ユルサレタイスパイラル

子供から大人へと 誰にも等しく流れる時間――
《 過去を振り返る男の自問自答ストーリー 》

 文筆家としてサラリーマンから独立したばかりの仁哉(じんや)のもとへ、ある日突然に「貴方の娘です」と少女が訪ねてくる。彼女の名前は、春乃(はるの)。
 それは高校三年を迎える春に別れてしまったカノの娘に間違いはなかった。

 男女の奇妙な共同生活が続く中で、仁哉の心は過去へと引き戻されていく……。
 歳の離れた兄の育て方で両親が不和となり、家族であっても孤独のつきまとう日々。当然のことながら、性悪に成長した兄も、付き合っていた女性を妊娠させて結婚するが、「子供に嫌気が差した」とすぐに離婚してしまう。薄情な血縁を呪いながら居場所を探して生きてきた仁哉にとって、小学校から付き合いのあったカノの存在が唯一の救いとなっていた。
 春乃から「母は死にました」と告げられ動揺する仁哉。
 ただひとつ、カノに対して疑心のあった仁哉は、自分が春乃の父親であるのかを確かめるために探偵を雇うことにする――

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