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これで反省しろ
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トエーリエが俺の側を離れないので女遊びを中断して、屋敷へ帰るために歩いている。
ふと、路地裏が視界に入った。
男が二人。片方はフードをかぶっていて顔は見えない。何やら取引をしているようで、素顔を晒している男が硬貨を渡すと草の束を受け取った。
笑いながら枚数を確認している。
「ポルン様、あれは……」
「違法ハーブの取引かもな」
過去に何度か、国王の依頼で違法ハーブの摘発に協力したことがあった。その時に現場を見たことがある。取引の方法、目の焦点があわない笑顔、草の特徴が似ているのだ。勘違いという線は薄いだろう。
「追いかけましょう」
見逃すわけには行かない。トエーリエの言葉にうなずくと路地裏へ行こうとする。
「てめぇ! ぶっ殺す!」
今度は背後から罵声が聞こえた。
振り返ると、露出度の高い服を着た女を挟んで二人の男が殴り合いをしていた。冒険者崩れのようで、それぞれ腰に剣をぶら下げている。
気にいった娼婦を奪い合っているようだ。
くそっ。お近づきになれるなんて羨ましい。俺なんて逃げられてしまうんだぞ……って、それどこじゃなかった!
近くに巡回している兵はいない。周囲は止めるどころかケンカを煽っている。そのうちの一人は、やけに声が大きい。不自然だと感じるほど積極的に楽しんでいる。
ただのケンカであれば放置しようとも考えたが、どうしても気になってしまい足は止まったままだ。
「謝るなら殺さないでおいてやる。どうする?」
「ここで引き下がったらプライドが許さねぇ。徹底的にヤってやる」
酒でも飲んで理性が吹き飛んでいるのか?
二人とも剣を鞘から抜いた。
ケンカではなく殺し合いになるぞ。
どちらを優先するべきか。悩みながら路地裏を見るとフードをかぶった男の姿は消えていた。違法ハーブの売人を追いかけるのは難しそうだ。
「逃がしてしまいましたね……」
「取引した男の方を捕らえてくれ。売人に動きは知られたくないから静かにな」
「わかりました。ポルン様はどうされます?」
「俺は殺し合いを止める」
トエーリエは静かに歩いて路地裏へ入っていた。
残された俺は暴れている男を再び見る。
剣を構えて間合いを計っているようだ。意地の張り合いが発展して本気の殺し合いに発展しそう。
どちらかが武器で傷つけば収まりは付かなくなる。戦いが始まる前に中断させよう。
持っている槍を投擲すると、観客たちの間を縫って睨み合っている二人の中間地点、その地面に突き刺さった。
「「だれだ!?」」
一斉に俺を見た。
人が左右に分かれて道ができる。全員の注目が集まった。
「ヴォルデンク家の関係者だ。ケンカは見過ごせないので邪魔させてもらう」
歩いて二人に近づくと剣を向けられた。
遠目からでは気づけなかったのだが、男たちの顔色は悪く目の焦点が合っていないようだ。領主の家名を出したのに敵意を隠さないとは。
こいつら酒を飲みすぎたんじゃなく、違法ハーブを使用した後なのかも。軽度の中毒者ってところか。
「もう一度言おう。俺はヴォルデンク男爵の関係者だ。今なら見逃してやるが、このまま刃を向けるのであれば相応の罪に問われるぞ」
わかりやすくハッキリと伝えたら、ようやく少し戸惑ってくれた。
さっきまでケンカをしてたというのにお互いの顔を見ている。もしかしたらこいつらは顔見知りか。
「どうする? 貴族はやべぇ」
「でも相手は素手だ。ヤってから逃げればいいんじゃないか?」
