恋人は副会長

福山ともゑ

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(30)いざ、勝負だ

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サワダの家は角にあり、普通の家にしては珍しいほどの正方形だ。
入り口は1つだけで、他には窓もない。
裏はどうなのだろう。
それに2階には窓枠はあるが、何かで打ちつけられており、窓のない壁と化している。
裏側に回れれば、対応策あるかもしれないんだけどな…。
そう思っていたら、塾帰りなのか、中学生や高校生が徒歩だったり自転車だったりと、帰宅してる連中が見えた。
好都合だ、彼等に聞いてみるか。
何人かは「知らない」とか無言だったりしていたが、同じ男子校の同クラスの奴が居たので、そいつを捕まえて話を聞くことが出来た。
そいつの家は、サワダの家より4軒向こうで、町内会は一緒との事だった。
少しお邪魔して話を聞いていたが、勉強の事で分からないところがあるから教えてと言われ、それで貸し借りをチャラにしてくれた。
そいつは、「コレを持って行って」と、竹刀と犬を貸してくれた。
可愛い犬だが、立派な犬歯を持っている。

借りるのは竹刀だけでいい。犬は怪我させたくない。
だから座り込んで、その犬に…、サンダーに話しかけた。
 「付いて来てくれてありがとう。ここまでで良いよ。ありがとう、サンダー。」
バイバイと手を振ったら、サンダーは俺の手書きメモを主人に渡す為、自分の家に戻った。
30分あれば、十分に暴れられる。
サンダーの主人は、俺が剣道をしていて一匹狼だという事を知ってたらしく、竹刀と犬を貸してくれた。その気持ちは、ありがたく受け取った。

見てろ、サワダ。
俺の恋人を拉致り、マッパにしてくれやがって。
しかも、あの女は、俺の恋人に手を出した…。


入り口は一つだけ。
裏側にも出入り口はあったが、惨殺され窓という窓は塗りつぶされたり、外から板を打ちつけられている。住んでるのは子供一人だけ。
その子供は不良の道に足を踏み入れ、今は保護観察中。
容疑者は、その子供だ。
相手が女だと見ると無理矢理にでも犯して、相手の意識が無くなると、殺す。


その時に、そいつはもう1人の名前を言ってきた。

松岡靖男。
あのヤリチンの名前だ。
ある意味、この2人は同類だと。

しかし、靖男の場合は人殺しはしない。
そこが2人の最大の相違点だ。
母親は病死だが、父親は殺されて、一時は荒れてた時期もあった。
だが、そいつは何とか乗り切った。
どういう方法なのかは分からないが、自分の家で1人暮らしをしている。
金はどうしてるのかは分からないが、恐らく親の保険金が入ってるのではないか。
それに、奨学金も入ってるのだろう。
あいつ、頭良いから。
それに、バイトをしてるとも聞いたことがある。
それは、カツアゲに似た感じの様なものだと…。
で、同じ高校の2年生だ。

ふむ、どっかの縁の下よりは詳しく知ってるな。
まあ、同じ地域だからこそのものだろうな。


俺は聞いていた。
 「首を絞めてヤルっていうのは知ってる?」
そいつは赤くなって返してきた。
 「え…、副会長、好きな男居るの?」
 「まあまあ、いいじゃない。そのやり方教えて欲しいな。」

そいつは、抱き枕を相手に見立て、実践してくれた。
首根っこというか、首元ね。
そっちに近い方の首をゆっくりジワジワと締めていくの。
そして、相手の意識が首ではなく、違う箇所になるようにもっていかせるんだ。
それは、胸とか下腹とか下半身とか…、まあ色々ね。
そこは言葉のテクニックだね。

それに、副会長が男が好きでも構わないよ。
俺の恋人も男だから。


 「頑張って副会長。応援してるからね。」
と、そいつからの声援をもらった。


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