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第三章

2.レオンの提案

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「お前・・・なんか、すごいな」

「そりゃあ父さんの息子だからね」

レオンは微笑んだ。
グレンが知っているよりはるかに大人びた笑みであった。

年齢的には19歳とすでに成年をすぎているとはいえグレンの中ではまだまだ庇護下の子供だと思っていた。
いつのまに巣立ちを迎えていたのだと、グレンはうれしさとともに一抹の寂しさを感じた。

そして、自分は息子に何かを誇れるような人間ではないと思う。

「ーーだが、俺はクロンダイクを守れなかった。その責任は重い」

「それは・・・」

クロンダイクを守護するのが指名の騎士団長がおめおめと生き残ってしまったという思いが、今だにグレンの中にはあった。
亡くなったり、故郷をなくしたりした人々に対して申し訳ない気持ちになってしまう。息子との再会という幸福を味わってしまえばなおさらそれを感じた。

「父さんは悪くない。…確かに責める人もいるかもしれないけど、俺は父さんが生きていてよかったと思う。それに、父さんが生きてなければ、父さんが助けたといっていたこの国の王子だって、どうなってたか」

確かに、放浪していたグレンとの偶然の邂逅がなければシエルはどうなっていたか---
細かいことは聞いていないが、誘拐ですまず殺されていたかもしれない。

「それに、先帝は侵略の足がかりにするためにクロンダイクは絶対に落とすつもりだったらしい。どのみち一都市だけでは太刀打ちできるわけがなかった」

「……そうか」

とりあえずそれ以上の侵攻は結果阻止されたようなのはよかったのだろうと思っていると、レオンは窓をガタガタさせて下をのそきこんだりし始めた。

「何やってんだ?お前落ち着かないな」

「いや、別に。庭がきれいだから見たいな、と」

幾分そわそわしながらレオンが言う。

「庭ならあとで歩いて見せてもらったらいい」

窓からは確かに中庭が見えるが、ワーウルフは基本的に質実剛健を好むから増えすぎた枝を払うくらいで城内の庭園は比較的自然のままである。ただ、ここにしかないような珍しいものもあった。
だが、我が息子ながらそんなものに興味あっただろうかと思っていると、話はすぐに他方へ移った。

「さすがに父さんでもあの状況では死んでしまったとおもっていたから、レオンというクロンダイク人を探している人がいるという話を聞いたらびっくりした」

「どうしても信じられなくて。ヴォルフランドの人々には世話になってしまった」

「そういえば、今日ここから離れるところだったと聞いたけど、父さんはどこに行くつもりだったの?危うくすれ違いになるとこだった」

レオンはベッドに座ると、グレンが旅装なのを指摘した。
グレンはブルーをひろった顛末、田舎に小さな家を買ったことや、そこで暮らし始めたこと、ヴォルフランドにきてからのことなどをかいつまんで話した。
レオンは相槌を打ちながら聞いていたが、聞き終わると真剣な顔をして言った。

「父さん、その家に帰るなら俺と一緒にエリクシールに行かないか?」


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