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第二部 三章 善悪の境界線
意識の欠片
しおりを挟む周囲の風を集めるだけでは足りない。
荒野中、いやテミス帝国全土から風を集めていく。
「イス、トおおおお!」
ライフル弾が肩に命中したレッドガーディアンは叫びながら転がる。
本当ならミトリアは額を狙っていたのに、射撃に反応して躱されそうになったのだ。音速の三倍以上の速度だというのに早くも対応してきた。起き上がったレッドガーディアンに彼女がもう一発放つと、今度は完全に躱されてしまう。もう遠距離からの射撃は通用しないことをエビル達は悟る。
「遠くから撃っても躱されるなら……近距離だ!」
走って距離を詰めていくミトリアの行動にエビルは目を見開く。
遠距離用射撃武器を近距離から使えば、微々たるものだが威力も速度も変化する。撃たれた弾は時間が経つごとに速度が落ちるし、速度が落ちれば威力も落ちる。ただ先程彼女が撃った位置なら速度は初速から殆ど落ちない。どういう意図があるのか分からずエビルは困惑してしまう。
困惑しているのはレッドガーディアンも同じだった。
一見、自棄になって特攻したようにしか見えない行動。
ミトリアはどんどん距離を詰めていき、レッドガーディアンは彼女を迎え撃とうとする。僅か一メートルほどまで近付いた彼女はようやく弾を発射。さすがに至近距離すぎて完全には躱せず頬に命中。レッドガーディアンは衝撃で独楽のように回転する。
「ミトリアさん早く離れて! 攻撃が来る!」
攻撃の前兆を知らせる風を感じてエビルは叫ぶ。
レッドガーディアンは回転の勢いをそのままに腕を振り、ミトリアは対処が間に合わずに殴り飛ばされた。改造スナイパーライフルを盾にしたからダメージを軽減出来ているものの、元々の威力が高いため彼女は立ち上がれない。
動けない彼女に向かってレッドガーディアンが歩いていく。
今すぐにでも彼女を助けに動きたいエビルだが心の中で迷う。
仮に動いたら助けること自体は問題なく成功するだろう。だがレッドガーディアン討伐のために必要な威力を出すため集めている風は霧散してしまい、結果どちらの身にも危険が及ぶ。少しでも時間を稼ぐ役目を買って出た彼女のためにも、エビルは風集めに集中するべきである。……かといって彼女を見殺しにしては何の意味もない。自分の生き方すら揺らいでしまうはずだ。
「ミトリアさん! どうにかレッドガーディアンから離れてください!」
「……立てん。一時的に体が麻痺しているようだ」
「くそっ、集めた風はまだ不十分。この作戦は諦めるしかないのか……!」
我慢出来ずに助けるためエビルが動こうとした時、分厚い鉄を打つような重い低音が響いた。
研究所に繋がる廃棄用通路から一体のグレーゾーンが飛び出して来たのだ。先程の低音は飛び出たグレーゾーンが通路の蓋を踏んだ音。証拠として鉄製の分厚い蓋は大きく凹んでいる。
「グレーゾーン!?」
集団のグレーゾーンはリンシャンとロイズ、ギルドの人間達が足止めしているはずだ。連携を大事にすれば討伐するのも苦にはしない。こうして地上に出て来ることなどあるわけがないのだが、今エビルの視界にグレーゾーンの姿が映っている。
「くそっ、助けに入らないと!」
迷っている暇はなくなった。レッドガーディアンでさえ手に余るというのに、他の生体兵器まで参戦した現状エビル達の勝ち目はい薄い。ミトリアも足止めすら満足に出来ないだろう。それどころか早々に助け出さなければ彼女は殺されてしまう。
――今度こそエビルが動こうとした時、グレーゾーンはおかしな行動をした。
「え、どういうことだ?」
予想は大きく外れて、グレーゾーンはレッドガーディアンへと駆けて殴ったのである。生体兵器は襲わないものとばかり考えていたが、一切の躊躇なく全力で殴っている。エビルにとっては好都合だが生体兵器同士の殴り合いが始まってしまった。
「何がなんだか分からないけど好都合か」
どちらも引かない殴り合いのおかげでミトリアは助かり、エビルは風集めに集中出来る。テミス帝国全土から集める風は膨大な量だし時間はかかるが、生体兵器同士の争いのおかげで集め終わった。
「準備は終わった。喰らえ! 〈死嵐斬〉!
