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「ごめんねイブリン、家どうしの都合で私がオーウェンと婚約することになってしまって……」

私クレアはイブリンに謝った。

申し訳なかった。

オーウェンとイブリンは幼なじみで、学園でもよく一緒にいる。
二人は付き合っているんじゃないかと噂になるくらいで、一方の私はオーウェンと顔見知り程度。話したことは何度かあるけど、オーウェンの態度は素っ気ない。たぶん好かれていないと思っている。

私もオーウェンとの婚約の話を聞いたとき、とても驚いた。
そしてオーウェンといつも楽しそうに話しているイブリンの顔が思い浮かんだ。

(私よりもぴったりの婚約者がいるのに……)

すでにオーウェンの兄とイブリンの姉が婚約していたから、そういう意味でもオーウェンとイブリンは婚約できないのかなと思った。私たちは貴族の家に生まれた以上、政略結婚せざるをえないから。

イブリンは暗い顔で言った。
「謝ってどうにかなる問題じゃないよ。オーウェンもショックを受けているみたい。本当はわたしたち、ラブラブなの。結婚しようねってお互い言うくらい。はっきり言って、クレアのこと恨んでる。謝るくらいなら婚約を破棄してよ」

やっぱりそうだったんだ……。二人は愛し合っていて、私は邪魔者……。

私だってなんとかしたい。でも、どうしようもないじゃない。
「ごめんなさい……。でも私からは婚約破棄できないことになっているから……」

謝るしかなかった。

オーウェンとの婚約が決まったとき、実は私は心の中で嬉しかった。学園の同級生なので、オーウェンがどんな人かは知っていた。たくさんしゃべるタイプではないけど、優しくて読書好き。休み時間に読む本が似ていて、物語について話せばきっと話が合うだろうなと思っている。勉強ができて、友達にもよく勉強を教えている。面倒見のいい人だ。

オーウェンと結婚できるなら、幸せな生活を送れそう――。
そんなふうに想像してしまう自分と、イブリンからオーウェンを奪う自分との間で悩んでいる。このまま家のせいにして、自分だけはしめしめとオーウェンと結婚するなんて、許されるのだろうか……。

家に翻弄されるのが結婚かもしれないけど、私自身で行動できることはある。

そう思った私は、オーウェンに婚約を破棄してもらおうと思った。オーウェンだからどうにかできる問題ではないかもしれない。でも、少なくともオーウェンが嫌だと言えば、オーウェンの両親も考え直すんじゃないだろうか。私が身を引くことで、オーウェンとイブリンは結ばれる――。



放課後、私はオーウェンに話しかけた。

「オーウェン、話があるの」
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