123 / 136
(123)宝石(いし)の力
しおりを挟む
「っ…!っう……」
肩の痛みはあるが、その他は何もない。
大事なのは、目の前に居る宝石(いし)の心だ。
これが弘毅の家で起きた事なら、もう一つの宝石(いし)が直ぐに駆けつけた事であろう。
だが、ここは中学校を真ん中にして南と北という正反対に位置する宮田家。
本宅でないのが、せめてもの救いだ。
でも、弘毅の思いが届いたのか、もう一つの宝石(いし)は異変を察知していた。
全ての宝石(いし)が揃い、元の形に戻ると、どうなるのか。
それでも、東京とはいえ、近くにある宝石(いし)は共鳴を起こしていた。
弘毅は、全然知らなかった。
自分のバイト先には何があるのか。
店長の正体も、何が置かれてるのかも。
それは、優介も同じだ。
店長である悟も、また…、自分が持ってるのと同じモノがオーストラリアに、しかもパースに居るとは知らなかった。パースにある3つの宝石(いし)と出会い、自分の宝石(いし)の力が増幅していた事も知らなかった。
悟自身が4つの宝石(いし)を身に浴びていた時間があったことも知らなかった。
そして、最近、その宝石(いし)が、残る1つの宝石(いし)の存在を知った。
週に2回しか会えないけれど、微かな波動を、しっかりと感じ取っていた。
悟の所に居る宝石(いし)は、確実に全ての存在を感じていた。
そして、時が満ちるのを待つのみの状態となっているのだ。
その宝石(いし)が、強い光を放っている。
その様子を見ていた悟は、宮田の家に居るであろう宝石(いし)に何かが起きてることに気付き、それを近くまで持って行こうとした。だが、宝石(いし)が示したのは本宅ではなく、住宅街にある一軒家だった。そこの表札には『宮田』とある。
あれは本宅ではなく、ここに移ったのか。一体、誰の家なんだ。
ここ等辺一帯は、全てが宮田さんだ。
すると、より一層強く光り輝いて、今までに見たこともない光の洪水を目の当たりにした。
数瞬後、その光は消え、宝石(いし)は元に戻った。
悟は呟いてる。
「凄い力だな…。終わったのか。ボス、お疲れ様。」
その呟きが聞こえたのだろう、悟の宝石(いし)は少し光って消した。
悟の宝石(いし)は、『ボス』と名付けられ、それが心地いい響きを醸し出してくれるので、その宝石(いし)はボス呼びを甘んじて受けている。
そして、悟はボスを大事に包み直して帰った。
それより、少し前。
地階の寝室では…。
肩の痛みに声も出ない弘毅は、齧り付いていた。
もう、どこを噛んでるのか分からないが、こっちも齧り付きたい気持ちになっていたからだ。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……・。
(副会長っ…、文雄さん!お願い、早く元に戻って。文雄さんっ…)
すると、急に力が湧いてきた。
何かが助けに来てくれたのか?
きょろきょろと辺りを見回したいが、肩があまりにも痛くて、どうしようも出来ない。
ふいに、塊が人間になった。
「文雄さんっ!!」
そう叫んで、俺は抱きしめ肩を噛んだ。
「っ・・、てぇ・・・・・」
声が聞こえた。
嬉しくて、俺は何度も何度も強く噛んだ。
「こう…」
俺は泣きながら言っていた。
「ふ、ふみ…お、さんっ…。俺を、傷物にした・・罪として…、一生、側に居てっ」
「傷物って…」
「俺の、左肩…。そんなにしたのは、文雄さん、だからっ」
左肩…?
