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番外編 ドミニク、愛人に捨てられる③

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投げ飛ばされた俺はカッとなった。


「なにをする!?」


男はため息をつき、やれやれと言わんばかりだった。


「アンナにお願いされたんだよ。あんたを追い出してくれってな。大人しく帰ってくれないか?」


「嫌だね。力づくでも会いに行く!」


俺は男にタックルした。しかし男は俺を簡単に抱きかかえ、空中から床に叩きつけた。背中に雷が落ちたかのような衝撃が走った。


「ぐわっ、かっ、痛い……」


男は俺に手を差し伸べてきた。


「あんたには同情するよ。あんたがアンナを好きだというのに偽りはないんだろう。だけど、アンナがあんたを好きでないという気持ちも、偽りじゃないんだ。『世界の滅亡』は、全員を動物にした。地位も名誉もなくて、あるのは腕っぷしと気持ちだけだ」


青二才に説教をされて、俺はさらに気分が悪くなった。男の手は無視して、自分で立ち上がった。


「いいよ、出ていけばいいんだろ。勘違いするなよ。負けを認めたからじゃない。こんな非常事態だからこそ、アンナはお前みたいな巨漢を選んだだけだ。貴様は所詮ボディーガードなんだよ! なあ、そうなんだろ? アンナ!」


俺は出せる限りの大きい声で、二階に向けて叫んだ。

男は小刻みにうなずいていた。


「すまない」と男は言った。


俺は出ていけという言葉どおり、居酒屋を出た。そして正面の店の前を陣取った。その店は「世界の滅亡」を前に閉店したようで、都合がよかった。

ここで待っていれば、いずれアンナが出てくるだろう。そうすれば話ができる。話をすればきっとわかってもらえる。そう思った。

夜は涼しくて快適だった。今夜はもうアンナは外に出ないだろうと思い、眠ったのだが、それが間違いだった。
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