恋人は副会長

福山ともゑ

文字の大きさ
上 下
116 / 136

(116)お試し夫婦?

しおりを挟む
そして、副会長は見学ではなく、体験として12時までやっていた。
俺は、そんな副会長を見て、やっぱり二刀流の人なんだ、と再認識してしまった。
生き生きとした表情になってる副会長に、俺は言ってやった。
 「週2の割合でやると、このポッチャリもへこんできますよ。されてはいかがですか?」
と、副会長の腹のラインをなぞってやった。
それを聞いてた皆は、一斉に噴き出した。
ドッ!
わはははっ…。
 「弘毅、さいこー!」

健なんて、涙を出しながら笑ってる。
 「ふ、ふみっ…おま、ぽっ・・ぽっちゃりって…」
副会長は、俺の頭を小突いてくる。
 「お前ねー、人の気にしてることをっ」

俺は、皆にバイトだからと言って外に昼飯を食べに行った。
副会長と一緒に。
 「18時までバイトなんだけど…」
 「帰るよ」
 「そうですか。気を付けて」
 「18時頃、また来るから」
 「え・・・」
 「明日は塾だし、こっちからだと6時起きで行ける。この1時間の差は大きい。
だから、朝飯と弁当よろしく。」
にっこりとして言ってくれる。
その笑顔は止めてほしいな、と思いながら、こう返した。
 「食費、貰いますよ?」
 「ああ、いいよ」
 「それなら、今夜は作りますね」
 「よろしく」
 「買い物して帰るので、18時半頃にして下さい」
 「一緒に」
 「夕食のリクエストは?」
即答で返ってきた。
 「オムライス!」
 「分かりました。それでは18時半頃に、お待ちしてますね。」

オムライスなら、付け合わせにポテトサラダを作ろう。
明日の弁当用に、多めに作っておこう。
18時半を少し過ぎた時に、呼び鈴が鳴った。
セキュリティカメラを覗き、そして玄関ミラーを覗くと副会長だ。
玄関を開ける。

ガチャ。

 「いらっしゃ…、って、その荷物なんですか?」
 「ん。着替えと勉強道具」
思わず聞き返してしまった。
 「一泊ですよね?」
 「二泊だ」
は?
 「月曜は、ここから一緒に行く。」
え・・?
 「親にも言って来たから心配するな。」
それって…、
 「で、何時になったら中に入れるんだ?」
そう言われて気が付いた。
 「あ、ごめんなさい。驚いて…」

副会長は、まるで我が家に居るみたいな感覚で、中に入っていく。
 「お、上手そうだな」
手を洗ってくるから、飲み物を箱から出して、と言われた。

箱から?

副会長の荷物を改めて見ると、リュックバッグに箱と、大きめのボストンバッグとスポーツバッグ。
その箱を開けると、スポーツドリンクとミネラルウォーターのペットボトルが入っていた。
 「これって…」
 「俺、飲み水には拘りがあるんだ。水道水でも良いけど、ろ過されていない水は駄目なんだ」

どうやら、夏のデトックスが原因で目覚めたらしい。
もしかして、影響されやすいのかな…。


翌日の日曜は6時起きか。夏は5時起きだったな、と思い出した。
俺のベッドで副会長と並んで眠りについた。
こんなにも、この人の温もりが嬉しく感じるのは初めてだ。文化祭が終わってから避けてたのに。
文化祭の片づけは手伝ったが、生徒会の打ち上げをドタキャンしてしまった。
だって、その日は家族3人で食事をしたからだ。夕食後、両親は成田に向かい、翌日アメリカに渡った。
あれから2週間。学校とバイトがあり、寂しさなんて感じなかった。なにしろ、理事長からミッションを貰っていたからだ。でも、そのミッションも終えた。
将来の事を考えないといけないのかな。理事長の言葉が頭の中に浮かんでくる。
 『自分の信念をやり通せ。自分のやってきた事を、人に伝える。』
あの理事長は、医学を進んでいたのに、婿養子になって教職に就き理事をしている。
色々な経験をしてきたのだろうな。
俺は、まだまだ子供だ。もう少しだけでいいから、この人の温もりを感じていたい。 


翌朝、俺は起こされる前に起きて、朝食と弁当作りの為、キッチンに下りた。
副会長も下りてきて、声を掛けてくれる。
 「俺より早起きだねぇ」
 「あんな起こされ方は嫌ですからね」
それは残念、と言って洗面所に向かった副会長の後姿を見て、思わず笑みが出た。


朝食も食べ終わると、副会長は言って来た。
 「もしかして、俺に弁当を2つも食えって事?」
 「あ、いや、こっちは俺の分」
 「え…」
 「今日バイトだし、たまには弁当持っていくのも良いかな、と思って」
 「それじゃ、今日の昼飯は弘毅と同じなんだ?」
 「そうですよ。中身は一緒」
そう返すと、副会長は嬉しそうな表情になり、キスをしてきた。

 「ん…」
 「頑張ろう、という気持ちが湧いてきたよ。弘毅、耳まで真っ赤だぞ」

だって…。

そんな俺の頭をくしゃくしゃっとされて、少しこそばゆい。
 「帰りは18時半過ぎになるかな」
 「分かりました。行ってらっしゃい」
 「行ってきます」

副会長、ありがとうございます。
俺も、頑張ろうという気持ちになってきましたよ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話

ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに… 結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?

ハメられたサラリーマン

熊次郎
BL
中村将太は名門の社会人クラブチーム所属のアメフト選手た。サラリーマンとしても選手としても活躍している。だが、ある出来事で人生が狂い始める。

処理中です...