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そしてルキは指を鳴らした。
すると彼の背後から清々しい光が差し込む。
美しい空が見える。この先が楽園なのだろうか。
「さあ、この抜け穴を潜って。その先が私の住む世界だ」
そう言って彼は私の手を引く。
すぐにでも抜け穴を潜りたくなったが、ふと思い返した。
「でも国がこんな状態の時、私だけいいのかしら……」
「国の破滅に巻き込まれる善人達が心配なのかい? それなら私の従者達が避難させているから安心していい」
「本当に? 皆、無事なのね?」
「ああ、君が飛ばした守護のお陰で無事だ。それより早く移動した方がいい。聖女の力を感じ取った高位の魔物達が近づいてきている。捕まったら酷い目に遭うだろう」
その言葉に寒気がした。
人間ですらあんなに酷いことをするのだ。魔物とは関わりたくない。
私はルキに近づくと、光の漏れる穴を覗き込んだ。
花の甘い匂い――私はその香りに誘われるまま抜け穴を潜る。
目の前に広がったのは薔薇園。
鮮やかな薔薇が咲き乱れる庭には獣達の姿があった。
美しい毛並みの獣、可愛らしい獣、筋骨隆々とした獣……様々な獣が戯れている。
思わず見惚れていると、獣達はこちらに気づいたようだ。
次の瞬間、獣達が消えて私の手が掴まれた。
「えっ……? なに……?」
「ふむ、強大な力を秘めた匂いがするな」
そう言ったのは屈強な男性――金髪の長髪を靡かせる彫像のような美男だ。
私はその手を逃れようともがくが、相手の力が強過ぎてびくともしない。
「へえ、悪しき存在を裁いてきたんだね。優しそうに見えてやるね」
すると突然、青髪の美少年が私の顔を覗き込んできた。
眼の奥を覗き込み、不敵に笑う。
「あなたの力は献身的な守護の形をしています。常人にはできないことです」
すぐ横で穏やかな声がした。
赤目に白髪の美青年――私を頭のてっぺんからつま先まで眺めている。
何なの、この人達……。
「お前達! ノアから手を離せ! 彼女は私の客人だ!」
すぐ後ろからルキの声がして、男達は私からそっと離れた。
そして彼に向き直り、恭しくお辞儀をする。
「ルキ様の客人とは知らず、失礼を致しました」
「流石はルキ様が連れてきた女性。素晴らしいお人ですね」
「あまりに美しい心を持っていたため、吸い寄せられてしまいました」
その言葉に私は目を瞠る。
お世辞でもそんなこと言われたことがなかったから、焦ってしまう。
おろおろと狼狽えていると、ルキが私の手を掴んだ。
「すまない、ノア。彼らは私の臣下である聖獣達だ。何もされなかったかい?」
「え、ええ……大丈夫だけど、彼らも聖獣なの?」
「皆、各国を守護する聖獣だ。君が滅ぼした大国ほどではないけどね」
確かに私が住んでいた国は周辺の小国を束ねる大国である。
まあ、あまりにも腐っていたけれど。
それにしても臣下を持っているということはルキは地位が高いのだろうか。
私がじっと顔を見詰めていると、彼が焦ったように目を背けた。
すると彼の背後から清々しい光が差し込む。
美しい空が見える。この先が楽園なのだろうか。
「さあ、この抜け穴を潜って。その先が私の住む世界だ」
そう言って彼は私の手を引く。
すぐにでも抜け穴を潜りたくなったが、ふと思い返した。
「でも国がこんな状態の時、私だけいいのかしら……」
「国の破滅に巻き込まれる善人達が心配なのかい? それなら私の従者達が避難させているから安心していい」
「本当に? 皆、無事なのね?」
「ああ、君が飛ばした守護のお陰で無事だ。それより早く移動した方がいい。聖女の力を感じ取った高位の魔物達が近づいてきている。捕まったら酷い目に遭うだろう」
その言葉に寒気がした。
人間ですらあんなに酷いことをするのだ。魔物とは関わりたくない。
私はルキに近づくと、光の漏れる穴を覗き込んだ。
花の甘い匂い――私はその香りに誘われるまま抜け穴を潜る。
目の前に広がったのは薔薇園。
鮮やかな薔薇が咲き乱れる庭には獣達の姿があった。
美しい毛並みの獣、可愛らしい獣、筋骨隆々とした獣……様々な獣が戯れている。
思わず見惚れていると、獣達はこちらに気づいたようだ。
次の瞬間、獣達が消えて私の手が掴まれた。
「えっ……? なに……?」
「ふむ、強大な力を秘めた匂いがするな」
そう言ったのは屈強な男性――金髪の長髪を靡かせる彫像のような美男だ。
私はその手を逃れようともがくが、相手の力が強過ぎてびくともしない。
「へえ、悪しき存在を裁いてきたんだね。優しそうに見えてやるね」
すると突然、青髪の美少年が私の顔を覗き込んできた。
眼の奥を覗き込み、不敵に笑う。
「あなたの力は献身的な守護の形をしています。常人にはできないことです」
すぐ横で穏やかな声がした。
赤目に白髪の美青年――私を頭のてっぺんからつま先まで眺めている。
何なの、この人達……。
「お前達! ノアから手を離せ! 彼女は私の客人だ!」
すぐ後ろからルキの声がして、男達は私からそっと離れた。
そして彼に向き直り、恭しくお辞儀をする。
「ルキ様の客人とは知らず、失礼を致しました」
「流石はルキ様が連れてきた女性。素晴らしいお人ですね」
「あまりに美しい心を持っていたため、吸い寄せられてしまいました」
その言葉に私は目を瞠る。
お世辞でもそんなこと言われたことがなかったから、焦ってしまう。
おろおろと狼狽えていると、ルキが私の手を掴んだ。
「すまない、ノア。彼らは私の臣下である聖獣達だ。何もされなかったかい?」
「え、ええ……大丈夫だけど、彼らも聖獣なの?」
「皆、各国を守護する聖獣だ。君が滅ぼした大国ほどではないけどね」
確かに私が住んでいた国は周辺の小国を束ねる大国である。
まあ、あまりにも腐っていたけれど。
それにしても臣下を持っているということはルキは地位が高いのだろうか。
私がじっと顔を見詰めていると、彼が焦ったように目を背けた。
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