3 / 64
復興が進む日常
しおりを挟む
外は雲ひとつない晴天だった。陽気に誘われて、大勢の人が目の前を行き来している。
クリス付与魔術ショップはハンターギルドに隣接しているせいか、武装している人たちが多い。目の前の通りだけを見れば小さい頃から何も変わらないように思える。でも視線を遠くに移すと一年前に終結した戦争の名残が残っていた。
木材を運んでいる人や、レンガを積み上げて家を修繕している人。さらには、付与液が入ったタルを付いた、人型のウッドゴーレムが、重機のように石を積み上げて外壁を修繕している。
一年前の戦争は首都にまで攻め込まれるほど情勢が悪く、あと数週間で陥落すると言われていた。外壁や家の一部が壊れているのは、激しい戦闘の名残だ。大通り石畳は優先的に復旧させたので、移動に困ることはない。その代わり建物の復興が遅れていた。
敗戦の危機をを救ったのは、皮肉にも大陸に住んでいるモンスターだった。人類とは相容れない関係だけど、あの時ばかりは敵の敵は味方といったありがたい存在ではあった。
◆◆◆
歩きなれた道を進み、なじみの屋台に入る。
「おじちゃん今日もきたよ。それ一つちょうだい」
「はいよ。公国銅貨五枚だ」
貴族でもない限り、昼食は軽く済ませて晩御飯をたくさん食べるのが、この世界の基本スタイルだ。
僕も平民なので例に漏れず、昼食はいつも屋台で買っている。顔なじみの亭主にあいさつをしてから銅貨五枚を支払う。対価として手に入れた、肉と野菜を串で刺した焼き鳥みたいなものを食べながら歩き出した。
焼き鳥もどきを口に入れ噛むと、たっぷりとつけてある塩と肉汁が口の中に広がる。おそらく、全長3mあるビッグボアか切り裂きラビッドの肉だろう。どちらも駆け出しハンターが狩り、平民が食べるものだ。
街の外に出るとモンターが跋扈するこの世界では、家畜は貴重であり屋台で使われることはない。羊や牛に似た生き物はいるけれどすべて野生だ。羊毛や牛の肉が必要になったらハンターに依頼するかない。
もう少しモンスターの脅威が減れば、あいつらを家畜化できる可能性もあるが……人類が争っている現状を考えると当分先になりそうだ。
そんなことを考えていると、後ろから馬の泣き声と御者の怒鳴り声が聞こえた。誰かが馬車を、猛スピードで走らせているみたいだ。僕は慌てて道の端によると、二頭立て馬車が目の前を通り過ぎて行った。
「あれは公爵家の馬車?」
あっちの方角は第三夫人のリア様が住んでいる館だ。何かあったのかな? いや、愛する奥さんに会いに行った? それとも――。
「……僕には関係ないか」
そんな当たり前の結論を出して、歩くとすぐに目的の薬屋についた。店に入ると、薬品のような匂いが漂ってきた。
カウンターの後ろにビンに入った薬らしきものが並んでいる。レイアウトはうちと同じだが、店の広さは三倍あり、主婦と思われる一般のお客さんも数人いる。ハンターがいなくなったら閉店してしまううちとは大違いだ。
「ニコライおじいちゃん。付与液を買いに来たよ」
子供の頃から顔見知りなので、昔からの呼び方を変えることができず、この歳になってもニコライおじいちゃんと呼んでいる。五十を過ぎてそろそろ引退する年齢だけど、見た目は三十代に見えるほど若々しい外見を保っている。さらにハンター顔負けのいかつい顔と体格で、周囲のお店はでは、トラブルの時に頼りになる爺さんとしてお守り扱いされていた。
「クリスの坊主か。赤と青が品薄になったか?」
「付与液を買いに来たよ。それにしても、よくわかったね」
付与師も付与液を作ることはできるけど、主な原料は薬草なので、効率や利益を考えると薬屋が調合した付与液を買うことが多い。ハンターが薬草を採取してギルドを通して薬屋に卸し、それを僕たち付与師が買い取ってハンターに付与する。これが、付与業界の基本的なサイクルだ。
「昨日からハンター共が騒がしかったからな」
この商売を長年続けているだけあって、店に来たハンターの動きだけで品薄になっていることを予想するとは恐れ入る。
ちなみに大手になると、軍やギルドに付与する機会もあるらしいけど、個人営業でそこまでする人はいない。単純に人手が足りないからだ。
「回復系のポーションを、ごっそり買ってくれたわ」
そうとう大きな儲けが出たのだろう、目の前で豪快に笑っている。体を張って守ってくれるハンターには悪いけど、お店を経営する人にとって大規模討伐は実入りの良い仕事だ。僕のお店も今日一日で一ヶ月分の売り上げが出ていた。
「必要な魔法薬はリストにまとめてあるから」
「おう見せな」
差し出した羊皮紙を乱暴に奪い取り内容を確認すると、大きな声で人を呼びつけた。
「コウ、このリストにある付与液をカゴに入れて持ってこい」
「わかりました!」
カウンターの横にあるドアから出てきたのは十歳ほどの若い少年だった。ニコライおじいちゃんの子供は娘だったし、孫息子は一歳だったはずだ。
「新しい店員ですか?」
そうすると新しい店員としか考えられないので、昔からの知り合いという気安さから、思わず質問してしまった。これで隠し子だと言われたら、かなり気まずい。ニコライじいちゃんの下半身はいまでも現役だという噂だから、地味にあり得そうだから困る……。
「そろそろ引退を考える歳だからな。娘は嫁いでしまったし、教会が経営している孤児院から筋が良さそうなヤツを引き取ったんだよ。お前と娘が結婚してれば、そんな心配せずに済んだんだがな」
本人は上手いこと言ったと思っているようで、ニヤリと口元をあげていやらしい感じに笑っている。
「いきなり人の古傷をえぐらないでよ……」
ニコライじいちゃんの娘であるターニャさんは、僕の二つ上で初恋だった。家族ぐるみで付き合いがあったので、「異世界転生のテンプレきたー!」と一人で興奮していたときを思い出すと、いまでも死になくなる。異世界にきても黒歴史を作ってしまった。
ちなみにターニャさんは兄さんに告白してあっさり振られたあと、港街の宿屋の息子に嫁いでから会っていない。姿を見ると泣きそうになるので、一生見なくていいと思っている。
「気を悪くするな冗談だ。それよりお前も独り立ちしたんだから、弟子の一人でもとることだ。特に付与師は育成に時間がかかるからな」
「お店を軌道に乗せなければいけませんし、独り立ちしたばかりの未熟者ですよ」
「お前の店は固定客も多いし、腕もそこら辺のヤツよりレベルは高い。それは俺が保証してやる」
「高く評価してもらえているのは嬉しいのですが、それと弟子の話がつながりません」
「この前の戦争で孤児が増えたからな。さっきも子供の浮浪者が店前にいただろ? 彼らには寝る場所と働く場所、それと金が必要だ。それらすべて提供できるのが住み込みの弟子ってヤツだからな。まぁこの街のために少し考えてくれ」
そこまで考えての発言だとは思わなかった。この街に住む人間としての責任か……住んでいる人たちには色々とお世話になったし、恩がないとは言えない。弟子に関しては、少し考えてみるか。でも、僕が人に教えられるか不安だ……。
「付与師として才能がある子を見つけたら考えます」
「おう。それでいい」
とは言っても魔力量といった才能に左右される職業だ。才能ある子が孤児院にいるとは思えないし、すぐには見つかるはずもないだろう。ニコライおじいちゃんもそれがわかっているからこそ、しつこく言うことはなかった。
「親方! 持ってきました。確認お願いします」
弟子のコウ君の声で、会話を切り上げた。
ニコライおじいちゃんがかごの中身を確認してそれが終わると、僕ももカゴに入った付与液を確認する。種類・本数ともに指定した通りだ。問題ない。
「大丈夫です。ビン一つで公国銀貨三枚で良いですよね?」
「今回は高い材料は使ってないからそれで良い」
カゴから持ってきたバッグに移し替えてから、公国銀貨十五枚を支払い薬屋をあとにして、自分の店に戻ることにした。
「ただいま」
慣れ親しんだ木製のドアを押し開けて中に入る。数年前までは家に必ず誰かがいて、このあとに「おかえり」と返事があったが、いまは自分の声が部屋の中にこだまするだけだ。
戦争が始まって、兄はハンターになり両親は死んでしまった。それからは、僕は流されてばかりだった。このお店だって跡を継ぐ人が僕しかいなかったから経営しているだけで、兄さんのようにハンターになって自分の道を切り開いて生きているわけじゃない。そう思うと急に自分だけが取り残されたような気持ちになってしまった。
「両親の死の真相……弟子をとる」
その夜、意味ありげにつぶやいてみたものの選択するには覚悟が足りず、寂しい気持ちを抱えたままベッドで眠ることにした。独り身が寂しとはこんな感覚なのだろうか。
いままで押し込めていた、「誰か一緒にいて欲しい」という気持ちが、自分の意思に反して止めどなくあふれていた。
