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PROLOGUE
はじまりの刻-04
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「ファハン…?」
俺はアルクさんに聞き返した。
「ああ。今でこそ変化を遂げているが、特徴から言うと間違いなくベースは帝国軍のドラグナー”ファハン”だろう」
アルクさんは帝国の兵装を書き溜めたノートをめくりながら、続けて言った。
「ドラグナーはね、時として使い手の力によって大きく姿形を変化させる時がある。おそらくだが、ライヴ君自身の力を吸収して今の姿になったんじゃないかな? それは魂の形を反映すると言われている。話には聞いていたが、こういう事だったとはね…」
「その”ファハン”は、かなり強力なドラグナーなんですか?」
「ドラグナーの力はね、ライヴ君。その乗り手の力に比例するんだよ。それが姿を変えたとなれば相当なものだ。期待していいと思うよ。だがね、過信は禁物だ。これは何事にも言えることではあるのだが、どんなに協力な兵器でも必ず弱点はあるし、隙を作れば一気に畳み込まれる。だからね、私はこう思うんだ。君のドラグナーに新たな名前を付けようかとね」
「名前… ですか?」
「そう。もし私が名付けるとしたならば、初心を忘れることがないような名前をつける」
「例えば?」
「そうだな… 新兵の・ファハンとね」
「レクルート・ファハン…」
アルクさんはゆっくりと煙草をふかしながら、言葉を付け加えた。
「これから君はどんどん強くなるかもしれない。それに従って名前を付け替えるといい。だが決して忘れるな、一瞬の驕りが君の命を脅かすということを」
「…いい名前ですね。”初心忘るるべからず”、か。その言葉、しかと胸に刻みました」
「ハハハ…。君は実に気持ちのいい少年だ。そういうところは本来のライヴ君とはやはり、違うのだろうな」
「そう… なんですか?」
「ああ、残念だがね。彼は君ほどの許容力に欠けている。年齢相応の、ただの少年にすぎない」
「リーヴァ… 大丈夫でしょうか?」
「アレは大丈夫だよ。リーヴァは柔軟性にかけては抜群だ。すぐに違和感にも慣れるさ」
「あの式典用のようなデザインになったことについては?」
「それだけ君の精神が規範的で、曇りのない魂の持ち主だということさ…」
◇ ◇ ◇ ◇
「皆さん、ようこそ。この未知なる神話の世界へ。壮大なるクーリッヒ=ウー=ヴァンの世界へ。ブレンドフィア=メンションです。ご機嫌はいかがですか?
さて、本日も英雄:ライヴ=オフウェイについて語るわけですが、彼の駆るドラグナーについて、です。20年ほど前に発掘されたオベリスクにはこうあります。
『一度動けば一騎当千。下士官兵の駆るドラグナーにもかかわらず、次々と武勲を重ねていった』
それほど強かったわけです。その根拠のひとつが前回に触れた剣術”イアイ”にあるのかもしれません。ですが、果たして齢16の少年にそのようなことができたのでしょうか? かく言う私もイアイを嗜んでおりますがなかなか難しく、ハイスクール時代に段位を取って県大会で5位に入賞するのがやっとでした。それほどまでに剣術とは、イアイとは難しいものなのです…」
「彼… ライヴ=オフウェイが駆ったレクルート・ファハンはある意味スペシャル騎でした。そのベースとなったファハンとはフォルムも大きく異なり、スマートで機動性に富む機体だったと描かれています」
超古代考古学者のアンスタフト=ヒストリカ教授は、そう語る。
「神話における神鋼機兵は、非常に柔軟な搭乗型のロボットです。出土した文献や資料などを見ても、操縦については全く解読不能です。ただ分かっているのは、搭乗者のイメージする通りにドラグナーは応えてみせた、ということだけ。もっとも、あれだけ大昔に今を超えるようなテクノロジーがある事自体が眉唾ものではあるのですが、ちゃんと歴史に刻み込まれている。これは公然の事実です。ならば、それが”あるもの”と認識したほうが自然なのですよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「今夜はえらく荒れた天気だね…」
リーヴァがポツリと呟く。