膨大な量の風エネルギーを圧縮して剣に纏わせる。
これまで使用してきた〈暴風剣〉を遥かに上回る力。奥義とすら呼べる圧倒的力を秘めた一撃を、最高速度でレッドガーディアンへとぶつける。
ミトリアの改造スナイパーライフルすら躱す相手なので当然反応してきたが、エビルの補助をするようにグレーゾーンがレッドガーディアンを押さえてくれた。
強力な風を纏った剣は頑丈な皮膚や筋肉を切り裂く。
容易くとはいかなかったが斬る大変さが大幅に減少している。
雄叫びを上げながらエビルは何度も剣を振るい、素早い剣技でレッドガーディアンをバラバラに切断してみせた。連撃の直後は暴風が吹き荒れ、切断された部位が四方八方へ飛ぶ。荒野に転がった肉塊は次々と黒く染まっては塵になっていく。
この世界から肉塊が消えるのを見届けたエビルは「勝った……」と呟き、地面に膝から崩れ落ちる。国の全土から風を集めて圧縮するなんて初の試みに体は悲鳴を上げている。想像以上に大きな負担だし、使用に時間がかかることから今後〈死嵐斬〉を使うことはもうないだろう。
「……いや、まだだ。もう一体」
レッドガーディアンは倒した。次はグレーゾーンだ。
討伐に協力してくれたのは素直に感謝しているが危険な存在に変わりない。早く対処しなければミトリアの命も危ない。エビルが慌てて振り向くと、彼女はグレーゾーンと一対一で見つめ合っていた。
一人と一体の間に敵意はない。
怒りも、殺意も、喜びもない。あるのは悲しみのみ。
感情を風で感じているとエビルに新たな思考が生まれる。
人類を守護する生体兵器を作るガーディアン計画は成功していたのではないか。イストがレッドガーディアンのことだけ考えていたせいで気付かなかったのではないか。憶測に過ぎない思考が次々と浮かぶ。
「――ナナク、なんだな?」
憶測は全て吹き飛んだ。
ミトリアの問いにグレーゾーンは答えられない。
ただ、言葉を話せない生体兵器は一度だけ首を縦に動かす。
「ナナクさんって……ミトリアさんの」
「旦那さ。もっとも、面影すらなくなってしまったようだがね」
ミトリアの褐色の顔を一筋の涙が伝う。
正直エビルは信じられない気持ちでいっぱいだが、どんな生物も内側の感情だけは誤魔化せない。風の秘術で探ってみればグレーゾーンの内面に小さな意識があった。さらに驚くべきことに小さな意識はさらに小さくなっていっている。
「あの、ミトリアさん。言いにくいんですが……ナナクさんの意識はもう、消えかけています。直に彼の心は完全に消されてしまう。……危ないん……です」
「なぜ分かる?」
「風の秘術です。僕には、感じ取れてしまう」
このままだとナナクの意識は消えて、どこまで残っているか分からない彼の記憶だけが残る。分かった以上何とかしたいがどうにもならない。そもそもなぜ彼の意識や記憶が残っているのかすら分からないのだから手の施しようがない。
一つ確かなのは、時間経過と共に彼の心は死ぬということだ。
「……そうか。エビル、すまないが先に戻ってくれないか。ロイズ達がまだ戦っているかもしれないから援護に向かってくれ。……私も、後から行く。ナナクとの別れを済ませたらすぐに行く」
「分かりました。ロイズ達が戦っているグレーゾーン達は僕が片付けます。だから、ミトリアさんはロイズ達を心配しなくていいです。今は、目の前のことに集中してください」
「本当にすまないな。迷惑をかける」
涙を流し続けるミトリアに背を向けてエビルは廃棄用通路に入る。
階段を下りる途中、頭は彼女とナナクのことでいっぱいだった。
まだ戦っているだろう者達の心配はしているがロイズとリンシャンなら問題ない。グレーゾーンとは戦い慣れているし、リンシャンは怪我の治療も迅速に行える。余程のミスを積み重ねなければ死者は出ない。こんなことを思えるのは彼女達を信頼している証拠だ。それでも加勢が早い方がいいのは分かっているので走り出す。
研究所の地下へ戻って来た時、エビルは遠くから銃声が聞こえた気がした。
気にかけていた方角から死の風が吹くのを感じて心が重くなる。荒野で起きただろう事態を考えないようにして走り続けて、ロイズ達の下へと向かう。
駆けつけてみればグレーゾーンの残りは数体。
全員が息を荒くして疲労を表に出しているが闘気は落ちていない。
状況を瞬時に把握したエビルは悲しみをぶつけるように、半ば八つ当たりのようにグレーゾーンを討伐した。
* * *
一軒の料理店の入り口に【暫く休業】という紙が貼られている。
入口の傍にあるホログラム、コック帽子を被った可愛らしいペンギンの手にも、同じ文章が書かれた紙が映されている。その休業中の店内ではエビル達とミトリアが席で向かい合っていた。