公衆の面前で俺を殺せたとして見逃してもらえるはずないだろ。
貴族のプライドにかけて死ぬまで追いかける。普通なら俺の言葉に従って引き下がるはずなんだが……。
「あり、だな」
ダメだ。こいつら正常な判断ができてない。やはり思考がおかしい。
二人が左右に分かれると、それぞれ上段から剣を振り下ろしてくる。
バックステップで距離を取れば続けて攻撃され、追い詰められてしまうかもしれない。無手なのでそれは避けたい。
身体能力を強化して前に出る。背後から剣を振り下ろす音が聞こえた。
地面に刺さった槍を引き抜いて振り返る。
左側からは突き、右側は振り上げの攻撃が迫っていた。
一歩下がって右側の攻撃を回避して、俺の胸を狙った切っ先は槍ではじく。剣に引っ張られて左側にいる男の体が流れた。
「これで反省しろ」
左足を軸にして体を半回転させて背中を見せると後ろ蹴りを放つ。
胸に直撃して吹き飛んだ。
「パーモン! 大丈夫か!」
やっぱり二人は知り合いだったようだ。心配そうな顔をして声をかけている。
その隙に、右側にいる男へ近づいた。
「余所見をしてていいのか?」
「ッ!?」
目を大きく開いて驚愕している男に石突きを当てる。
全力を出してしまうと内臓を破壊してしまうので、力は抑えている。
男は腹を押さえて、うずくまってしまった。
落ちている剣を蹴って遠くに飛ばす。
蹴った方の男は気絶しているみたいで起き上がってこない。無力化できたみたいだ。
「さすがポルン様。あっという間でしたね」
ぱちぱちと可愛らしい手で拍手をしながらトエーリエが戻ってきた。
違法ハーブを購入した男は地面で倒れている。拘束できるような道具は持ってきてないので、気絶させたのだろう。
「そっちも仕事は終わったみたいだな」
「はい。予想したとおりの物をもっていました。後で調べましょう」
遠くから兵たちのやってくる音が聞こえてくる。倒した二人を地下牢にぶち込んでもらって反省してもらおう。
後は警備の強化だな。
違法ハーブの取引と、殺し合いにまで発展しそうな騒動。今までになかった事件だ。
ついにバドロフ子爵が動き出したとみて良いだろう。
ふと、路地裏が視界に入った。
男が二人。片方はフードをかぶっていて顔は見えない。何やら取引をしているようで、素顔を晒している男が硬貨を渡すと草の束を受け取った。
笑いながら枚数を確認している。
「ポルン様、あれは……」
「違法ハーブの取引かもな」
過去に何度か、国王の依頼で違法ハーブの摘発に協力したことがあった。その時に現場を見たことがある。取引の方法、目の焦点があわない笑顔、草の特徴が似ているのだ。勘違いという線は薄いだろう。
「追いかけましょう」
見逃すわけには行かない。トエーリエの言葉にうなずくと路地裏へ行こうとする。
「てめぇ! ぶっ殺す!」
今度は背後から罵声が聞こえた。
振り返ると、露出度の高い服を着た女を挟んで二人の男が殴り合いをしていた。冒険者崩れのようで、それぞれ腰に剣をぶら下げている。
気にいった娼婦を奪い合っているようだ。
くそっ。お近づきになれるなんて羨ましい。俺なんて逃げられてしまうんだぞ……って、それどこじゃなかった!
近くに巡回している兵はいない。周囲は止めるどころかケンカを煽っている。そのうちの一人は、やけに声が大きい。不自然だと感じるほど積極的に楽しんでいる。
ただのケンカであれば放置しようとも考えたが、どうしても気になってしまい足は止まったままだ。
「謝るなら殺さないでおいてやる。どうする?」
「ここで引き下がったらプライドが許さねぇ。徹底的にヤってやる」
酒でも飲んで理性が吹き飛んでいるのか?
