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第40話 わかった。王都へ……
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「改めて王都に連れて行きたい理由を伝えるわね。今回戦った汚染獣の情報を記録するためよ。それ以外で私から何かお願いすることはないわ。ねぇ、来てくれないかしら?」
「本当ですか?」
「ええ、約束する」
小型の汚染獣を放置していたら強力な汚染獣が生まれるなんて情報はどこにも無かった。
今回のことは記録していたほうが後世に役立つ。
だが、メルベルの動きが怪しいのは間違いなく、素直に従うわけにはいかない。
「情報を残したいのであれば、記録担当官をこちら――」
急に外が騒がしくなって口を止めた。
村に何か問題が起きたのか?
「あら。何かあったようね」
見間違えじゃなければ嬉しそうにしている。
見えない糸に絡め取られたような気分だ。
「もしかしたら倒した汚染獣が復活したのかもしれませんわね。確認しに行きましょうか」
なんとメルベルが俺の腕を取って引っ張った。
騒ぎが気になるので拒否はしない。
手を離してもらって部屋を出ると階段を降りる。
守るつもりなのか、後ろにはベラトリックスたちもいる。
仲間を引き連れて広場まで歩くと、ドルンダの前で膝をついている兵の姿が見えた。
周囲にいる騎士、村人たちは動揺しているのかザワついている。
そんな中、重々しい口調でドルンダが報告をしている兵に話しかける。
「もう一度、報告を聞かせてくれ」
「王都にある貴族街が……汚染獣の襲撃を受けました! 近づけないため被害状況まではわかりませんが、多くの貴族の方々が亡くなったと思われます」
あり得ない出来事に驚き、足が止まってしまう。
「外壁を壊して中に侵入したのか?」
「いえ、報告によると突如、貴族街に出現したとのことです」
「そんなばかな……」
言葉を失っているドルンダに兵が叫ぶ。
「このままでは王都は壊滅してしまいます! 勇者様の派遣をご検討いただけないでしょうかッ!!」
兵の言っていることはまっとうだ。
愚かな王だって即刻勇者を派遣して貴族を守るために動くだろう。
「それは難しい」
しかしドルンダは違ったようだ。勇者を向かわせるつもりはないようである。
これは王都に住む貴族や住民を見捨てると宣言しているのと同じであり、国の崩壊につながる発言である。この男、ついに耄碌したか!?
「勇者プルドは先の戦いで傷を負ってすぐには動けない。どうしようもないのだ」
魔力切れで失禁しただけのくせに動けないだと?
そんな軟弱者を勇者にしたのか理解に苦しむ。
「だそうだけど、元勇者のポルンはどうするおつもりで?」
「助けに行きます」
汚染獣に苦しむ人を助けたいと思うのは俺にとって自然なことだ。
王家が動かないなら俺だけでも戦う意思はある。
「よろしいのですか?」
後ろにいるトエーリエが聞いてきた。
「もちろん。それにトエーリエやヴァリィだって家族のことが心配だろ?」
「数日前に家族や使用人たちは全員、仕事の都合で別の都市に移動したので大丈夫です」
「私も同じで、家族たちは王都にいません」
トエーリエとヴァリィの家族がこのタイミングで王都にいないだと? どいうことだ?
同じ疑問を持ったらしく二人と顔を見合って驚いている。
偶然ではない、誰かの意思が働いた結果の動きだろう。
「メルベル宰相、あなたの命令ですか?」
貴族階級に命令できるとしたら、さらに上の立場である人間でなければいけない。彼女が手を回したと思ったのだ。
「命令したのは私よ。でも汚染獣が襲ってきたのは偶然。それで納得してくれたかしら?」
「もちろんです」
どんな偶然も起こる可能性はある。
汚染獣はコントロール不可能な存在なのだから、先ほどの説明以上のものなんてないだろう。
「で、先ほどの発言は本当かしら?」
「はい。ベラトリックスには悪いと思いますが、俺は王都へ行きます」
汚染獣を倒して記録担当官に情報を渡す、その後は女遊びできるような場所へ旅に出る。
うん、これでいいだろう。計画通り進むか怪しいが、行き当たりばったりの人生も悪くはない。
「では私はドルンダ陛下にこのことを伝えてまいりますので、出発の準備をしてもらえないかしら?」
「わかりました。後ほど会いましょう」
宿に戻りながら四人に参戦するか聞いてみると、みんな一緒に行くと言ってくれた。
これだけの仲間がいれば小型の汚染獣ぐらいすぐに倒せるだろう。負けるイメージは湧かなかった。
* * *
宰相としてドルンダとの話を終えた私は、広場に作った天幕の中に入る。
貴族が快適に住めるよう配慮された家具が置かれていて、当然だけどベッドもある。その上に膝を抱えてガタガタと震えているプルドがいた。
初めて汚染獣と出会い、心が折れてしまったみたい。魔力切れで失禁と脱糞のコンボも相当ショックだったらしく、外に出てきたくないと騒ぎ立てている。
少し前に突然、不能になって生殖能力がなくなってしまい、王子、そして張りぼての勇者としても役に立たない。
そのせいで急遽、計画を大きく修正しなければいけなくなってしまった。本当はあんなずさんな進め方したくなかったのに。
予想していた以上に使えない男でガッカリしている。
後でドルンダに文句を言わなければ気が済まない。
「あなたのせいで無駄な動きをしてしまったわ」
声を出したらピクンと肩が動いてプルドが私を見た。
「一日でも早く傷を癒やしておきなさい」
「む、むりだ! もう汚染獣の前には立ちたくない!」
「その願いは聞けないわ。言うとおりにするのよ」
声を低めに出すことを意識する。
「じゃないと、殺す」
言いたいことを伝えると、手をヒラヒラと動かしてから天幕を出る。
ああは言ったけど期待はしていない。
本当に殺すわけにはいかないから、魔法で洗脳して操り人形にしようかしら。判断能力が下がるからあまりやりたくないんだけど、そうするしか方法がなさそうだった。
「本当ですか?」
「ええ、約束する」
小型の汚染獣を放置していたら強力な汚染獣が生まれるなんて情報はどこにも無かった。
今回のことは記録していたほうが後世に役立つ。
だが、メルベルの動きが怪しいのは間違いなく、素直に従うわけにはいかない。
「情報を残したいのであれば、記録担当官をこちら――」
急に外が騒がしくなって口を止めた。
村に何か問題が起きたのか?
「あら。何かあったようね」
見間違えじゃなければ嬉しそうにしている。
見えない糸に絡め取られたような気分だ。
「もしかしたら倒した汚染獣が復活したのかもしれませんわね。確認しに行きましょうか」
なんとメルベルが俺の腕を取って引っ張った。
騒ぎが気になるので拒否はしない。
手を離してもらって部屋を出ると階段を降りる。
守るつもりなのか、後ろにはベラトリックスたちもいる。
仲間を引き連れて広場まで歩くと、ドルンダの前で膝をついている兵の姿が見えた。
周囲にいる騎士、村人たちは動揺しているのかザワついている。
そんな中、重々しい口調でドルンダが報告をしている兵に話しかける。
「もう一度、報告を聞かせてくれ」
「王都にある貴族街が……汚染獣の襲撃を受けました! 近づけないため被害状況まではわかりませんが、多くの貴族の方々が亡くなったと思われます」
あり得ない出来事に驚き、足が止まってしまう。
「外壁を壊して中に侵入したのか?」
「いえ、報告によると突如、貴族街に出現したとのことです」
「そんなばかな……」
言葉を失っているドルンダに兵が叫ぶ。
「このままでは王都は壊滅してしまいます! 勇者様の派遣をご検討いただけないでしょうかッ!!」
兵の言っていることはまっとうだ。
愚かな王だって即刻勇者を派遣して貴族を守るために動くだろう。
「それは難しい」
しかしドルンダは違ったようだ。勇者を向かわせるつもりはないようである。
これは王都に住む貴族や住民を見捨てると宣言しているのと同じであり、国の崩壊につながる発言である。この男、ついに耄碌したか!?
「勇者プルドは先の戦いで傷を負ってすぐには動けない。どうしようもないのだ」
魔力切れで失禁しただけのくせに動けないだと?
そんな軟弱者を勇者にしたのか理解に苦しむ。
「だそうだけど、元勇者のポルンはどうするおつもりで?」
「助けに行きます」
汚染獣に苦しむ人を助けたいと思うのは俺にとって自然なことだ。
王家が動かないなら俺だけでも戦う意思はある。
「よろしいのですか?」
後ろにいるトエーリエが聞いてきた。
「もちろん。それにトエーリエやヴァリィだって家族のことが心配だろ?」
「数日前に家族や使用人たちは全員、仕事の都合で別の都市に移動したので大丈夫です」
「私も同じで、家族たちは王都にいません」
トエーリエとヴァリィの家族がこのタイミングで王都にいないだと? どいうことだ?
同じ疑問を持ったらしく二人と顔を見合って驚いている。
偶然ではない、誰かの意思が働いた結果の動きだろう。
「メルベル宰相、あなたの命令ですか?」
貴族階級に命令できるとしたら、さらに上の立場である人間でなければいけない。彼女が手を回したと思ったのだ。
「命令したのは私よ。でも汚染獣が襲ってきたのは偶然。それで納得してくれたかしら?」
「もちろんです」
どんな偶然も起こる可能性はある。
汚染獣はコントロール不可能な存在なのだから、先ほどの説明以上のものなんてないだろう。
「で、先ほどの発言は本当かしら?」
「はい。ベラトリックスには悪いと思いますが、俺は王都へ行きます」
汚染獣を倒して記録担当官に情報を渡す、その後は女遊びできるような場所へ旅に出る。
うん、これでいいだろう。計画通り進むか怪しいが、行き当たりばったりの人生も悪くはない。
「では私はドルンダ陛下にこのことを伝えてまいりますので、出発の準備をしてもらえないかしら?」
「わかりました。後ほど会いましょう」
宿に戻りながら四人に参戦するか聞いてみると、みんな一緒に行くと言ってくれた。
これだけの仲間がいれば小型の汚染獣ぐらいすぐに倒せるだろう。負けるイメージは湧かなかった。
* * *
宰相としてドルンダとの話を終えた私は、広場に作った天幕の中に入る。
貴族が快適に住めるよう配慮された家具が置かれていて、当然だけどベッドもある。その上に膝を抱えてガタガタと震えているプルドがいた。
初めて汚染獣と出会い、心が折れてしまったみたい。魔力切れで失禁と脱糞のコンボも相当ショックだったらしく、外に出てきたくないと騒ぎ立てている。
少し前に突然、不能になって生殖能力がなくなってしまい、王子、そして張りぼての勇者としても役に立たない。
そのせいで急遽、計画を大きく修正しなければいけなくなってしまった。本当はあんなずさんな進め方したくなかったのに。
予想していた以上に使えない男でガッカリしている。
後でドルンダに文句を言わなければ気が済まない。
「あなたのせいで無駄な動きをしてしまったわ」
声を出したらピクンと肩が動いてプルドが私を見た。
「一日でも早く傷を癒やしておきなさい」
「む、むりだ! もう汚染獣の前には立ちたくない!」
「その願いは聞けないわ。言うとおりにするのよ」
声を低めに出すことを意識する。
「じゃないと、殺す」
言いたいことを伝えると、手をヒラヒラと動かしてから天幕を出る。
ああは言ったけど期待はしていない。
本当に殺すわけにはいかないから、魔法で洗脳して操り人形にしようかしら。判断能力が下がるからあまりやりたくないんだけど、そうするしか方法がなさそうだった。
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