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魔法学園グリモアール編
秘密
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俺がマサトを倒したと同時に試合は終わった。どうやらマサトがCクラスの最後の生徒だったようだ。
みんなは試合に勝って喜んでいる中で、俺はまっすぐにマサトの方へと向かう。
「おいマサト!さっき言っていたゲームにはなかったってどういう意味だ!」
俺はマサトの胸ぐらをつかみ、怒鳴りたてるように聞く。
マサトは少し驚きながらもしっかりと答える。
「まず、俺はこの世界の人間じゃない」
「それは分かっていたからいい。俺が気になるのは、そのあとだよ。そのあと」
「あ、そうなんでか……」
マサトは出っ鼻を挫かれたみたいで、すごく落ち込んでいた。だが、俺はそれを気にせずに畳み掛ける。
「だから、ゲームにはなかったってどういう意味だ?」
「……この世界は俺のやっていたゲームそのものだったんだよ」
「は?」
「いきなり言われても分からないと思うが、実際その通りなんだよ」
つまり、俺が転移してきたこの世界観はこいつしていたゲームと同じってことだろ。
「その世界の主人公として俺がこの世界に転生してきたんだ」
「ちょっと待った!………もしかして、クラス転移してきた勇者っていたか?」
「いた。てか、俺はライト=シュガーっていうキャラクターを知らないんだが」
「あっ、すまん。俺の本当の名前は佐藤光だ。この名前に聞き覚えは?」
「うーん?すまんがそんな名前も聞いたこともないぞ」
どういうことだ。御剣の存在は知っていると言った。なら、俺の名前も知っているはずだ。他の人の名前も聞いてみるか。
「田中賢一という賢者は?」
「知ってる」
「じゃあ辻村夏希という侍は?」
「知ってる」
「………佐藤光という魔術師については?」
「………やっぱり、ごめん。知らないわ」
この世界はゲームとまるで一緒だと言った。いや、ゲームの世界そのものと変わらないと言っていた。
「つまり、俺はゲームで言うところのバグみたいなもんだと」
「確信はないけど、たぶんそうなると思う」
「そうか……」
「この試合はあのまま君が来なかったら、俺がミルラ王女たちに勝ってCクラスが優勝して、ヒロインたちの好感度もうなぎ登りだったのに……」
マサトは悔しそうに呟いた。
きっとこの試合に勝ってば、女子に囲まれてウハウハなイベントが待っていたんだろうな。
無念、マサト。
しかし、俺という存在のせいで、もしかしたらシナリオという名の運命が少しずつ少しずつ変わってきているのかもしれない。それがいいことなのか、悪いことなのかは、きっと誰もまだ知ることはないのだろう。この先に明るい未来が待っているのか、それとも、残酷で絶望的な未来が待っているのかは俺の行動によっても変化するということを頭の中にいれておかないとな。
その後、俺たちは閉会式には出場することなく、自分たちの部屋へと向かった。
「はあ、今日は色んなことがありすぎたな。頭がまだ情報を処理しきれていない感じがする。……このまま寝るか」
俺はベッドに寝転がり、目を閉じて寝ようとする。しかし、寝ようとしてもなぜか寝付けず、起きたままでいると、ミルラ王女が帰って来た。
なぜかミルラ王女は俺を見つけると少し不機嫌そうな顔になった。
「なんで不機嫌そうなんだよ」
「だってお兄ちゃん閉会式に参加せずにいつの間にか先に帰っていたじゃん!一緒に帰りたかったのに……」
くっ!そんな見るからに落ち込まれると俺の良心が保たない。
「はあ、すまん。ちょっと考え事がしたくてな」
「ふーん。まあ、今回は許してあげましょう」
「そうか、それなら助かる。それじゃ、俺は疲れたから次こそ寝るから。おやすみー」
「はあ、分かりましたよ。おやすみなさい」
そして、俺はそのまま意識を落としていった。
みんなは試合に勝って喜んでいる中で、俺はまっすぐにマサトの方へと向かう。
「おいマサト!さっき言っていたゲームにはなかったってどういう意味だ!」
俺はマサトの胸ぐらをつかみ、怒鳴りたてるように聞く。
マサトは少し驚きながらもしっかりと答える。
「まず、俺はこの世界の人間じゃない」
「それは分かっていたからいい。俺が気になるのは、そのあとだよ。そのあと」
「あ、そうなんでか……」
マサトは出っ鼻を挫かれたみたいで、すごく落ち込んでいた。だが、俺はそれを気にせずに畳み掛ける。
「だから、ゲームにはなかったってどういう意味だ?」
「……この世界は俺のやっていたゲームそのものだったんだよ」
「は?」
「いきなり言われても分からないと思うが、実際その通りなんだよ」
つまり、俺が転移してきたこの世界観はこいつしていたゲームと同じってことだろ。
「その世界の主人公として俺がこの世界に転生してきたんだ」
「ちょっと待った!………もしかして、クラス転移してきた勇者っていたか?」
「いた。てか、俺はライト=シュガーっていうキャラクターを知らないんだが」
「あっ、すまん。俺の本当の名前は佐藤光だ。この名前に聞き覚えは?」
「うーん?すまんがそんな名前も聞いたこともないぞ」
どういうことだ。御剣の存在は知っていると言った。なら、俺の名前も知っているはずだ。他の人の名前も聞いてみるか。
「田中賢一という賢者は?」
「知ってる」
「じゃあ辻村夏希という侍は?」
「知ってる」
「………佐藤光という魔術師については?」
「………やっぱり、ごめん。知らないわ」
この世界はゲームとまるで一緒だと言った。いや、ゲームの世界そのものと変わらないと言っていた。
「つまり、俺はゲームで言うところのバグみたいなもんだと」
「確信はないけど、たぶんそうなると思う」
「そうか……」
「この試合はあのまま君が来なかったら、俺がミルラ王女たちに勝ってCクラスが優勝して、ヒロインたちの好感度もうなぎ登りだったのに……」
マサトは悔しそうに呟いた。
きっとこの試合に勝ってば、女子に囲まれてウハウハなイベントが待っていたんだろうな。
無念、マサト。
しかし、俺という存在のせいで、もしかしたらシナリオという名の運命が少しずつ少しずつ変わってきているのかもしれない。それがいいことなのか、悪いことなのかは、きっと誰もまだ知ることはないのだろう。この先に明るい未来が待っているのか、それとも、残酷で絶望的な未来が待っているのかは俺の行動によっても変化するということを頭の中にいれておかないとな。
その後、俺たちは閉会式には出場することなく、自分たちの部屋へと向かった。
「はあ、今日は色んなことがありすぎたな。頭がまだ情報を処理しきれていない感じがする。……このまま寝るか」
俺はベッドに寝転がり、目を閉じて寝ようとする。しかし、寝ようとしてもなぜか寝付けず、起きたままでいると、ミルラ王女が帰って来た。
なぜかミルラ王女は俺を見つけると少し不機嫌そうな顔になった。
「なんで不機嫌そうなんだよ」
「だってお兄ちゃん閉会式に参加せずにいつの間にか先に帰っていたじゃん!一緒に帰りたかったのに……」
くっ!そんな見るからに落ち込まれると俺の良心が保たない。
「はあ、すまん。ちょっと考え事がしたくてな」
「ふーん。まあ、今回は許してあげましょう」
「そうか、それなら助かる。それじゃ、俺は疲れたから次こそ寝るから。おやすみー」
「はあ、分かりましたよ。おやすみなさい」
そして、俺はそのまま意識を落としていった。
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