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第3話

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 部屋の扉が荒々しく叩かれた。
 エイリスは慌てて飛び起き、扉をわずかに開ける。
 扉の隙間から覗いていた相手は――バイロン王子だった。
 王子は隙間に手を突っ込むと、思い切り扉を開いた。

「客人をもてなさず、放っておくとは城主失格だな」
「なっ……――」

 王子はずかずかと部屋へ踏み入り、ソファーに座る。
 そして自分の隣りに座れと、エイリスに促した。
 その行動にエイリスの鼓動が高まる。
 もしこのまま隣りに座れば、触れてくれる機会が訪れるのでは――
 エイリスは淡い期待を抱き、そして思い切り首を振った。
 そんなことある訳ない――きっと王子は私をコケにしにきたんだわ。

「何をしている? 早く来い」
「は、はい……」

 言われた通りに隣りへ座ると、王子がにやりと笑った。
 そしてテーブルの葡萄酒を勝手にグラスに注ぎ、こう言った。

「リネットをどう思う? 美しい娘だろう? しかも聖女の才能がある」
「はあ……確かに可愛いとは思います……」
「だろう? お前に指一本触れなかった俺が我慢できなかったほどだ」

 王子は葡萄酒を呷り、好色そうに目を細めた。
 その言葉にエイリスは衝撃を受けた。

「まさかリネットさんに手を出したんですか?」
「悪いか? どうせ手に入る女だろうが?」
「そんな……それじゃあ……――」

 言い伝えでは、王子も聖女も婚儀を済ますまでは清らかでなくてはならない。
 現在ではそれは形だけのものとして伝わっているが、そうではなかった。
 王子が肌を合わせた相手は聖力を帯び、聖女の力を発揮する――だがその聖力に常人は耐えられないため、王子に抱かれた者はやがて発狂するのだ。
 これは王家も知らないことだったが、聖女を研究していた魔王が教えてくれた。
 今、エイリスはリネットの力の秘密を知ってしまった。
 このままではリネットは狂ってしまうだろう。

「王子……! リネットさんと寝るのはお止め下さい……!」

 エイリスが声を上げると、王子が目を見開いた。
 その表情は驚きと喜びが混ざっている――エイリスは嫌な予感がした。

「そうか。お前、俺が好きだったのか」
「ち、違います……! そうではなく……」
「違わないだろう。俺もずっとお前を自分のものにしたいと思っていた。しかし聖力が足りない女を抱くなと、周囲に止められていたのだ。だが、ここはもう王宮ではない――」

 次の瞬間、エイリスの唇が奪われた。
 王子は乱暴に唇を重ねると、彼女の口内を舌で犯す。

「んっ……うぅんっ……ふっ……いやあッ!」
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