俺達がドラグナーを鹵獲した日から既に3日が過ぎた。その間、俺は時間を見つけてはドラグナーに乗る練習をするという日課ができていた。そのドラグナー… 下士官用の汎用陸上型・ドラグナー:ファハンをベースに進化した新たなドラグナーに、俺達はレクルート・ファハンと名付けた。進化前には小さな触覚のようだったアンテナらしきものは二本の大きな角状になり、ずんぐりむっくりとしたフォルムもスマートな人型へと変化した。何よりも大きく変わったのは、背中のブースターの形状で、一枚の甲殻生物の羽根を思わせる形状だったものが、二枚の羽根を思わせる形状になったことだった。
そう、ベースとなったファハンの面影をやや残しつつも、新たなドラグナーとして進化を遂げたのである。
このような変化を起こすというのは文献などに残されるだけで、実際にそのようになったのは珍しいケースのようだった。俺の一日のスケジュールには朝のストレッチ・居合と殺陣の稽古に加えて、このレクルート・ファハンの操縦が加わったのだった。
「ああ、本当に荒れた天気だね」
リーヴァの言葉を受けて、俺もポツリと呟く。それまでの好天気だった3日間とはうって変わって、バケツを引っくり返したような酷い雨だった。時折稲光が俺達を照らし、曇天の空が唸りを上げる。そして雷が近くに落ちると、その度に小さな悲鳴を上げるリーヴァがいた。
「あは… 大丈夫、大丈夫なんだから」
「強がっていても、やっぱり女の子なんだな。そんなに腕を強く握ったら痛いよ」
「それ位我慢なさい! 男なんでしょ? …きゃ…!?」
ドド… ン! 地面が揺さぶられる。これは本当に近くに落ちたのかもしれない。さすがの俺も、一瞬ビビってしまった。
「…な、情けないわね。そんなにビックリしちゃって…」
「音と振動にびっくりしただけだよ。リーヴァほどじゃない」
「強がりを言ってるのはライヴもじゃない。あたし、わかってるんだから… きゃッ!?」
「ハハハ、本当に怖がりだな… おっとッ!」
俺達がそのように時間を過ごしていると、部屋の戸をノックする音が聞こえた。バージルおばさんだった。
「仲がいいわね、本当に妬けちゃうわ。ところで、ふたりとも。身支度を急ぎなさい」
意外だった。外はこんなに荒天なのに、身支度とは。一体何があった?
「帝国軍がこの隠れ家を見つけたらしいの。あと数十分もしない内に奴らがやって来るって。だからすぐに準備をして。ここから逃げるわよ」
「一体どうして帝国軍が…」
「わからない。でも、おそらくだけど… 先日あなた達がドラグナーを見つけた周辺に帝国兵の姿を見たって人がいたの。多分、そこから足がついたんじゃないかしら」
俺はハッとした。そう言えば、レクルート・ファハンを乗りこなす練習をするのに、全くと言ってもいいほど警戒をしていなかった。もしかしたら、それでこの場所がバレたのかもしれない…。そうだった。大事なことを忘れてしまっていた。俺達は隠れ潜んでいなければならなかったのだ。
「バージルさん、まさか、俺…」
「起きてしまったことは仕方ないわ。とにかく無事に逃げ延びることよ」
「…お母さん…」
「いい、リーヴァ。あなたはライヴくんと一緒に例の洞窟へ逃げなさい。そこに子供たちが集まることになっているわ。それからライヴくん。あなたもどうか、この娘を守ってあげてね」
「ち、ちょっと待って下さい。洞窟に集まるのは子供たちだけって、まさか…」
「…勘がいいのね。そう、私たちは別の方向に逃げるの。あなた達が逃げる時間を稼がないといけないから。多分、これが最後になるかもしれないわ。だから、約束。どうかこの娘を守ってあげてね」
バージルさんはリーヴァと俺にキスをすると、手短に声をかけた。
「いい? 振り返っちゃ駄目よ。あなた達だけは絶対に生き残るの。そして他所の土地へ移りなさい。このダーフ村は今日が最後…。残念だけど、これも運命よ。さぁ、いきなさい!」
真っ暗な土砂降りの雨の中、俺達は走った。森の中を走り抜けた。ふと後ろを振り返る。…火の手が上がっていた…。
「くそッ!」
俺はリーヴァの手を引きながら、足を早めた。今回のことは俺の責任が大きいかもしれない。もしあの時にドラグナーを拾わなければ、関わっていなければ今のような状況には至らなかったかもしれない。でも…。
「リーヴァ、急ぐぞ。俺はあの人達を守らなきゃならない!」
「ライヴ、あなた、まさか…!?」
「ああ、今回の責任は取らなきゃならない。できるだけ早くドラグナーに乗って、みんなのところへ戻らないと…」
「勝てると思ってるの? まだ練習を初めて3日よ? それに実戦経験だって…」
「……」
俺は敢えてリーヴァの言葉を無視した。そして洞窟の前までたどり着くと、既に生き残った子供たちが集まっていた。皆不安そうだった。泣いている子もいた。隠れ家の方に目をやると、濛々と煙が立ち上っていた。俺には急がなくてはいけない理由があった。
「…みんな、本当にすまない。今回のことはすべて俺の責任だ。そのツケは必ず返してみせる」
そう言うと、俺は洞窟の奥に隠してあるレクルート・ファハンの元へと急いだ。本体を覆い隠してある大きな布を開き、コクピットによじ登る。キャノピーを開き、自分の身体をその中へと滑り込ませた。各センサーを体中に取り付けると、俺は静かに深呼吸をする。
「応えてくれ、レクルート。俺はどうしてもあの善良な人々を助けなきゃならない。頼むから応えてくれ。…レクルート・ファハン、起動!」
『我、起動せり。主が意思のままに…!』
俺が洞窟の外にまで出てくると、子供たちの視線が一斉に集まった。
「大丈夫だ。俺が助けてみせる」
それだけ言うと、前傾姿勢を取り足元のダッシュローラーをMAXで回転させた。
「行くぜ、相棒!」
『御意!』
キュイ… ン
ダッシュローラーのモーターが回転する音が軽やかに聞こえてくる。でも、まだだ。まだ遅い。俺は背中のブースターも開放させて、更にスピードを上げた。雨粒が視界を遮る。だがそんなことを言ってる場合ではない。俺自信の目玉に雨粒が当たっている訳じゃない。ほんのちょっと、前が見づらいだけだ。
後5分… 後3分… あと少し… 現場はだんだんと近付いてくる。近付くに従って、現場の凄惨さが見えてきた。
そこは、火の海だった。倒れている人々は鮮血を垂れ流し、焼かれた遺体は炭化して”人”であった面影を残している。そして何よりも我が目を疑ったのが、ドラグナーが人を嬲るように殺していくさまだった…。
「ど畜生めらがァァァッ!」
俺は大剣を振り上げると、火炎放射で火を振りまいているドラグナーの目前に立ちふさがった。
『-なんだ、このドラグナーは?-』
『-見たことがない機体だな-』
『-どうだっていい。敵ならば倒すまでだ!-』
聞こえてきた。敵ドラグナー同士の通信が、まるで頭の中を駆け巡るように聞こえてきたのだ。
敵ドラグナーはどうやら3騎。後は一般兵士のようだった。追記しておくと、敵のドラグナーはレクルートが変化する前の、まさにそれであった。このことは、ひとつの仮説が成立する。俺が乗っているファハンを手がかりに、こいつらはこの場所を特定したということだ。この事は同時に、責任はこの俺にある事を示していた。
雨の中、炎は消えることもなく轟々と燃え盛っている。おそらく俺の世界の焼夷弾と同じで、特殊な油を用いているのだろう。その炎の明かりを頼りに、各機体に割り振られた機体番号を読み取っていく。
001・002・003の3騎。うち、火炎放射を行っているのが002、他は剣を装備している。
俺は手近にいた002を指向し、一気に間合いを詰めた。そして大きく剣を振りかぶると、そのまま剣を振り下ろした。
『-馬鹿め、動きが大きすぎるんだよ!-』
「…馬鹿はソッチだ…」
俺は大剣を振り抜かず、腰溜めに構えそのままコクピットを貫いた。
『-マシュー!?-』
『-この野郎…!-』
残っているのは001と003。内、近いのは001の方。俺は突き刺した大剣をぐるりとねじり、横に薙ぎ払った。哀れ002は剣の勢いに負けて吹き飛ばされる。俺は姿勢を低くしたままで、001に正面から突っ込んだ。
『-甘ぇんだよッ!-』
001は冗談からの一撃を食らわそうと振りかぶり、振り下ろした。俺は真っ向からその剣を下から右へと弾き、その勢いを活かしたまま袈裟懸けに切り伏せる。001は左腕ごとキャノピーが破壊され、血まみれの搭乗員が露出した。俺は返す刀で横に薙ぎ、001はそのまま沈黙する。そして、レクルートの瞳が残る003を指向する…!
『-ヒ…ッ!?-』
003は少しは物を考える頭があったようだ。瞬時に間合いを取り、その剣を正眼に構え直す。俺もまた、体験を下段に構えた。そして両手から右手に剣を持ち替え、その腕を広げてみせる。
地上で俺達を見つめる兵士たちは戸惑っていた。突然現れた白く輝くドラグナーが、次々と味方のファハンを倒していくのだから。そうやって見ると、アルクさんの言うとおりこのファハンは下士官兵用の機体のようだ。でも、そんなことはどうだっていい。今は目の前の敵を切り伏せることが第一の目的なのだ。
俺は両腕を開いたまま、ジリジリと間合いを詰める。
『-うがぁぁぁあぁあッ!-』
003が剣を中段に構えて突っ込んできた。俺は右足を軸に超信地旋回を仕掛けながら、003の剣を弾く。その勢いを活かしたまま背中から袈裟懸けに切りつけた。これでファハン特有の背面ブースターとともに本体まで届く深いダメージを与えたことになる。そして再び構え直すと、中段背後からコクピットを貫き通した!