クリス付与魔術ショップはハンターギルドに隣接しているせいか、武装している人たちが多い。目の前の通りだけを見れば小さい頃から何も変わらないように思える。でも視線を遠くに移すと一年前に終結した戦争の名残が残っていた。
木材を運んでいる人や、レンガを積み上げて家を修繕している人。さらには、付与液が入ったタルを付いた、人型のウッドゴーレムが、重機のように石を積み上げて外壁を修繕している。
一年前の戦争は首都にまで攻め込まれるほど情勢が悪く、あと数週間で陥落すると言われていた。外壁や家の一部が壊れているのは、激しい戦闘の名残だ。大通り石畳は優先的に復旧させたので、移動に困ることはない。その代わり建物の復興が遅れていた。
敗戦の危機をを救ったのは、皮肉にも大陸に住んでいるモンスターだった。人類とは相容れない関係だけど、あの時ばかりは敵の敵は味方といったありがたい存在ではあった。
◆◆◆
歩きなれた道を進み、なじみの屋台に入る。
「おじちゃん今日もきたよ。それ一つちょうだい」
「はいよ。公国銅貨五枚だ」
貴族でもない限り、昼食は軽く済ませて晩御飯をたくさん食べるのが、この世界の基本スタイルだ。
僕も平民なので例に漏れず、昼食はいつも屋台で買っている。顔なじみの亭主にあいさつをしてから銅貨五枚を支払う。対価として手に入れた、肉と野菜を串で刺した焼き鳥みたいなものを食べながら歩き出した。
焼き鳥もどきを口に入れ噛むと、たっぷりとつけてある塩と肉汁が口の中に広がる。おそらく、全長3mあるビッグボアか切り裂きラビッドの肉だろう。どちらも駆け出しハンターが狩り、平民が食べるものだ。
街の外に出るとモンターが跋扈するこの世界では、家畜は貴重であり屋台で使われることはない。羊や牛に似た生き物はいるけれどすべて野生だ。羊毛や牛の肉が必要になったらハンターに依頼するかない。
もう少しモンスターの脅威が減れば、あいつらを家畜化できる可能性もあるが……人類が争っている現状を考えると当分先になりそうだ。
そんなことを考えていると、後ろから馬の泣き声と御者の怒鳴り声が聞こえた。誰かが馬車を、猛スピードで走らせているみたいだ。僕は慌てて道の端によると、二頭立て馬車が目の前を通り過ぎて行った。
「あれは公爵家の馬車?」
あっちの方角は第三夫人のリア様が住んでいる館だ。何かあったのかな? いや、愛する奥さんに会いに行った? それとも――。
「……僕には関係ないか」
そんな当たり前の結論を出して、歩くとすぐに目的の薬屋についた。店に入ると、薬品のような匂いが漂ってきた。
カウンターの後ろにビンに入った薬らしきものが並んでいる。レイアウトはうちと同じだが、店の広さは三倍あり、主婦と思われる一般のお客さんも数人いる。ハンターがいなくなったら閉店してしまううちとは大違いだ。
「ニコライおじいちゃん。付与液を買いに来たよ」
子供の頃から顔見知りなので、昔からの呼び方を変えることができず、この歳になってもニコライおじいちゃんと呼んでいる。五十を過ぎてそろそろ引退する年齢だけど、見た目は三十代に見えるほど若々しい外見を保っている。さらにハンター顔負けのいかつい顔と体格で、周囲のお店はでは、トラブルの時に頼りになる爺さんとしてお守り扱いされていた。
「クリスの坊主か。赤と青が品薄になったか?」
「付与液を買いに来たよ。それにしても、よくわかったね」
付与師も付与液を作ることはできるけど、主な原料は薬草なので、効率や利益を考えると薬屋が調合した付与液を買うことが多い。ハンターが薬草を採取してギルドを通して薬屋に卸し、それを僕たち付与師が買い取ってハンターに付与する。これが、付与業界の基本的なサイクルだ。
「昨日からハンター共が騒がしかったからな」
この商売を長年続けているだけあって、店に来たハンターの動きだけで品薄になっていることを予想するとは恐れ入る。
ちなみに大手になると、軍やギルドに付与する機会もあるらしいけど、個人営業でそこまでする人はいない。単純に人手が足りないからだ。
「回復系のポーションを、ごっそり買ってくれたわ」
そうとう大きな儲けが出たのだろう、目の前で豪快に笑っている。体を張って守ってくれるハンターには悪いけど、お店を経営する人にとって大規模討伐は実入りの良い仕事だ。僕のお店も今日一日で一ヶ月分の売り上げが出ていた。
「必要な魔法薬はリストにまとめてあるから」
「おう見せな」
