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(16)フミオSide
しおりを挟む宮田副会長は生徒会室に戻った。
だが、先ほどのやり取りが、頭から、耳から離れない。
コウキ、松井弘毅。
俺より身長は低いが、ユウよりは高い。175か176位だろうか…。
大人しく真面目で、頑張り屋な奴。
天然な所も見受けるが、根は大人しく優しい。
ピアノも上手で、俺と同じ絶対音感を持ってる奴だ。
仮入部の初日に、オヤジの笑えないギャグに、唯一笑っていた。
しかも、初見でアノ曲を弾いてるのを耳にした時は驚いたが、その反面嬉しかったな。
あの後テルが来なければ2人っきりだったのに…。
テルが俺を探しに軽音の部室へ来たので紹介したら、コウキは本当に嬉しそうにしていた。
そんなコウキを目の前にして、俺は嫌な気持ちがしたんだ。
『伝説のイケメンボーカル・テル』
そう言われてテルも苦笑しながらでも嬉しそうにしていたし。
でもテルはマサと恋仲だ。
コウキは、どう思ってるのだろうか…。
あー。
くそっ…、気になって仕方がない。
仕事にならない。
本来なら総会を機に軽音部とは切れないといけないのに…。
でも、七夕祭の事もあり、まだ切れない。
なにしろ今年は主催校だからな。
コウキ…。
最近は、すぐにアイツを思い浮かべてしまう。
期末試験の勉強を生徒会室で、と言って生徒会室に押しかけて来たし…。
コウキに勉強を教えるのは良いが、これが1人だけでは無かった。
他にも3人がくっ付いてきてた。
まあ、この4人には生徒会メンバーになってもらうから、と顧問や教師連中には了解を得ているから良いのだけど。
2学期に入ると、引き継ぎをしていかないといけないな。
ユウは「キスをした」と、あいつに言ってた。
あいつは「コウキが中1の時、上半身にキスマークを付けた」と返していた。
コウキは、どう思っているのか?
あー。
もうっ、クサクサする。
何の為に、俺が軽音に行ってるのか、あいつは分かってないだろうな。
俺の頭の中の大部分を占めてるのはコウキなんだから。
そろそろ気持ちを言って、このイライラとかモヤモヤをすっきりさせたいな。
そう思うと、覚悟を決めた。
宮田副会長は、その覚悟を行動に移した。
コウキがチャリ通学なのは、本人から聞いて知ってる。
だから、場所はチャリ置き場だ。
一緒に帰ろう。
チラッと腕時計を見ると、16時半になろうとしている。
メアドは知ってる。
勉強を教えてた時に互いに交換していたからだ。
メールを送り、先に自転車置き場に向かった。
ブー…、ブー…。
あ、iPhoneが鳴ってる。
メールだったので無視しようと思えば出来る。
だが、無視できなかったコウキはメールを開けて見ていた。
それには、たった一行だけだった。
『今すぐに会いたい。自転車置き場で待ってる。』
え…!
目を瞠ったまま、何度も読み返していた。
送り主は、宮田文雄副会長。
それに…生徒会室ではなく、自転車置き場?
こんな時間に?
コウキは、部長に急用ができたからと言って、早く帰らせてもらった。
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