「すまないな三人共。本当なら私が案内してやりたかったんだが」
「仕方ないですよ。自分と他人の優先順位が同じとは限らないですから」
人類を守護する生体兵器を作り出す計画、ガーディアン計画。
それが原因で生まれた悲劇的な存在、レッドガーディアンを打倒したエビル達は次の目的地へ出発しようと考えている。
次の目的地となるのはミナライフ大陸にあるバトオナ族の集落。
ミトリアの故郷でもあるその場所へは、彼女の案内で向かうはずだったのだが少々予定が狂ってしまった。彼女は昨日の一件からガーディアン計画の中止を考えており、そちらを優先させたいという強い気持ちをエビル達は受け入れた。
当然、彼女一人ではテミス帝国の皇帝が発案した計画を中止になど出来ない。たかだかギルドの一員が動いたところでどうにもならないので、ギルドマスターのミヤマへと助けを求めるらしい。これから慌ただしくなると考えた彼女は店を休業させている。
「一応、ミナライフ大陸の地図を書いておいたから渡しておく。目的地、バトオナ族の集落がある場所には赤いバツ印を付けておいた。細かいところはさすがに覚えていないが役立つはずさ」
ミトリアが手作りの地図を渡してきたのでエビルが受け取る。
素人なうえ個人が作ったものなので凝ってはいない。大雑把に森や川、道が書かれただけだが要所は押さえているのでとても見やすい。人によっては雑とも分かりやすいとも言うだろう。
「ありがとうございます。この地図分かりやすいですね」
「個人でこれだけ書けるのは素晴らしいことだ。私はあまり絵が得意ではないから羨ましいよ、こういう特技。私が出来ることといえば槍技や踊りくらいだからな」
「バトオナ族の集落ですかー。その、ミトリア様もバトオナ族なんですよね? 部族の勉強はしてこなかったものですから知らないのですが、いったいどういった部族なのですか?」
リンシャンの問いにミトリアは「そうだな……」と説明を始める。
バトオナ族は男性よりも女性の立場が強い部族であるが、何よりも重要視されるのは戦闘力。昔から女性の方が強いせいで男性の立場は奴隷に近い。
強いこと以外に特徴はいくつかある。バトオナ族は銀髪、褐色の肌であり、生まれた時に白い刺青を体のどこかに入れている。白い刺青は魔除けの効果がある神聖なものと認識されているという。ミトリアの刺青は目元にあるので、彼女は話す時に自身の刺青を指しながら話していた。
「二つ、重要な点がある。お前達自身の危険にも繋がるから厳守しろ」
目を鋭くした彼女の声にエビル達は息を呑む。
「一つ。これはエビルとリンシャン、お前達二人に対しての忠告だが、秘術の紋章は絶対に見せるな。以前も言ったが山の秘術使いは悪魔憑きと罵倒されて蔑まれている。二人の紋章を見られたら厄介なことになりかねん」
ミトリアのもっともな忠告を受けてエビルは相槌を打つ。
秘術の噂すらなく気味悪がって蔑むような部族、当然紋章を隠す必要が出てくる。余計なトラブル防止のためにもエビルは隠さなければならない。リンシャンの方は額にあるので緑の髪で隠れている。
「二つ。これはエビル、男のお前に対しての忠告だ。絶対にバトオナ族の前で強さを見せつけるな。もしミナライフ大陸の生物と戦闘になり、近くに一族の者がいたならロイズとリンシャンの援護に回れ」
「えっと、どうしてですか?」
「あの集落では強さこそ全て。一族の女は自分より強い男を好み、決闘で強さを確かめる傾向にある。一族には掟があってな。一族の女は男と決闘して敗北した場合、その男の番いとならなければならない。男が敗北した場合は女のどんな命令でも従わなければならない。もしエビルの強さに興味を持ち、決闘を仕掛けてこられたら厄介極まりない」
決闘の勝者が敗者を従わせる。まさに強さを重視する部族だ。
番い、つまり結婚相手すら戦いで決まる事実にエビル達は驚きを隠せない。
「だが、仮に決闘することになった場合は絶対に勝て」
「ど、どうしてですか。勝ったら知らない人と結婚しなきゃいけないんですよね?」
エビルはいざ決闘を挑まれたら負ければいいと考えていた。
仮に決闘で勝ったら、レミに告白の返事をする前に既婚者となってしまう。散々返事を待たせた挙げ句、再会した時に既婚者となっている男など最低だ。彼女に合わせる顔がなくなる。それならいっそわざと負けて何か命令された方が楽だと思っている。引き分けがあるなら引き分けが一番良い結果なのだが。
「決闘に男が敗北した場合命令に従わなければならないと言ったが、実際のところ命令はほとんど決められている。敗者の男には集落のために人生を捧げるよう命令するのが一般的だ。言いづらいが……彼らの扱いは性奴隷と同じさ。死ぬまで一族の繁栄のための道具とされてしまう。お前もそれは嫌だろう」