呟きが聞こえてくるが、俺の左肩に残ってる噛み痕を指でなぞってくる。
その内、舐められてる感覚がきた。
「んっ・・・」
「これ、俺が…?」
「そうだよ。だから、俺も噛んでるの。文雄さん、あのドス黒いモノに乗っ取られてたんだよ!」
「ごめん、分からなかったよ…。」
「俺は・・、俺は、怖くて…。だけど、もう大丈夫そうだね。」
「なんだか、付き物が落ちたような気分だよ」
「ぽっこり、へこんだのかな…」
「ああ、へこんだのだろう。弘毅、もう少し寝よう。」
「ん…。お休みなさい」
「ああ、お休み」
しっかりと抱き合って、眠りに落ちた。
肩の痛みはあるが、その他は何もない。
大事なのは、目の前に居る宝石(いし)の心だ。
これが弘毅の家で起きた事なら、もう一つの宝石(いし)が直ぐに駆けつけた事であろう。
だが、ここは中学校を真ん中にして南と北という正反対に位置する宮田家。
本宅でないのが、せめてもの救いだ。
でも、弘毅の思いが届いたのか、もう一つの宝石(いし)は異変を察知していた。
全ての宝石(いし)が揃い、元の形に戻ると、どうなるのか。
それでも、東京とはいえ、近くにある宝石(いし)は共鳴を起こしていた。
弘毅は、全然知らなかった。
自分のバイト先には何があるのか。
店長の正体も、何が置かれてるのかも。
それは、優介も同じだ。
店長である悟も、また…、自分が持ってるのと同じモノがオーストラリアに、しかもパースに居るとは知らなかった。パースにある3つの宝石(いし)と出会い、自分の宝石(いし)の力が増幅していた事も知らなかった。
悟自身が4つの宝石(いし)を身に浴びていた時間があったことも知らなかった。
そして、最近、その宝石(いし)が、残る1つの宝石(いし)の存在を知った。
週に2回しか会えないけれど、微かな波動を、しっかりと感じ取っていた。
悟の所に居る宝石(いし)は、確実に全ての存在を感じていた。
そして、時が満ちるのを待つのみの状態となっているのだ。
その宝石(いし)が、強い光を放っている。
その様子を見ていた悟は、宮田の家に居るであろう宝石(いし)に何かが起きてることに気付き、それを近くまで持って行こうとした。だが、宝石(いし)が示したのは本宅ではなく、住宅街にある一軒家だった。そこの表札には『宮田』とある。
あれは本宅ではなく、ここに移ったのか。一体、誰の家なんだ。
ここ等辺一帯は、全てが宮田さんだ。
すると、より一層強く光り輝いて、今までに見たこともない光の洪水を目の当たりにした。
数瞬後、その光は消え、宝石(いし)は元に戻った。
悟は呟いてる。
「凄い力だな…。終わったのか。ボス、お疲れ様。」
その呟きが聞こえたのだろう、悟の宝石(いし)は少し光って消した。
悟の宝石(いし)は、『ボス』と名付けられ、それが心地いい響きを醸し出してくれるので、その宝石(いし)はボス呼びを甘んじて受けている。
そして、悟はボスを大事に包み直して帰った。
それより、少し前。
地階の寝室では…。
肩の痛みに声も出ない弘毅は、齧り付いていた。
もう、どこを噛んでるのか分からないが、こっちも齧り付きたい気持ちになっていたからだ。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……・。
(副会長っ…、文雄さん!お願い、早く元に戻って。文雄さんっ…)
すると、急に力が湧いてきた。
何かが助けに来てくれたのか?
きょろきょろと辺りを見回したいが、肩があまりにも痛くて、どうしようも出来ない。
ふいに、塊が人間になった。
「文雄さんっ!!」
そう叫んで、俺は抱きしめ肩を噛んだ。
「っ・・、てぇ・・・・・」
声が聞こえた。
嬉しくて、俺は何度も何度も強く噛んだ。
「こう…」
俺は泣きながら言っていた。
「ふ、ふみ…お、さんっ…。俺を、傷物にした・・罪として…、一生、側に居てっ」
「傷物って…」
「俺の、左肩…。そんなにしたのは、文雄さん、だからっ」
左肩…?
呟きが聞こえてくるが、俺の左肩に残ってる噛み痕を指でなぞってくる。
その内、舐められてる感覚がきた。
「んっ・・・」
「これ、俺が…?」
「そうだよ。だから、俺も噛んでるの。文雄さん、あのドス黒いモノに乗っ取られてたんだよ!」
「ごめん、分からなかったよ…。」
「俺は・・、俺は、怖くて…。だけど、もう大丈夫そうだね。」
「なんだか、付き物が落ちたような気分だよ」
「ぽっこり、へこんだのかな…」
「ああ、へこんだのだろう。弘毅、もう少し寝よう。」
「ん…。お休みなさい」
「ああ、お休み」
しっかりと抱き合って、眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる