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私はこの時点で、シャルロットの心配の源が服にあるのだと理解しました。


「やっとわかったよ。君は新しい服が欲しいんだね。でも、君も知ってのとおり、我が家の家計は火の車なんだよ。結婚してから屋敷や家具は最低限そろえられたけど、今は余分なお金がない。小作地の牛が逃げちゃって、新しいのを何頭か買わなくちゃいけない。あと、先日の大嵐で納屋の屋根が吹き飛んでしまって、それの修理もある。ただでさえ大した収穫物もない土地なのに、出費ばかり重なっているんだ」


「……わかってますよ。あなたが口を開くときはいつも、領地の不平不満なんですから!」こう言うとシャルロットは掛け布団を頭までかけてしまいました。「もうわたしに話しかけないで! つまらないことを言ってしまって後悔してるわ! やっぱり話すんじゃなかった」


「ちょっと待って、買わないとまでは言ってないじゃないか。怒らせてしまったかい?」


「怒ってなんかいませんよ。ただ……あなたの経営が上手くいっていようがいまいが、わたしにはどちらでもいいんです。はあ……どうしてこうなってしまったんでしょう。わたしはかつて、伯爵様の息子の嫁にどうかと言われたこともあるんですよ? 他にもわたしを妻にと望んだ人は、片手ではおさまりません。それなのに、あなたが父を頻繁に訪ねて来るものだから……押し切られてしまったんです。どうして冷静な判断ができなかったのでしょう。わたしは今でも父をうらんでいますし、はっきり断らなかった自分自身もうらみますわ!」


「おそろしいことを言わないでくれ……。僕は僕なりに全力を尽くして君の願いを叶えてきたじゃないか! 愛しているよ!」


「こんなこと、わたしだって言いたいわけじゃありません。でも想像してみてください。わたしを妻にと望んだ方たちは、すでにみな奥様をお持ちです。その奥様方が、今のわたしのようなみすぼらしい格好をしていると思いますか? しかもその奥様方は、わたしの実家よりも低い身分の人たちばかりです。わたしの晴れ着よりも、その奥様方の従者のほうがいい服を持っています! ああ! なんて悲しいことなのでしょう。不遇に耐えるのはいつも心の清らかな人間です。わたしはもう生きていたくない! この世からさっさと消えることができれば、あなただってわたしのようなワガママ女を厄介払いできますし、せいせいするでしょうね!」


「落ち着いてくれよ! 新しい服を仕立てる予算についてはまた十分に考えるから……。とりあえずこっちを向いてよ」そう言って私も掛け布団の中に入り、反対を向くシャルロットを後ろから抱きしめました。しかし、シャルロットは手のひらで私の胸を突き飛ばしました。


「わたしにかまわないで! 触ってほしくないの。わたしはこれから何も欲しいなんて言いませんし、あなたは経営に専念してください。わたしよりも経営のほうが大事なんでしょうから」


「機嫌を損ねてしまってすまなかったよ。すねないでくれ……。君のことが何よりも大切に決まっているじゃないか」


「口ばかりの男は嫌いです」


「もし……僕が死んだら、君は他の男とすぐに結婚してしまうのかい?」


「――そうなるでしょうね。わたしはどうせ、父の所有物のようにどこかに与えられるだけなのですから」


シャルロットは鼻をすすりながら、続けて言いました。


「でも……もしあなたが死んだとしても、あなたと過ごした思い出はきっと消えてくれません! 他の男の家の中で、何度もあなたのことを思い出すでしょう。だから、安心してください。 今日からあなたがわたしに触れられないのと同じように、他の男にも触れさせやしません……。それよりも……あなた……長生きしてくださいね。わたしよりも早く死ぬようなことになるなら、どうにかしてわたしのほうを先に死なせてね……」
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