差し出した羊皮紙を乱暴に奪い取り内容を確認すると、大きな声で人を呼びつけた。
「コウ、このリストにある付与液をカゴに入れて持ってこい」
「わかりました!」
カウンターの横にあるドアから出てきたのは十歳ほどの若い少年だった。ニコライおじいちゃんの子供は娘だったし、孫息子は一歳だったはずだ。
「新しい店員ですか?」
そうすると新しい店員としか考えられないので、昔からの知り合いという気安さから、思わず質問してしまった。これで隠し子だと言われたら、かなり気まずい。ニコライじいちゃんの下半身はいまでも現役だという噂だから、地味にあり得そうだから困る……。
「そろそろ引退を考える歳だからな。娘は嫁いでしまったし、教会が経営している孤児院から筋が良さそうなヤツを引き取ったんだよ。お前と娘が結婚してれば、そんな心配せずに済んだんだがな」
本人は上手いこと言ったと思っているようで、ニヤリと口元をあげていやらしい感じに笑っている。
「いきなり人の古傷をえぐらないでよ……」
ニコライじいちゃんの娘であるターニャさんは、僕の二つ上で初恋だった。家族ぐるみで付き合いがあったので、「異世界転生のテンプレきたー!」と一人で興奮していたときを思い出すと、いまでも死になくなる。異世界にきても黒歴史を作ってしまった。
ちなみにターニャさんは兄さんに告白してあっさり振られたあと、港街の宿屋の息子に嫁いでから会っていない。姿を見ると泣きそうになるので、一生見なくていいと思っている。
「気を悪くするな冗談だ。それよりお前も独り立ちしたんだから、弟子の一人でもとることだ。特に付与師は育成に時間がかかるからな」
「お店を軌道に乗せなければいけませんし、独り立ちしたばかりの未熟者ですよ」
「お前の店は固定客も多いし、腕もそこら辺のヤツよりレベルは高い。それは俺が保証してやる」
「高く評価してもらえているのは嬉しいのですが、それと弟子の話がつながりません」
「この前の戦争で孤児が増えたからな。さっきも子供の浮浪者が店前にいただろ? 彼らには寝る場所と働く場所、それと金が必要だ。それらすべて提供できるのが住み込みの弟子ってヤツだからな。まぁこの街のために少し考えてくれ」
そこまで考えての発言だとは思わなかった。この街に住む人間としての責任か……住んでいる人たちには色々とお世話になったし、恩がないとは言えない。弟子に関しては、少し考えてみるか。でも、僕が人に教えられるか不安だ……。
「付与師として才能がある子を見つけたら考えます」
「おう。それでいい」
とは言っても魔力量といった才能に左右される職業だ。才能ある子が孤児院にいるとは思えないし、すぐには見つかるはずもないだろう。ニコライおじいちゃんもそれがわかっているからこそ、しつこく言うことはなかった。
「親方! 持ってきました。確認お願いします」
弟子のコウ君の声で、会話を切り上げた。
ニコライおじいちゃんがかごの中身を確認してそれが終わると、僕ももカゴに入った付与液を確認する。種類・本数ともに指定した通りだ。問題ない。
「大丈夫です。ビン一つで公国銀貨三枚で良いですよね?」
「今回は高い材料は使ってないからそれで良い」
カゴから持ってきたバッグに移し替えてから、公国銀貨十五枚を支払い薬屋をあとにして、自分の店に戻ることにした。
「ただいま」
慣れ親しんだ木製のドアを押し開けて中に入る。数年前までは家に必ず誰かがいて、このあとに「おかえり」と返事があったが、いまは自分の声が部屋の中にこだまするだけだ。
戦争が始まって、兄はハンターになり両親は死んでしまった。それからは、僕は流されてばかりだった。このお店だって跡を継ぐ人が僕しかいなかったから経営しているだけで、兄さんのようにハンターになって自分の道を切り開いて生きているわけじゃない。そう思うと急に自分だけが取り残されたような気持ちになってしまった。
「両親の死の真相……弟子をとる」
その夜、意味ありげにつぶやいてみたものの選択するには覚悟が足りず、寂しい気持ちを抱えたままベッドで眠ることにした。独り身が寂しとはこんな感覚なのだろうか。
いままで押し込めていた、「誰か一緒にいて欲しい」という気持ちが、自分の意思に反して止めどなくあふれていた。
0
お気に入りに追加
362
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる