6 / 13
6
しおりを挟む
「お父様。私の部屋まで聞こえてきました。賠償金が払えないというのは嘘ですよね? 裁判で勝つ方法はないのですか?」姉が言った。
姉は昨日買ってもらったばかりの洋服とアクセサリーをじゃらじゃら身に着けていた。その輝きも、伯爵家の滅亡を前にしては色あせて見えた。
姉は続けて言った。
「これからもエバンズ家の生活は変わらない。そうでしょう? 私はまだまだほしいものがたくさんあるの」
父も母も答えられないでいた。
重苦しい沈黙が私たちのいる広間に流れていて、騒がしいのは使用人の部屋のほうだけだった。
私も不安だった。
エバンズ家が潰れてしまったら、帰る家がなくなる。
どんなに出ていきたいと思っていた実家でも、
いざなくなるとどうなるのだろうか。
賠償金を負ったエバンズ家は、払い終えるまで一生払い続けなければならない。結婚すると家から出ることになるので支払い義務はない。だから私はこのまま結婚すれば関係ないけど、両親と姉はずっと賠償金に苦しめられることになる。ただ、私ももし離縁されたらエバンズ家に戻らなくてはならないから、他人事ではない。
玄関の扉をノックする音がコンコンコンコンと聞こえた。
使用人が招き入れたのは、オリバーだった。
「あの、みなさん顔が暗いですが……どうかしました?」オリバーが言った。
オリバーに隠していてもいずれバレるだろうし、きちんと話しておくのが大事だと思った。
「お姉様の件なんだけど……王家への嘆願書が受け入れられなかったの。裁判になる。払いきれないほどの賠償金を請求されてる」
「え……嘆願書を出すときに慰謝料払ったのに……それでもだめだったか」
オリバーもあきらかに動揺していた。
そして先のことを考えて、思考を巡らせているような感じだった。
かろうじて椅子に座っていた母がまたわなわなと震え始めて、父に声を荒げた。
「どうしてよ! あんなに財産があったのに! どうして払えないのよ! あなたが使い込んだんでしょ!」
こうして状況はどんどん悪化していく……
姉は昨日買ってもらったばかりの洋服とアクセサリーをじゃらじゃら身に着けていた。その輝きも、伯爵家の滅亡を前にしては色あせて見えた。
姉は続けて言った。
「これからもエバンズ家の生活は変わらない。そうでしょう? 私はまだまだほしいものがたくさんあるの」
父も母も答えられないでいた。
重苦しい沈黙が私たちのいる広間に流れていて、騒がしいのは使用人の部屋のほうだけだった。
私も不安だった。
エバンズ家が潰れてしまったら、帰る家がなくなる。
どんなに出ていきたいと思っていた実家でも、
いざなくなるとどうなるのだろうか。
賠償金を負ったエバンズ家は、払い終えるまで一生払い続けなければならない。結婚すると家から出ることになるので支払い義務はない。だから私はこのまま結婚すれば関係ないけど、両親と姉はずっと賠償金に苦しめられることになる。ただ、私ももし離縁されたらエバンズ家に戻らなくてはならないから、他人事ではない。
玄関の扉をノックする音がコンコンコンコンと聞こえた。
使用人が招き入れたのは、オリバーだった。
「あの、みなさん顔が暗いですが……どうかしました?」オリバーが言った。
オリバーに隠していてもいずれバレるだろうし、きちんと話しておくのが大事だと思った。
「お姉様の件なんだけど……王家への嘆願書が受け入れられなかったの。裁判になる。払いきれないほどの賠償金を請求されてる」
「え……嘆願書を出すときに慰謝料払ったのに……それでもだめだったか」
オリバーもあきらかに動揺していた。
そして先のことを考えて、思考を巡らせているような感じだった。
かろうじて椅子に座っていた母がまたわなわなと震え始めて、父に声を荒げた。
「どうしてよ! あんなに財産があったのに! どうして払えないのよ! あなたが使い込んだんでしょ!」
こうして状況はどんどん悪化していく……
51
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。
はゆりか
恋愛
「お前との婚約は破棄させもらう」
「破棄…ですか?マルク様が望んだ婚約だったと思いますが?」
「お前のその人形の様な態度は懲り懲りだ。俺は真実の愛に目覚めたのだ。だからこの婚約は無かったことにする」
「ああ…なるほど。わかりました」
皆が賑わう昼食時の学食。
私、カロリーナ・ミスドナはこの国の第2王子で婚約者のマルク様から婚約破棄を言い渡された。
マルク様は自分のやっている事に酔っているみたいですが、貴方がこれから経験する未来は地獄ですよ。
全くこの人は…
全て仕組まれた事だと知らずに幸せものですね。
幼馴染ばかり優先していたら婚約者に捨てられた男…の、話を聞いて自分を顧みても遅かったお話と、その婚約者のその後のお話
下菊みこと
恋愛
バカな男が自滅して、その元婚約者が幸せになれる相手と巡り合うだけ。
一応ざまぁだと思います。いっつ様式美!
元婚約者の女性のその後は、獣人、運命の番、そんなお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】地味と連呼された侯爵令嬢は、華麗に王太子をざまぁする。
佐倉穂波
恋愛
夜会の最中、フレアは婚約者の王太子ダニエルに婚約破棄を言い渡された。さらに「地味」と連呼された上に、殺人未遂を犯したと断罪されてしまう。
しかし彼女は動じない。
何故なら彼女は──
*どうしようもない愚かな男を書きたい欲求に駆られて書いたお話です。
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが
ふじよし
恋愛
パトリツィアはティリシス王国ラインマイヤー公爵の令嬢だ。
隣国ルセアノ皇国との国交回復を祝う夜会の直前、パトリツィアは第一王子ヘルムート・ビシュケンスに婚約破棄を宣言される。そのかたわらに立つ見知らぬ少女を自らの結婚相手に選んだらしい。
けれど、破棄もなにもパトリツィアとヘルムートの婚約はすでに解消されていた。
※現在、小説家になろうにも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる