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第1章 能力者たちの出会い
第1話 転校生
しおりを挟む昔々あるところに、1人の若い男がいました。
その男は生まれつき特殊な能力がありました。
未来を予知し、人の心を読み、怪我や病気を治すなど、多種多様な能力。
けれど男はこの自分の特殊な能力が嫌いでした。
力のせいで親に先立たれ、親しい友人はいなく、妻子にも見捨てられ、男の精神状態は限界だった。
その矢先、突如男の前に死神が現れた。
死神は男に契約を結ばないかと持ちかけてきた。
「契約を交わしたらお前の力はなくなる、しかしお前の子孫や他者がお前の能力を受け継ぐことになる」
自分だけ力から解放され、子孫や関係のない人を巻き込んでいいのだろうか…
男は悩んだ。
死神はそっと耳元で男に「契約を交わせば苦しみから解放される」とそそのかす。
周囲に気味悪がられ続けた男は孤独に耐えきれず、死神との契約を交わした。
すると男は体がフッと軽く、浮いたような感覚を覚えた。
「あぁ、やっと…やっと解放される」
男はそのまま眠るように倒れこみ、二度と目を覚ますことはなかった。
死神は不敵な笑みを浮かべてスッと消えた。
そして、永い永い年月を経て能力が受け継がれ、現代にたどり着いた。
秋の紅葉が彩る季節――――――
桃色の髪に左サイドの三つ編みが特徴的で左目には隈、右目は眼帯で覆った少年は真新しい制服に身を包み、今日から通う桜風学校の校門前で正面を見つめていた。
「・・・どうせどこ行っても同じだろ」
そう悟ったように呟くと同時に肩下まである外はねの髪が風でなびき、そのまま校舎へと入っていった。
職員室から担任とともに教室に入ってみれば、クラス全員初めて見る人物に目を向けた。
担任が「転校生紹介するぞー」と言いながら黒板に大きく名前を書き始める。
周りの視線を集める中、転校生はそんな視線ものともせず担任のあとに続き教卓の横で堂々と構えていた。
「えー音森 響樹くんだ、みんな仲良くしろよ。そうだな席は・・・」
担任が言い終わる前にガタッと椅子を引いた音が聞こえ、反射的に音のした方に顔を向けた。
「先生!ここ!ここあいてる!」
両手を思いっきりあげて主張する男子の席の隣は確かに空席になっていた。
担任はハァと呆れたようなため息をつきながら「わかったから落ち着け」と返した。
「音森、あの馬鹿の隣だ」
「馬鹿ってなんだよ先生ー!」
クラス中が笑いの渦になり、その男子は一気にクラスの注目を集めた。
けれど響樹は特に気にもせず、指定された席に着いた。
「俺、碧里 湊よろしくな!」
「・・・・」
「え、無視?」
青髪に触覚が生えたグリーンの瞳のその男子を無視すると、クラス中がしーんと静まり返った。
すると響樹の予想とは裏腹にクラスが笑いの嵐になった。
「みなとーお前がうるさすぎだからだぞー」
「音森くん、転校早々こんなヤツが隣でごめんなー」
予想外のことに困惑している響樹はどう言葉を発していいかわからなかった。
「あ…いや…」
こういう時に力を使えば先読みできるけどな・・・
心の中でそう思った時に湊が視線を送っていたのを響樹は気づいていなかった。
ーーーーーーーー---ーーー---ーーー---
放課後、響樹は早々と帰り支度をして校門を出たところで深くため息をつく。
今日一日、響樹は散々だったと心の底から落胆した。
朝のHRから常に隣の席の湊が四六時中くっついていたのだ。
それとは別に急な慣れない環境の変化と転校初日もあって、響樹はドッと疲れていた。
しかし安堵も束の間、学校を出て数メートル先で後ろからドタドタ走ってくる音と「待ってー!」というなんとも聞き覚えのある声で足が止まり、それが自分自身に向けてのことだと分かった。
振り返ると案の定その人物は響樹の隣の席である碧里 湊だった。
響樹の前で止まり、ぜぇぜぇ息をしながら呼吸を整えた湊はこう告げた。
「一緒に帰ろう」
湊はまるで当然OKの返事を期待するかのような笑顔で待った。
けれどその期待は裏切られた。
「何のメリットがあって?」
「え!メリット?!」
湊はうーんと腕を組み、必死に考えた。
「俺と一緒に帰ったら、なんと晩御飯が大好物です!」
「・・・俺の大好物知ってんの?」
「・・・いや、知らないけど・・・」
親指を立てながらドヤッとした湊だったが、響樹からの苦しい答えに一言で弾き返され息詰まる。
「言っとくけど、俺一人暮らしだから晩御飯のメニューはお前なんかに左右されないぞ」
「え!君一人暮らしなの?!いいな~何処住んでんの?」
「話が脱線しかけてるぞ」
徐々に話のペースを乱され脱線しかけたが、響樹がさせるものかと修正をかけた。
響樹は「はぁ…」と今日何度目か分からない深い溜息をつく。
「大体、なんで俺にそんな構うんだ?」
響樹が質問すると湊は黙って一呼吸置いてからこう答えた。
「君と・・・友達になりたいから」
湊がそう答えると響樹は眉をピクッとさせ、眉間に皺を寄せた。
響樹が考え込んでいる様子を見た湊は今度こそ、と気持ちを高ぶらせ、次の言葉を待ち続ける。
「・・・・メリットは?」
「っておい、またそれ?!・・・あのさ、友達になるのにどうしてメリットが…っ?」
"メリット"と何度も言葉の盾を使う響樹に嫌気が指した湊は思わず声を荒げた…が、響樹の暗く沈んだような声に言葉が詰まった。
「どうせお前も・・・そのうち俺のこと嫌になるよ」
「…どういうことだよ」
「・・・俺に構わないでくれ」
それだけ言うと響樹は振り返ることなく行ってしまった。
「・・・・ただ友達になりたいだけなのに」
そう呟きながら1人佇む湊はしばらくその場から動かなかった。
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