二人とも剣を鞘から抜いた。
ケンカではなく殺し合いになるぞ。
どちらを優先するべきか。悩みながら路地裏を見るとフードをかぶった男の姿は消えていた。違法ハーブの売人を追いかけるのは難しそうだ。
「逃がしてしまいましたね……」
「取引した男の方を捕らえてくれ。売人に動きは知られたくないから静かにな」
「わかりました。ポルン様はどうされます?」
「俺は殺し合いを止める」
トエーリエは静かに歩いて路地裏へ入っていた。
残された俺は暴れている男を再び見る。
剣を構えて間合いを計っているようだ。意地の張り合いが発展して本気の殺し合いに発展しそう。
どちらかが武器で傷つけば収まりは付かなくなる。戦いが始まる前に中断させよう。
持っている槍を投擲すると、観客たちの間を縫って睨み合っている二人の中間地点、その地面に突き刺さった。
「「だれだ!?」」
一斉に俺を見た。
人が左右に分かれて道ができる。全員の注目が集まった。
「ヴォルデンク家の関係者だ。ケンカは見過ごせないので邪魔させてもらう」
歩いて二人に近づくと剣を向けられた。
遠目からでは気づけなかったのだが、男たちの顔色は悪く目の焦点が合っていないようだ。領主の家名を出したのに敵意を隠さないとは。
こいつら酒を飲みすぎたんじゃなく、違法ハーブを使用した後なのかも。軽度の中毒者ってところか。
「もう一度言おう。俺はヴォルデンク男爵の関係者だ。今なら見逃してやるが、このまま刃を向けるのであれば相応の罪に問われるぞ」
わかりやすくハッキリと伝えたら、ようやく少し戸惑ってくれた。
さっきまでケンカをしてたというのにお互いの顔を見ている。もしかしたらこいつらは顔見知りか。
「どうする? 貴族はやべぇ」
「でも相手は素手だ。ヤってから逃げればいいんじゃないか?」
公衆の面前で俺を殺せたとして見逃してもらえるはずないだろ。
貴族のプライドにかけて死ぬまで追いかける。普通なら俺の言葉に従って引き下がるはずなんだが……。
「あり、だな」
ダメだ。こいつら正常な判断ができてない。やはり思考がおかしい。
二人が左右に分かれると、それぞれ上段から剣を振り下ろしてくる。
バックステップで距離を取れば続けて攻撃され、追い詰められてしまうかもしれない。無手なのでそれは避けたい。
身体能力を強化して前に出る。背後から剣を振り下ろす音が聞こえた。
地面に刺さった槍を引き抜いて振り返る。
左側からは突き、右側は振り上げの攻撃が迫っていた。
一歩下がって右側の攻撃を回避して、俺の胸を狙った切っ先は槍ではじく。剣に引っ張られて左側にいる男の体が流れた。
「これで反省しろ」
左足を軸にして体を半回転させて背中を見せると後ろ蹴りを放つ。
胸に直撃して吹き飛んだ。
「パーモン! 大丈夫か!」
やっぱり二人は知り合いだったようだ。心配そうな顔をして声をかけている。
その隙に、右側にいる男へ近づいた。
「余所見をしてていいのか?」
「ッ!?」
目を大きく開いて驚愕している男に石突きを当てる。
全力を出してしまうと内臓を破壊してしまうので、力は抑えている。
男は腹を押さえて、うずくまってしまった。
落ちている剣を蹴って遠くに飛ばす。
蹴った方の男は気絶しているみたいで起き上がってこない。無力化できたみたいだ。
「さすがポルン様。あっという間でしたね」
ぱちぱちと可愛らしい手で拍手をしながらトエーリエが戻ってきた。
違法ハーブを購入した男は地面で倒れている。拘束できるような道具は持ってきてないので、気絶させたのだろう。
「そっちも仕事は終わったみたいだな」
「はい。予想したとおりの物をもっていました。後で調べましょう」
遠くから兵たちのやってくる音が聞こえてくる。倒した二人を地下牢にぶち込んでもらって反省してもらおう。
後は警備の強化だな。
違法ハーブの取引と、殺し合いにまで発展しそうな騒動。今までになかった事件だ。
ついにバドロフ子爵が動き出したとみて良いだろう。
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