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第2話

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 先ほどのやり取りに傷付いたエイリスは後のことを全て従者コーディに任せた。
 王子とリネット達は部屋へ案内されて湯浴みや食事をしているだろう。
 本来なら城主として彼らをもてなさなければならない。
 しかし突き付けられた現実の厳しさに涙が止まらず、部屋から出られなかった。

「このまま幸せに暮らせると思ったのに……。どうしてこんな……」

 リネットと勝負すれば負ける――王子の自信がそれを物語っていた。
 そもそも自分は結界以外の力は全くないのだ。勝てる訳がない。
 エイリスがベッドで泣き暮れていると、その影が揺らいだ。

『クク……エイリス……可哀想なエイリス……』

 禍々しい声――それはエイリスにとって聞き慣れたものだった。
 彼女はベッドから起き上がると、自分の影を見据えた。
 影は気味悪く蠢くと、ひとりの美青年となった。

「魔王……! 何の用……?」
『こうして話すのはしばらくぶりだな。相変わらず麗しい』
「うるさい……! どうして姿を現したのよ……!」
『ついにこの国が手中に収まると思ってな。エイリス、お前は必ず負けるぞ』
「それはあなたが私の聖女の力を奪ったからでしょう……!」

 実はエイリスは幼少から聖女の力を発揮していた。
 しかし王家に娘を取られることを恐れた両親がそれを隠していたのだ。
 本来、王家と聖女は一心同である。
 聖女が王家と国を守り、王家が聖女を守るはずなのだが、幼いエイリスはその守護を受けることができなかった。
 その隙を魔王は見逃さない――幼いエイリスは呪いを受け、三つの力を失った。

『お前の守るこの国の未来は決まった――俺は今、すこぶる機嫌がいい』

 魔王は満足そうな笑みを浮かべ、こう囁いた。

『お前の力を戻す方法を教えてやる』
「何ですって……?」
『聖女を守護する力のある王子が、自らの意志でお前に触れればいいのだ。どうだ、簡単だろう?』

 渦巻くようにくつくつと魔王は笑う。
 一方、エイリスはその言葉に青ざめていた。
 自分を嫌っているあの王子が自らの意志で触れてくる訳がない――
 終わった。私は永遠に不完全なままだ。
 そして魔王は消え、影は元々の姿を取り戻した。
 エイリスは絶望のため、ベッドの上で茫然自失としていた。
 希望はない、自分の幸せな生活は音を立てて崩れ去るに違いない。
 しかし――
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