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エドガーとコルテオが手際よく準備し、夕食の時間となった。ナタリーという客人がいるため、二人はいつも通りクラリスの分まで食事を作るか迷っていたが、悩んだ末に作ることにした。

クラリス分の食事を朝昼晩と用意するのはバーナード伯爵の厳命である。もちろん、食事はそのまま捨てることになるのだが、バーナード伯爵にとってそれは妻の体調不良もしくは食欲不振なのである。




食事が運ばれると、ナタリーは感激した。人生で初めて食べるご馳走と言っても過言ではなかった。


「すっごく美味しそう! お魚もお肉も果物もある! 伯爵様、本当にわたしが食べてもいいんですか?」


「もちろんだよ。今日はナタリーが来ているから、コルテオが張り切って作ったんだろう。さっき庭園にいた時も、あんなに楽しそうにしているコルテオは見たことがなかった。普段、コルテオはどんな子だい?」


無邪気なナタリーに気を許したバーナード伯爵は、夕食を運ぶコルテオをニコニコ眺めながら、楽しそうに会話している。そばで給仕していたエドガーは珍しく主人の表情が柔らかいことに驚いた。

仕事を進めるコルテオは「いつも通りですから……」と、恥ずかしそうにつぶやきつつ、ちらちらとナタリーを見た。そんなコルテオに応えるように、ナタリーは微笑んだ。


「コルテオはいつも頑張りやさんで、とても優しいんです。買い出しをあっという間に済ませたかと思うと、道でおばあさんがつまづいたら助けてあげるし、それに……必ず花屋にも顔を出してくれるんです」


ひょんなことを聞いたバーナード伯爵はいたずら顔をして、コルテオに意味ありげな視線を送る。


「ほう……花を買ってきてくれなどとお願いした覚えはないのだがな……」


バーナード伯爵のささやきを聞き、コルテオが慌てて(しーっ! 黙っててくれよ)とナタリーに訴えかける。立てた人差し指を口元に添えながら。

ナタリーは(はっ! まずいまずい)と勘づく。


「伯爵様。コルテオが花屋に寄るといってもほんの挨拶程度ですよ! コルテオは仕事を一生懸命していますし、サボっているわけじゃありません!」


ナタリーがコルテオをかばっているのを見て、バーナード伯爵は愉快に笑った。十歳ともなると、立派に社会を構成する一員なのだと思った。

こうして食事が運ばれる間、バーナード伯爵とナタリーの雑談は続いた。ナタリーにとって、目の前にいるのは”普通の”立派な伯爵様だった。実際、バーナード伯爵は妻クラリスに関すること以外なら、至ってまともなのだ。むしろ教養溢れる才人である。政務を弟に引き継いでからは読書にふけっている時間が多いが、乗馬の腕もヴァイオリンの腕も一流だった。



   ***



食事の準備が整うと、ご機嫌のバーナード伯爵はエドガーに命じた。

「夕食の時間だ。クラリスを呼んできてくれ」
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