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医学部、集合する
しおりを挟む違う声が割って入る。
「所詮、モグラはモグラだな。意外な奴が居るなとは思ったがな」
声の方を振り向くと、タカだ。
「タカ、久しぶりだな。私は、お前にお願いしたい」
「何をだ?」
「リハビリの担当医。なんか偉そうにして何も喋らないしムカつくんだ。それに」
タカは遮ってくれる。
「ムカつくのは分かるよ。私も、そのリハビリ医にはムカついてるからな」
「なら、タカを担当に」
「私はオペドクだ。それに、自分の意思で居るんだ。いくら金を積まれようが動く気は無い」
「なら、違うリハビリ医を知らないか?日本人が良いんだ」
「日本人なら、そこのムカつくクマヤローだけだ」
「クマヤローね…、それはナイスネーミングだな」
「だけど、お前とは観点が違う」
「どういう意味だ?」
「私がクマヤローに対してムカつくのは、ボスを独り占めしているのと、武術を組んで毎回の様に負かされる事だ。それ以外ではムカつかない。
だけど、昔からお前の事はどうしてもムカつくんだよな。なんでだか分かるか?」
タカの言葉に、耕平は考え込む。
マサの声が、それに応じる。
「それはもう、昔から金に目が無かったからな。それさえ無ければ、他は目を瞑れるんだけどね」
ユタカの声も聞こえる。
「昔っからガメつかったもんな」
すると、ハスキーボイスが聞こえてきた。
「人だかりがあるからと思って来たのだけど…。久しぶりだねぇ、モグラ君。
いや、別名で呼んであげようか?」
その声の方を振り向くと、童顔の男が居る。どこかで見かけた様な顔だ。
「誰だ?」
「あれ、私の事は覚えてないって事?そんなにも変わったのかな?」
スズメの声が応じる。
「変わるわけ無いじゃん。この童顔の太極拳バカが。」
太極拳バカ…、耕平は思い出した。
「まさか、カズキ…?」
カズキは、別名で呼んでくる。
「なに、意外そうな顔をしてるんだよ。金の亡者君」
スズメは言ってくる。
「まだ金魚の糞の方が良いね。あいつは裏表が無いからな。
それに対してモグラ君は白黒をキッチリと出す奴だからな。
なあ、モグラ君。いくら貯めてきたんだ?
自分が貯めてきた金を息子の為に出すのは分かるよ。だけど、それは親として出すのではなく、自分の手駒として、自分の会社を広げたい為に出資してんじゃないのか?」
スズメのお喋りは健在みたいだ。
すると、澄ました声が聞こえてきた。
「頭の出来は良かったのにね。私は、君の頭の良さと努力家の点は認めてるんだよ。
ただ、君は言ってはいけない事を口にした」
「その言い方…、まさか、サトル?」
耕平の言葉に、野太い声が応じてくる。
「そうだよ、サトルだよ。しかもボスに聞かれてないとでも思ったのか?
苦しみを味わった人間にしか分からない。大事な物を失い、また前向きに生きていこうとしている人間に対して、さっきの言葉は無いね。ねえ、潰れ鼻のモグラ君」
潰れ鼻のモグラ。
こう呼んでくるのは、一人だけだ。
「ワン、なのか…。なんで、ワンまで……」
代表してスズメが応じた。
「ボスが生きて、ここに居るからだろ」
耕平は苦笑していた。
「本当に、お前等は昔からそれだよな…」
その耕平に、スズメはきっぱりと言ってやる。
「お前が私達10人の内で認めてる奴は、マサとタカだけだ。
ボスとサトルの努力家の事も認めているが、手の届かない位置の人間だからバリゲートに近付かないだけだろ。まあ、あの二人も、お前の事は鼻にも掛けてないからな」
スズメはサトルに聞く。
「違うか、サトル?」
「違わないよ」
カズキがスズメに声を掛けてるのが聞こえる。
「ねえ、最後の方しか聞こえてなかったのだけど…」
「んな事、皆の言ってる事を聞いてりゃ分かるだろ?」
カズキとワンの声が重なる。
「「 ああ…、誰かが自分の言う事を素直に聞かないからか」」
耕平は内心こう思っている。
(ったく、本当に、こいつら医学部の連中は、言ってない事をずけずけと言ってくる。
そうだよ、あのムカつく野郎が何も喋らないからだ。
クマヤロー、ね。
貴様の事を、洗いざらい調べて出自だけでなく、色々な事柄を頭に入れて弱みを握ってやる。
見てろよ、クマヤロー)
言葉に出ていたのか、スズメが反応する。
「なあ、今…、クマヤローって言ったか?」
「思ってはいたが、言葉に出ていたか?」
カズキは即答していた。
「なるほど。ムカついてる相手は、クマヤローか」
耕平は言っていた。
「色々な事を知りたいんだ。知ってる事があれば教えて欲しい」
先にスズメが応じてくる。
「クマヤローの何が知りたいって?」
「何処で生まれ育ったのか、家系とか、得意な事とか…」
「何それ。弱みを握るつもりか…」
その言葉に瞬間だが何も言えなくなる。
(さすが、スズメ。ボスの右腕と言われただけの事はある)
「担当医の事を知りたいと思うのは当然だろ。出自や人となりを知って」
タカが遮るように口を挟んできた。
「さっき、私に言ってきた事とは違う言葉だな」
「そうか?」
「リハビリの担当医を、私に。と言ってきたのに、出自と人となり、だって?
何を知りたがっているのか、はっきりと言ってやろうか?」
「知ってるのか?教えてくれ、何処で生ま」
だが、タカはこう答えてきた。
「担当医、という言葉だけで憶測すると、こうなる。
お前は、ドクターストップを掛かった子供を連れてパースに来る事に決めた。
ここには知ってる医学部出身が何人も居るから、誰かが自分の言う事を聞かなくても自分の子供の担当を替えて欲しい、と言えば簡単に出来ると思ってるだろう?
もっと言ってやろうか?」
その言葉を聞き何も言えない耕平に、今度はユタカがとどめを指してくる。
「なるほど…。ヨッパになってたのは、データにアクセス出来ないのもあり、幾重もの焦りか」
なぜ、それを知ってるのか。
こっちが聞きたいぐらいだ。
昔もそうだったが、本当に、この連中は苦手だ…。
一つの言葉で、次々と言い当ててくる。
そう思ってると、スズメの声がする。
「クマヤローは独り占めするし、武術にも強いからな。ほんとにムカつく奴だ…」
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