干さなければならない

 向かいのマンションでは、居住者が一様に寝具を干していた。ベッドの敷きパッド、タオルケット、毛布、とにかく寝具を干すことが規約に定められているのかと思うほど、晴れた日にはベランダに寝具が並んでいた。それは居住者が変わっても同じで、俺はずっと不思議に思っていた。
 ある時、俺はそのマンションに住む女子大生のエリカと仲良くなる。暑い夏の夜、仕事を終えて俺が帰宅すると、エリカが俺のマンションの前で待っていた。
 事情を訊くと、エリカはこう言った。

「干せなかったんです、今日」

 なぜ干さなければならないのか。
 干さなければどうなるのか。

 その夜、俺は身を以て知ることとなる。
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