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王国襲撃編
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俺が目を覚ますとなぜか目の前にミルラ王女の顔が近くにあった。
「目を覚ましたか、佐藤さん」
「……何をしているんですか」
「何って…膝枕ですよ、膝枕」
俺は顔が赤くなるのを感じた。女子から膝枕をしてもらうなんて初めてだからな。しかし、何故こんな状態になっているのだろうか?
「あのーなんでこんなことしてるんですか」
「なんでってここであなたが倒れていたからですよ」
「……というか、お前たちって逃げたんじゃないのか」
俺がオーガと戦っている時間を利用して逃げたのを確かに見た。だから、彼女がここにいる理由がわからなかった。今頃、平和なところにいるはずなのにだ。
「ええ。確かに逃げましたよ、お父様とお母様たちだけが」
「……?なんでお前はついていかなかったんだ?」
「ついていかなかったんじゃなくて、ついていけなかったんですよ」
ついていけなかった?どういうことなんだ?こいつはこの国の王女なんだろ、ならば、置いていく理由が無いはずだ。
「ついていけなかったってどういうことだ?」
「ええと、簡単に言えば最初から疎まれてはいたんです。私は生まれた時は髪の色が黒髪だったんです。ですが、こちらの世界の人たちは黒髪は悪魔の象徴と言っているんです。あっ、あなたたちのように異世界からきた人たちは別ですよ?だから、私はこの国に悪魔の象徴が生まれてしまったことを隠すために髪を今の色に染めたのです」
確かに今のミルラ王女の髪の色は、黒髪とは遠く離れた金髪になっている。だが、今の話が本当ならば、あの王様たちはやはりクズだったか。
「まあ、あんまり気にするなよ?俺だって捨てられたわけだし。今じゃこの世界の住民と変わらない。つまり、俺も悪魔の象徴ってわけだ」
俺はどや顔でそう言った。すると、ミルラ王女は、突然笑い出したのだ。
「やっぱり優しいんですね。お兄ちゃん」
「お、お兄ちゃん?」
「鬼のお兄ちゃんだから、略してお兄ちゃんだよ」
そうめちゃくちゃいい笑顔でミルラ王女は言った。
鬼ね、あっ!俺今の姿は鬼だったんだった。自分のことなのに忘れてました。テヘペロ。
「それよりもお前はこれからどうするんだ?住むところがなくなるんだろ?」
「あ、その辺りは大丈夫です。ちょうど一週間後から魔法大都市ライデンにある魔法学園グリモアールの入試があるんです。それに合格することができれば、寮に入ることができるので。あの、お兄ちゃんはどうするんですか?」
お兄ちゃん呼びはそのままなんですね。でも、なんでだろうか?彼女にお兄ちゃん呼びされるとどうしようもなく懐かしい気持ちになってしまう。
これからのことか……何も考えていなかった。仲間たちからは裏切られ、戻るところも無くなっているのだから、現状彼女より俺のほうが危ないのでは!?
「…………何も考えていなかったな」
俺がそう答えると彼女は顔を満面な笑顔に変えて言った。
「なら私と一緒に行きましょう。入試事態は飛び入りオッケーですし、何より実技しかないですからね」
「俺も入学しろと?」
「そういうことです。あっ、でも名前は変えないといけませんね!お父様たちに気づかれるわけにはいきませんからね!」
名前か………そうだよなー。あっちにはばれているから、偽名を作らなくちゃいけないな。いや、佐藤光は今ここで終わりだ。また、ここからスタートするんだ。
「そうだな。なら、今から俺の名前は佐藤光ではなく、ライト=シュガーだ!」
自分でもまんま過ぎると思ったが、これ以上にいいのが思い浮かばなかったので、割愛だ。
「はい!では、行きましょうか、ライト=シュガーさん!」
こうして、俺と彼女は新しいスタートを切ったのだった。
「目を覚ましたか、佐藤さん」
「……何をしているんですか」
「何って…膝枕ですよ、膝枕」
俺は顔が赤くなるのを感じた。女子から膝枕をしてもらうなんて初めてだからな。しかし、何故こんな状態になっているのだろうか?
「あのーなんでこんなことしてるんですか」
「なんでってここであなたが倒れていたからですよ」
「……というか、お前たちって逃げたんじゃないのか」
俺がオーガと戦っている時間を利用して逃げたのを確かに見た。だから、彼女がここにいる理由がわからなかった。今頃、平和なところにいるはずなのにだ。
「ええ。確かに逃げましたよ、お父様とお母様たちだけが」
「……?なんでお前はついていかなかったんだ?」
「ついていかなかったんじゃなくて、ついていけなかったんですよ」
ついていけなかった?どういうことなんだ?こいつはこの国の王女なんだろ、ならば、置いていく理由が無いはずだ。
「ついていけなかったってどういうことだ?」
「ええと、簡単に言えば最初から疎まれてはいたんです。私は生まれた時は髪の色が黒髪だったんです。ですが、こちらの世界の人たちは黒髪は悪魔の象徴と言っているんです。あっ、あなたたちのように異世界からきた人たちは別ですよ?だから、私はこの国に悪魔の象徴が生まれてしまったことを隠すために髪を今の色に染めたのです」
確かに今のミルラ王女の髪の色は、黒髪とは遠く離れた金髪になっている。だが、今の話が本当ならば、あの王様たちはやはりクズだったか。
「まあ、あんまり気にするなよ?俺だって捨てられたわけだし。今じゃこの世界の住民と変わらない。つまり、俺も悪魔の象徴ってわけだ」
俺はどや顔でそう言った。すると、ミルラ王女は、突然笑い出したのだ。
「やっぱり優しいんですね。お兄ちゃん」
「お、お兄ちゃん?」
「鬼のお兄ちゃんだから、略してお兄ちゃんだよ」
そうめちゃくちゃいい笑顔でミルラ王女は言った。
鬼ね、あっ!俺今の姿は鬼だったんだった。自分のことなのに忘れてました。テヘペロ。
「それよりもお前はこれからどうするんだ?住むところがなくなるんだろ?」
「あ、その辺りは大丈夫です。ちょうど一週間後から魔法大都市ライデンにある魔法学園グリモアールの入試があるんです。それに合格することができれば、寮に入ることができるので。あの、お兄ちゃんはどうするんですか?」
お兄ちゃん呼びはそのままなんですね。でも、なんでだろうか?彼女にお兄ちゃん呼びされるとどうしようもなく懐かしい気持ちになってしまう。
これからのことか……何も考えていなかった。仲間たちからは裏切られ、戻るところも無くなっているのだから、現状彼女より俺のほうが危ないのでは!?
「…………何も考えていなかったな」
俺がそう答えると彼女は顔を満面な笑顔に変えて言った。
「なら私と一緒に行きましょう。入試事態は飛び入りオッケーですし、何より実技しかないですからね」
「俺も入学しろと?」
「そういうことです。あっ、でも名前は変えないといけませんね!お父様たちに気づかれるわけにはいきませんからね!」
名前か………そうだよなー。あっちにはばれているから、偽名を作らなくちゃいけないな。いや、佐藤光は今ここで終わりだ。また、ここからスタートするんだ。
「そうだな。なら、今から俺の名前は佐藤光ではなく、ライト=シュガーだ!」
自分でもまんま過ぎると思ったが、これ以上にいいのが思い浮かばなかったので、割愛だ。
「はい!では、行きましょうか、ライト=シュガーさん!」
こうして、俺と彼女は新しいスタートを切ったのだった。
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