恋人は副会長

（81）授業モードで漫才

結局、その日は機嫌も直ったユウと俺の為に、先生と高田先輩は夕食を作ってくれた。
　「一度食わせてやるっ、て言ったでしょ？結局、お流れになったし…。
だから、今夜が、その日だよ。」

俺、家に帰ろうと思ってたんだけど…。まあ、明日でもいいか。

食べると、美味しいのなんのって…。
本当に、先生も高田先輩も料理が作れるんだなーと、思わず感心して食べていた。
そんな俺を見ては、高田先輩もにこにこしてる。
　「久しぶりだな、テルの飯」と言いながら、宮田と副会長は食べてる。


ユウは入浴している時、高田先輩は、副会長に声を掛けてる。
　「ところで、何、その恰好？」
宮田も、同様に思ったのだろう。
　「お前、今夜はどこに行くつもりだ？」
先生も聞いてる。
　「そんなの着て、ばれたらどうするんだ？」
その3人に対して、副会長は言った。
　「コウキが言うんだぞ。俺が、あの二刀流の奴なら証拠見せろ、って。」

え、コウキにばれたの？


そう、あの時、副会長は俺に言ってきたんだ。
　「とっておきの秘密を教えてやる。だから、もう泣くな。」
　「秘密って…」
　「黒張りでアイマスクをしてる二刀流使いの正体。」
　「えっ、知ってるの？」
　「ああ。」
　「本当？誰？」
　「俺だ。」
　「俺だ、って・・・。」
俺の表情を見て、何か思ったのだろう。
副会長は、詳しく言ってきた。
　「俺が黒の上下の服を着て、アイマスクを付けて二振りの刀を持って、あいつと闘ってたの。
お分かり？」
そう言ってドヤ顔してくる副会長に、俺は証拠を見せて、と言ったんだ。

そして、実際に着てもらいアイマスクも付けて貰った。
だけど、まだ信じられない。
苦笑しながら、どこからか刀を持ってきて構えてる。
その姿を、色々な角度から見てた俺は、結論付けた。
でも、悔しくて言ってやった。


だから、この3人が居る今も同じ言葉を、俺は言ってやった。
　「だって、そうでしょ？」

　「なにが？」

　「あの人は、運動神経も反射神経も抜群に良くて。
なにより、あの素晴らしい体躯に、10頭身のモデル並みの体型。それに、アイマスクをした口元には不敵な笑みがあり・・・。俺は一目惚れしたんだよ。」

先生と宮田が呟いてる。
　「いつの間に、授業モード・・・・」

そんな2人を無視して、俺は続けて言い切ってやった。
　「あの2本の刀で大勢をなぎ倒して、ジャンプしたり、回し蹴りもカッコ良くて、敵だと見なした相手にしか刀を向けなかった。
あの犬にしても、そうだよ。100匹以上居て、あそこで運動会をしていたけど、あの人のバックにふさわしいと思ったよ。あの犬の群れが、こっちに走ってきた時は怖かったけど…。
カッコ良かった。本当に素敵でカッコ良かったんだよ。マジに惚れたんだよ。」

なのにっ、それなのに・・・！
　「あの人の正体が副会、宮田さん？
何度も言うが、あの人はスラッとした長身なんだよっ。でも、副・・宮田さんは、腹ポッコリのおデブちゃん！いてっ・・・。
これのどこが、スラッとした長身で、素晴らしい体躯に見える？
ねえ、高田先輩、ずっと笑ってるけど・・・」

高田先輩は、笑ってばかりで言えてない。
　「フッ・・、フミッ・・・」
宮田なんて、副会長のお腹の事を言ってるのだろう。
　「たしかに、ポッコリ…」
先生も、笑ってる。
　「いつの間に・・・」

　「仕方ないだろ！飯が上手いんだからっ！」と、吠えてる副会長。
その副会長に、俺はきっぱりと言ってやった。
　「食べ過ぎです。運動不足だし、適量という言葉を知ってますか？」
　「ああ？」
　「人間、腹八分目が一番です。」
　「お前、お仕置きされたいのか？」
　「出来るものなら、どうぞっ」


ぶわはははっ・・・！
リビングのソファをボンボンと叩きながら大声で笑う高田先輩に、呆れ顔の宮田。
先生の一言で、今夜はお開きになった。
　「部屋に戻ってから、二人でしてもらいたいね…」