上 下
90 / 144

力がみなぎってきた!!

しおりを挟む
 剣を振り切ってバランスを崩したデブガルに斬りかかろうとしたけど、ヘイリーさんに抱きかかえられて離れてしまった。

 次の瞬間、黄色い玉から雷が発生して先ほど立っていたところに煙が立つ。

 デブガエルが魔道具を使ったのだ。

 あれは事前に来るとわかってなければ避けられない。近寄るのは危険だ。

「よくも私のイオ君をねらったなぁあああああっっっっ!!!!」

 瞳の光ったレベッタさんが矢を放つ。雷の魔道具で迎撃しながらさらに攻撃してきたけど、アグラエルさんが氷の盾を作って防いでくれた。

 光の速さで進む攻撃を読めるなんてすごい。

「どうして雷の来る方角がわかるんだろう」

「顔と視線だね。デブガエルはわかりやすい」

 それだけでわかるものなの!?

 さすがプロの冒険者だな……って、感心している場合じゃない! 男に暴力を振るうのが苦手なんだから、僕が前に出ないと。ってあれ? メヌさん普通にハンマー振り回しているぞ。

 騎士と違って普通に戦っている。

「私たちにはイオ君がいるから」

 ぐっと親指を力強く立てて、心を読んだヘイリーさんが疑問に答えてくれた。

「行ってくるね」

 僕の頬にキスをするとデブガエルに向かって走り出す。スキル進化した彼女は未来予測までできる。視線から攻撃を読まなくても、雷が来る位置はわかるので当たることはない。近づいて剣を振り下ろそうとする。

 デブガエルの前にラレンが二人も出現するとスタッフでヘイリーさん、メヌさんの攻撃を受け流してしまった。

 あれは影の方だ。

 本体は家の中か?

 みんなはデブガエルたちと戦っていて余裕はない。騎士たちは倒れているし、僕が動くしかないだろう。

 バレないように隠れながらルアンナさんのところにまで行く。

「ケガは大丈夫ですか?」

「体が少ししびれているだけだ。問題ない。私はまだ戦えるぞ」

 よかった。元気そうだ。

「デブガエルに協力しているラレンの本体を叩きたいんです。協力してもらえませんか?」

「イオディプス君のお願いを断るわけないだろ」

 笑顔になると白い歯がきらんと光る。

 僕よりも男らしいと感じていると、突然、口が近づいてきた。

 ヘイリーさんとがしたとのは逆の頬にキスをされる。

「力がみなぎってきた!!」

 何のスキルを持っているのか知らないけど、どうやら進化してパワーアップしたみたい。体のしびれなんて吹き飛んでいるようで小屋の中に入ってしまった。

 一緒に行こうと思ったんだけど……。

「じゃまだぁ! どけぇ!」

 ルアンナさんの怒声が聞こえると小屋の壁が吹き飛んだ。地面にラレンが転がっている。仰向けになっているところで、跳躍してきたルアンナさんに胸を貫かれる。

 容赦ない攻撃だ。

 ラレンは黒い塊になってドロドロに溶けていく。あれも分身だったみたい。

 小屋から新しいラレンが飛び出してきたのでルアンナさんが戦う。有利に進めているけど、このままで終わるはずがない。傍観せずに僕も動くべきだ。

 壊れた壁の隙間からダイチが見えたので、全力で走る。

 男性特区でラニングしている成果がでているのか、息切れせずに小屋までたどり着く。ダイチの瞳が光り始めたので勢いをつけたまま殴りつけた。

「ガハッッ」

 足に力が入らないようで、一緒にいる痩せた女性のシャナルンに支えられている。

「スキルをキャンセルなんてさせない。お前は僕が倒す」

「どうして否定する? 俺のが目指す国を作れば、お前だってもっと良い思いが出来るんだぞ」

「女性を虐げるような国、認めるわけないだろッ!」

「なら男が不自由な思いをする国は存在して良いのか? 常に女に狙われ、行動は制限されている生活が当たり前だと? 女が多いだけで頭がおかしくなりそうなのに、出会った男どもはそれに疑問を持たない。みんなイカれてやがる!」

 頭に血が上って興奮していた僕は、今の発言で少しだけ冷静になれた。

 ダイチはこの社会、いや世界に疑問を持っているようだ。拒絶していると言っても良いだろう。

 この世界で出会った男は少ないけど、みんな男女比が違うことを受け入れいてた。当たり前だ。生まれたときからそういった世界なので、疑問を持つ方がおかしい。

「女性が多いのは当たり前だろ? 何を言っているんだ?」

「そんなはずねぇ!」

 興奮したダイチは支えていたシャナルンを突き飛ばした。さらに蹴りを入れると彼女は床に座り込んでしまう。

 また女性に暴力を振るった。それが許せない。

「増えた女は、まびいてやらねぇとなぁ!!」

 抵抗すれば逃げられるのにシャナルンは黙って、踏みつけてくるダイチの攻撃を避けようとしない。

「いいよ。ダイチ。君のすべて受け入れてあげる」

 どうして笑って受け入れているんだ?

 二人の関係が理解できない。

 けど、僕がやることは一つだけ。目の前の暴力を止める!

「ダイチ! 僕と戦え!」

 腰にぶら下げていた剣を抜いて構えた。さすがに危機感を覚えたのかダイチは踏みつけるのを止めて僕を見る。

「男同士で戦うなんて不毛だ。俺についてこい」

「断る!」

 女性に悪意を振りまくダイチはこの場で排除するぞ!



=========
【あとがき】
本日、Amazon Kindleにて電子書籍版を販売しました!
そちらも読んでもらえると更新を続けるモチベーションになります!
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界は、今以上にモテるようです。

狼狼3
ファンタジー
花壇が頭の上から落とされたと思ったら、男女比が滅茶苦茶な世界にいました。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし
ファンタジー
気が付くと、男性の数が著しく少ない歪な世界へ転生してしまう。 彼は持ち前の容姿と才能を使って、やりたいことをやっていく。 彼は何を志し、どんなことを成していくのか。 これはそんな彼――鳴瀬隼人(なるせはやと)の青春サクセスストーリー……withハーレム。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...