を切ったのです。
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