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第2章 能力者たちの集い

第2話 妹

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テーブルを囲み、響樹の隣に座る少女は目の前に座る湊と雛に軽く会釈をした。  
そして厨房のほうから出てきた店員がテーブルの前で止まり、お盆に乗せていたパフェ2つとコーヒーと紅茶を各々の前に置いた。
湊はコーヒーを 少女は紅茶をひと口すすり、雛はいちごパフェを目の前にパァっと嬉しそうな表情でパクッと食べていた。

少女は受け皿にカチャンと静かな音を立てながらティーカップを置き、口を開いた。

「初めまして、音森 歌奏かなでと申します。お2人のことは何も聞かされていなくて…兄がいつもお世話になっています」

2人は改めて響樹の妹であり、歌奏と名乗る少女を真正面から見た。
藤色の髪に兄と同じ紫の瞳だが、無愛想な響樹とは違いとても愛想が良さそうな雰囲気だった。

「こちらこそ…響樹せんぱい、妹と会うなら会うでそう言って下さいよ」

歌奏から響樹に視線を変えた雛は頬をぷくっと膨らませながら言った。

「特に聞かれなかったし…」

「そーいうところですよ!そうやって殻に閉じこもってるから上級生に喧嘩売られるんですよ!」

「お前に関係ないだろ!直接関わってねーのに余計なこと言うなっての!」
 
「2人ともほんっと静かにして!!」

「お前が1番声でけぇよ」

「ふふっ」

3人の奮闘を見ていた歌奏が急に笑いだした。

「歌奏ちゃん?」

「あ、ごめんなさい笑ったりして…兄さんの楽しそうな顔を見るの久しぶりで、つい…」

「楽しそう?これが?…え、これが?!今から眼科行きましょう??」

「おい、雛…それ以上ふざけるとお前のドス黒い本性 湊にバラすぞ」


「はぁ?せんぱい頭大丈夫ですか?湊先輩の能力なんだと思ってます?心を読むんだからそんなのとっくに知られてますよ」

雛はふーやれやれとでもいうように態とらしく頭を抱えた。

「このクソガキ」

「響樹先輩がうるさーい」

雛が目線を外しながら両耳を手で塞ぎ聞こえないフリをする。

「全く…2人共、毎回毎回これだから目が離せないよ」

3人のやり取りにニコニコしながら見ていた歌奏に、ふと雛はあることに気づく。

「…あ、今さらですけど、そういえば歌奏さんはどこまで知って…」  

「本当に今さらだな…普通に喋っちゃったよ」


「問題ない、歌奏は能力のこと知ってる」

「あ、そうなんだ…」

ふーっと場が落ち着き、全員同時にカップに手を伸ばし喉の渇きを潤す。

「歌奏も能力者だからな」


…………………



「「えっ?!」」


響樹の発言に湊と雛は数秒考え、同時に立ち上がって身を乗り出した。
目の前の響樹はキョトンとしている。

「なんでそんな大事なこともっと早く言わない?」

「じゃあ聞くが、俺に妹がいて能力者だって言ってお前たちに何かメリットがあるか?」

「…いや、メリットとかそういう問題ではなくて」

「俺たち仲間なのに知らなかったことが悲しいんだよ」

「兄さんは親しい仲の友達があまりいないから、よくわからないんですよ」

「え、やっぱり友達いないんですね…」

雛はさーっと青ざめた顔をした。

「なんだその顔は。人のことをそんな目で見るな…それに、気の許せる友達ぐらいはいた」

「そうなんだ、その子は今どこに住んでるの?地元の方?」

湊がそう聞くと響樹は一瞬言葉を詰まらせたように目線を外した。

「…………いない」

「え?」

「死んだ……3年前の夏に」

「そう…だったんだ………」

湊も雛も響樹の言葉に黙ってしまった。
沈黙が暫く続き重い空気の中、口を開いたのは歌奏だった。

「そろそろ私、行かないと…学校の手続きとか済ませないと」 

「歌奏ちゃん、ここに住むの?」

「はい、兄の家に住まわせてもらって春からみなさんと同じ桜風高校の1年生として入学します」

「ってことは…雛にもようやく後輩ができるわけだな!」

「こ、後輩……!」

雛は目をキラキラさせた。

「そういうことなんで、4月からよろしくお願いしますね。

そう言うと歌奏は店の出口に向かい、響樹は湊と雛に「先に出る」と言って2人分の料金をテーブルに置いて歌奏の後ろに着いて行った。
そこで湊はあることに気づく。

「…あれ?俺たち歌奏ちゃんに名字のほう言ったっけ?」

「え…言ってませんね、響樹せんぱいが前に言ったんじゃないですか?」

「いや…響樹くん妹とはこっちに来てから会ってないし、俺たちのこと何も聞かされてないって言ってたじゃん」

「……じゃあ」

















「……悪かったな、2人で話すつもりだったのに」

「大丈夫、お友達にも会えたし」

「そういや、力使ったんだろ?」

「兄さんに聞かなくても、私の『透視』で彼らの名前はわかるから…」

響樹は「そうだな」と言って少し安堵した表情を見せた。

「それよりも聞かないの?どうして私がここに来たか」

「おおよその検討はついてる…俺の監視役で来たんだろ?」

「実際はね…でも私にとってはそんなのどうでもいいの。兄さんのことが心配で」

歌奏は出てきてしまいそうになる涙を堪えて何度も瞬きをしていた。

「ありがとな、歌奏…辛い思いをさせてすまない…」

響樹が歌奏の頭をポンポンとあやすように優しい眼差しで撫でる。

「っ…兄さん!」

歌奏は堪えきれず、兄の優しさにぶわっと涙が出てきた。
一瞬驚いた響樹だったが、妹の悲痛な声を聞いてそれに応えるように優しく撫でた。

「兄さん…あの2人は知ってるの?あのこと」

途端に響樹は歌奏に背を向けた。

「いや…」

「言わなくていいの…?また氷馬ひょうまみたいになっちゃうよ」

「……こわいんだよ、また失うのが…情けないけどな」

兄の震える背中を見て、歌奏は何も言えなかった。

「何度も思ったよ…俺の能力が過去に戻る能力だったらどんなに良かったか…」
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