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こうしてコルテオはまた文無し生活となった。馬鹿といえば馬鹿かもしれないし、他者との課題の分離ができていないと言えばそれまでかもしれないが、いったいこの世界の誰がやすやすと割り切って生きてきたというのか? 失敗を犯さずに歩んでこれたというのか? 身を破滅させるほど人を好きになる人もいる。そもそも人を好きにならない人、性愛に興味がない人もいる。では問おう。破滅しなければ正義なのか? 効率よく安全な人生が、あなたの望みか?

ベランジェールにはもう頼れない。ただでさえ毎月100フラン多く出してもらっているのに、これ以上のお願いは絶対にできないとコルテオは考えた。相談など、恐ろしくてできない……。しかし以前の皿洗いには戻れないし、こっそり金を稼ぐ方法はあるのか……? 泥棒でもする? いやいや、犯罪者になってしまっては、ヴァネッサと結婚できないではないか!



天気は曇り空が続き、風は湿っていた。窓際でぼけっとしていても、陽は入ってこないし、食べ物が落ちてくるわけでもない。通りを歩いている人たちがまるで亡霊のように見えてきて、彼らはどのようにしてこの残酷な世の中で食いつないでいるのだろうかとコルテオは思った。そしてヴァネッサと抱き合った位置に何度も立っては、思い出の中で魅惑的な幻影をなで回し、床にキスをした。

結局、彼は知り合いを辿り、借りられるところから金を借りた。そして生活を極限まで切り詰めた。なるべく外では快活に振る舞い、悲壮感を出さないようにした。絵の具を極力消費しないように、作品は小さなものを作った。以前に提出した展覧会の絵は大きな一枚絵の大作だったので、それとは対象的な小品を作りたいと説明できたし、都合がよかった。

しかしそんなコルテオの浅はかなもくろみは、もちろん失敗に終わる。ベランジェールから厳命を受けていたセバスチャンがコルテオの状態にすぐさま気づいたからである。セバスチャンはヴァネッサとアランの監視も続けていたため、モデル代の値上げについても簡単に調査済みであった。

セバスチャンはベランジェールにコルテオについて報告した。すると、それまで静観していたベランジェールだったが、コルテオに真実を告げようと決断した。


「もうコルテオに伝えるしかないわね。ヴァネッサはアランと一緒に暮らしていて、騙されているんだよって……。あの子もどうしてヴァネッサについてもっと深く知ろうとしないのかしら。一度家に行きたいとか、言ってみればいいのに」ベランジェールはコルテオの作品群を眺めながら残念そうにつぶやく。


「さようでございますね、奥様。どのようにお伝えしましょう?」


「……そうねえ……。難しいところだけど、言葉で伝えるだけではわからないと思うわ。あなたがコルテオをヴァネッサの家に連れて行って、ヴァネッサとアランが同棲しているっていう現実を見せてあげなさい。酷なのはわかってるけど、コルテオのこれからの生活と成長に必要でしょう」


「かしこまりました。ではコルテオを連れて、彼らの家に行きます。アランはほとんど毎晩飲みに出ていて遅くに帰宅するのですが、そのタイミングに合わせます」


「セバス。コルテオの様子をよく観察して、スケッチに残しておくのよ。わかったわね?」


「はい。苦難の過去だけが画家に追憶を描かせる、ですね」


芸術への情熱、特に絵画への異常な執着を見せるベランジェールに隙はなかった。
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