あまりに酷い事実にしばらくエビル達は絶句してしまう。
これまで旅をしてきて奴隷を見かけたことはほとんどない。ましてや性奴隷など見かけたことすらない。奴隷制度を採用している国は現在少なく、他国からよく思われないためさらに減少傾向にある。
先程は決闘に負ければいいと考えたエビルの思考が百八十度変わった。
告白の返事を散々待たせた挙げ句、再会前に性奴隷になったら本当に合わせる顔がない。そもそも繁栄のための性奴隷となってしまったら集落を出られないかもしれない。勝っても負けても嫌な結果になってしまう。
「こればかりは仕方ないなエビル。諦めろ。諦めて嫁にしろ」
肩に手を置いて笑みを浮かべるロイズの言葉にエビルは「そんなあ……」と呟く。
他人事だと思っているのが丸分かりの顔だ。彼女もバトオナ族の決闘がどれだけ酷いか理解はしているはずなのに、自分には関係ないからと呑気なものである。
「あ、安心してくださいエビル様! わ、私の夫ということにしておけば、既に妻がいるんですから決闘を挑んでこないと思います!」
「いや、それはリンシャンに迷惑がかかるし。嘘でも奥さん役なんて嫌でしょ」
「そんなことないです! わ、私、エビル様となら嫌じゃありません……!」
リンシャンから強い羞恥と好意がエビルに伝わる。
彼女も勇気を持って提案してくれたし、それで決闘を回避出来るならありがたい。既婚者のフリをするのは恥ずかしいが背に腹はかえられない。まだ会えていないレミには申し訳ないが決意を固めた。
「無駄だぞ。バトオナ族が文献に何と書かれていたか教えてやろう。旦那奪いの一族、不倫一族、不名誉な呼び名だがまだまだあるぞ。あの集落の女達ならたとえ妻がいても決闘を挑み、奪う」
「ひ、酷すぎる……。リンシャン、そういうわけだから奥さんのフリはいいよ。嫌じゃないって言ってくれたことは嬉しかったけどさ」
「……はい」
決意を固めた矢先に必要なくなった。
既婚者のフリをしなくていいことを残念に思う気持ちや、どこかでホッと安心したような気持ちがある。どうしてそんな感情を抱くのかエビル自身にも分からない。
「まあエビル、お前なら油断しなければ勝てるはずだ」
「勝つ負けるの前に決闘を挑まれないようにします」
強い男性に決闘を挑むのだから、わざと弱い男を演じるとか色々やりようはある。魔物との戦闘にしたって今のエビルなら風の秘術で多彩な援護が可能。戦闘においては剣を振るわなくても十分に活躍出来るはずだ。強さの片鱗すら見せなければ決闘は挑まれないはずである。
「忠告は以上。……ああそうだ、族長への手紙を書いておいたんだ」
「手紙ですか」
ミトリアが白い封筒を手渡してきたのでエビルが受け取る。
「集落に着いたら門番に手紙を見せろ。私の名前にいい顔はしないだろうが、もしかしたら決闘を挑まれなくなるかもしれない。悪いようにはならないはずだ。……さあ、お前達ものんびりしていられないんだろう? 行動を起こすなら早い方がいいぞ」
彼女の言う通りエビル達はゆっくり過ごせる時間がない。
情報収集の段階ならともかく、目的地がはっきりとした今は迅速に動くべきだ。店から出るためにエビル達は立ち上がった。
「ミトリア様、本当に色々とありがとうございました」
「山の秘術使いの情報、助かった。礼を言う」
「いつかまたテミス帝国に来た時、お店に寄りますね」
「その時は一番高値の料理でも振る舞おう。当然代金は頂くがな」
笑みを浮かべたミトリアに背を向けてロイズとリンシャンは先に出て行く。続いてエビルが出ようとした時、ミトリアに「待て」と呼び止められたので彼女の方を向く。
「お前なら分かっていると思うがバトオナ族を敵に回すなよ。どんなに酷いと思っても、一族にとってはやって当然の行為かもしれない。善と悪を見誤るな。私からの最後の助言だ」
「……はい。バトオナ族の事情をちゃんと考慮して判断します」
人には人の事情や、行動の理由がある。
良いことをしたら良い人。悪いことをしたら悪い人。そんな考えは単調だ。
イストが兄を救うために悪事を働いたように、完全な悪ではない人間が罪を犯すなどよくある話。そこで重要なのは法律を破ったかどうかだ。国によって法律が違い、犯罪だと思ったことが許されているかもしれない。
誰かを助ける勇者としてエビルに求められるのは審判の能力。
罪か、罪ではないのか、しっかりしつつ柔軟な思考で導く必要がある。
エビルはそのことを胸に刻み、ミトリアに礼を言ってから店を出た。
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