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「お父様。私の部屋まで聞こえてきました。賠償金が払えないというのは嘘ですよね? 裁判で勝つ方法はないのですか?」姉が言った。

姉は昨日買ってもらったばかりの洋服とアクセサリーをじゃらじゃら身に着けていた。その輝きも、伯爵家の滅亡を前にしては色あせて見えた。

姉は続けて言った。
「これからもエバンズ家の生活は変わらない。そうでしょう? 私はまだまだほしいものがたくさんあるの」

父も母も答えられないでいた。
重苦しい沈黙が私たちのいる広間に流れていて、騒がしいのは使用人の部屋のほうだけだった。

私も不安だった。
エバンズ家が潰れてしまったら、帰る家がなくなる。
どんなに出ていきたいと思っていた実家でも、
いざなくなるとどうなるのだろうか。

賠償金を負ったエバンズ家は、払い終えるまで一生払い続けなければならない。結婚すると家から出ることになるので支払い義務はない。だから私はこのまま結婚すれば関係ないけど、両親と姉はずっと賠償金に苦しめられることになる。ただ、私ももし離縁されたらエバンズ家に戻らなくてはならないから、他人事ではない。



玄関の扉をノックする音がコンコンコンコンと聞こえた。
使用人が招き入れたのは、オリバーだった。

「あの、みなさん顔が暗いですが……どうかしました?」オリバーが言った。

オリバーに隠していてもいずれバレるだろうし、きちんと話しておくのが大事だと思った。

「お姉様の件なんだけど……王家への嘆願書が受け入れられなかったの。裁判になる。払いきれないほどの賠償金を請求されてる」

「え……嘆願書を出すときに慰謝料払ったのに……それでもだめだったか」

オリバーもあきらかに動揺していた。
そして先のことを考えて、思考を巡らせているような感じだった。



かろうじて椅子に座っていた母がまたわなわなと震え始めて、父に声を荒げた。
「どうしてよ! あんなに財産があったのに! どうして払えないのよ! あなたが使い込んだんでしょ!」

こうして状況はどんどん悪化していく……
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