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第2章 能力者たちの集い
第3話 失ったもの
しおりを挟む生まれも育ちも、出雲市だった俺は家系が先祖代々霊的な力を持っていたことで実家はその土地で名の知れた神社だった。
昔からしきたりや作法に厳しかったし、後継者になるための修行もあって、友達と遊ぶことは出来なかった。
そんな友達と呼べるやつもいなかった俺は能力とは別に左右違う瞳が原因で周りから気味悪がられ、さらに孤独感を感じていた。
おい…バケモノが来たぞ
気持ち悪い目…こっち見んな
いっそ消えてほしい……
こんな言葉は日常茶飯事でもう嫌というほど慣れてしまった。
今さら悲しむ必要はないし、誰かに期待することはない。
けど、俺がいったい何をしたって言うんだ……
そう思っていたが、7年前の当時10歳…
人間不信に陥っていた俺の心を一気に覆す奴が現れた。
「俺、高巻 氷馬!お前の名前は?」
高巻 氷馬
都会からこんな田舎に引っ越してきた、ちょっと変わった奴だった。
噂なんか田舎じゃすぐ広まるし、俺がバケモノって言われていることもきっと耳に入ってる…
なのにあいつは他の奴らと違った。
「お前の家って神社なの?すっげーな!」
「響樹の瞳ってすごく綺麗だよな」
そう…俺の瞳を最初に綺麗って言ってくれたのはこの氷馬だった…
だから湊に同じことを言われた時、あいつと重ねたんだ。
氷馬、お前は俺にとって太陽みたいな眩しい存在だった。
お前と出会ったことで、冷め切ってぽっかり穴があいていた俺の心を少しずつ塞いで温かくしてくれた。
だから、氷馬にだけは俺の秘密を打ち明けることにした。
秘密を打ち明けた時、氷馬は少し驚いてはいたが俺の肩にポンッと優しく手を置き、悲しそうな表情をした。
「……今まで辛かったな…響樹はよく耐えたと思う…俺はお前の味方だから、もちろん話してくれたお前の秘密も誰にも言わない」
そう言ってくれた氷馬に俺は話してよかったと心から思った。
しかし、3年前の夏…
「高巻 氷馬が死んだ」
そう耳にした俺は頭が真っ白になった。
嘘だと自分に言い聞かせ、全速力で氷馬が運ばれた病院へ行った。
運ばれた先は霊安室で、そこには氷馬の両親もいた。
そこで仰向けに横たわっている氷馬を見るなり、俺は崩れ落ちた。
青白く変わり果てた氷馬は息をしていなく、現実を思い知らされた。
氷馬が…死んだ…
「響樹くん、氷馬はね…貴方に会いに行く道中に足を滑らせて崖に落ちたらしいの…貴方に会いに行ったから死んでしまったのよ」
そうか…俺のせいだって言いたいのか……
「貴方みたいなバケモノと友達になったせいで、たった1人の息子が死んでしまったのよ!こんな土地に引っ越さなければよかったわ、貴方のせいよ!息子を返して!」
「騒ぎ立てるのはよしなさい!」
氷馬の父親が、怒りで豹変した母親の肩を押さえ宥めた。
それでも母親は俺に矛先を向けたまま、睨み付けていた。
俺はどうすることもできず、氷馬の亡骸をもう一度目に焼きつけてから静かに霊安室を後にした。
俺に関わったから……
俺と友達になったから……
やっぱり、俺が氷馬を死なせた…
氷馬が死んだことで、また俺の心の穴があいた
「俺は生まれながらのバケモノだ」
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