上 下
7 / 9

7

しおりを挟む
私は、手紙を握りつぶす父を見て言った。
「お父様、どうされました? タイスからの手紙ですよね?」

「あいつ……留年したらしい。次留年したら王立学院を退学だ。あのアホ」

なるほど……
まああれだけ遊びまくっていたら留年もするわよね。馬鹿なタイス。勉強しなくてもできるんじゃなかったんですか~? ざまぁみろ。

私は父に言った。
「え! タイスはかつて、王立学院はほとんど勉強していなくても卒業できると言っていたのですが……」

「そうだ。タイスが入ったのは、入学試験だけが難しくて、入った後は楽な王立学院だ。肩書きにしかならんクソ学院だが、頭の固い貴族社会はまだ学歴が大事だ……。入学試験だけがんばればいいからタイスにうってつけだと思ったのに……。まさか留年するとは……」

私はタイスの学院とは正反対の、入るときは簡単だけど卒業するのが難しい貴族学院に入っていた。必死で勉強したから卒業できたけど、それは入る前から覚悟ができていたからかもしれない……。

私にもタイスからの手紙が来ていた。
文面はこのようなものだった。
『お姉ちゃんへ。ジル様とはうまくやっているわ。わたしがお姉ちゃんの代わりによく癒やして差し上げています。欲しいものはなんでも買ってくださるし、ジル様はとても優しくていい方よ。お姉ちゃん、戻ってこなくていいからね。私は街で遊びながら、ジル様の安定した家で暮らしていくわ。じゃあまたね~」

手紙を見て、震えが止まらなかった。ジルはまだタイスとお熱い関係を続けているのね。タイス本人からの宣戦布告がきたような気がした。

絶対に許さない……。

私は父にタイスからの手紙を見せた。
「お父様、私もタイスから手紙がきました。やはりまだジルと関係が切れていないようですし、伝染病がはびこる街へも出かけているようです。本人がそう言っています」

父は顔をしかめて、手紙を穴が開くほど見た。
「タイス……戒厳令を当然のように破りやがって……。勉強しているならまだ許せるが、勉強もしないで遊んでいるとはな……。よし、ジルに言って、タイスを追い出させる。タイスは王立学院の寮に住まわせよう」

「……寮が……あったのですね……」

寮があるなら初めからタイスを寮に入れてほしかった。私の苦労はなんなの……。

父は私の落胆する様子を見て言った。
「すまなかったな。タイスを寮に入れて同級生たちと遊ばせるよりも、お前らのとこに預けて守ってもらいたかったんだ……。でも結果的に悪い方向になってしまった」

「いえ……気になさらないでください」

「早く手紙を書くからな」


こうして父は、ジルとタイス双方に手紙を書いた。

しかし、ジルは想定外の反応をするのだった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神ですらわからないその先は・・・・

ひとみん
恋愛
愛する婚約者が他の女とキスしている決定的な現場を見たソフィア。 もう、苦しまなくていいわよね?楽になるわ。 早々に婚約者を見限った令嬢と、後悔と未練にとらわれた令息のお話。 はっきり言って、すっきりしません。モヤモヤかもです。 スカッとしたのがお望みの方は、回れ右でお願いします。

姉の引き立て役として生きて来た私でしたが、本当は逆だったのですね

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵家の長女のメルディナは美しいが考えが浅く、彼女をあがめる取り巻きの男に対しても残忍なワガママなところがあった。 妹のクレアはそんなメルディナのフォローをしていたが、周囲からは煙たがられて嫌われがちであった。 美しい姉と引き立て役の妹として過ごしてきた幼少期だったが、大人になったらその立場が逆転して――。 3話完結

妹は彼氏がいるのに私の婚約者と浮気していたので、妹の彼氏にチクります!

ほったげな
恋愛
私には年上の婚約者がいる。しかし、妹と浮気していた。だから、妹の彼氏に浮気のことをチクりました。

やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」

家紋武範
恋愛
 ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。  ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。

婚約破棄を受け入れたはずなのに

おこめ
恋愛
王子から告げられた婚約破棄。 私に落ち度はないと言われ、他に好きな方が出来たのかと受け入れると…… ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

イケメンな幼馴染と婚約したのですが、美人な妹に略奪されてしまいました。

ほったげな
恋愛
私はイケメン幼馴染のヴィルと婚約した。しかし、妹のライラがヴィルとの子を妊娠。私とヴィルの婚約は破棄となった。その後、私は伯爵のエウリコと出会い…。

お針子と勘違い令嬢

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日突然、自称”愛され美少女”にお針子エルヴィナはウザ絡みされ始める。理由はよくわからない。 終いには「彼を譲れ」と難癖をつけられるのだが……

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

処理中です...