「撤退ー! 総員撤退ー!」
兵士たちから声が上がる。俺は肩で息をしながら、薄れ行く意識と戦っていた。あれだけ激しく振っていた雨も、既にやんでしまっている。かろうじて生き残っていた村人たちも、おそるおそるレクルート・ファハンに近付いてきた。俺はキャノピーを開くと、コクピットから颯爽と飛び降りようと試みた、が。
…俺の意識は完全に途切れ、そのまま深い眠りについてしまった。
俺が意識を失ってからどれほどの時間が経ったのだろう。ふと、目をさますと、見知らぬ部屋の中で、俺はベッドに横たわっていることに気がついた。その傍らにはリーヴァが眠りについている。俺はてっきり、重苦しい空気の中で目をさますことになると思っていた。その意に反してとても静かな、そんな目覚めだった。
「リーヴァ…」
俺はそっと声をかけてみる。
「…目を覚ましたのね、随分と遅いじゃない…」
…リーヴァの様子が少し、おかしい。その眼は泣きはらして、赤くなっていた。
「…何があった? 俺が眠っている間に、何があった?」
「眠っている間じゃないわ。村が襲われた時に、…そう、襲われた時に、お母さんが…」
「バージルさんがどうした?」
「…死んだわ」
俺の背中に衝撃が走った。あの優しかった女性が、バージルおばさんが犠牲になっていただなんて、俺は思いもよらなかった。
「…仕方がなかったのよ、そういう運命だったんですもの。でもね、でも…」
リーヴァの瞳から大粒の涙が溢れてきた。
「どうしてお母さんだったの? あんなに優しかったお母さんが、どうしてあんなにむごたらしい殺され方をしなければならなかったの! …ねぇ、教えて? 何故…」
「…リーヴァ…」
俺は言葉もなかった。俺の軽はずみな行動が今回の結果を産んだ事実。それがこのような形で現実になるとは思ってもみなかったのだ。
「…目を覚ましたようだね」
アルクさんが部屋に入ってきた。
「あれのことは残念だった。私も正直いって、本当に残念な結果となってしまったと思わざるを得ない」
「アルクさん…」
アルクさんもまた、焦燥しきっているのがわかった。そのような中で、可能な限り感情を押し殺しているの見て取れた。
「だがね、君はできることをやってのけた。君がいなければ、我々はおそらく誰ひとりとして生き延びることはできなかっただろう。確かに犠牲者も出た。だが、そのことよりも、数多くの生存者を救ったという事実の方を大切に、誇りに思ってほしい」
アルクさんはぎこちなく、それでもニッコリと笑ってみせた。この世界の人々は本当にどれほど虐げられてきたのだろう。こういう出来事が日常茶飯事だとでも言うのだろうか、その微笑みに、俺はどれだけ答えられたのだろう。
「…立てるかい? 今、君の回復を待っている人が大勢この部屋の外で待っている。君の元気な姿を見ようと集まっている」
「……」
「それだけの偉業を、君は成し遂げたのだ。もう一度言う。君は誇りに思っていい」
「…アルクさん…」
俺はベッドから降り、立ち上がった。そして促されるまま部屋の外へと足を運んだ。
ワッと人々がどよめいた。そしてあっという間に、俺は村の人々に取り囲まれた。
「ありがとう。君のおかげで、私の娘が無事でいられた。本当にありがとう!」
「ウチもだ。家内が怪我だけで済んだのも、君のおかげだ。もし君が間に合わなかったら、死んでいたはずだった!」
「俺もさ。片腕を失ってしまったが、生き延びることはできた。君の奮闘がなければ殺されていたところだ!」
村人は口々に感謝の言葉を俺に浴びせかけた。この時になって、初めて俺の目に熱いものが溢れてきた。
「…皆さん、すみません。俺が不甲斐ないばかりに…」
「何を言っている。自信を持て、少年。君がいなければ、ここにいる全員が無残に殺されてしまっていた。君が救ったのだ」
老人が俺の肩を叩きながら言った。
「きっかけはいくらでもあった。遅かれ早かれ、兵士たちは私達を見つけ出し襲っていただろう。それは過ぎ去った経緯にすぎない。それよりも君が救った命に自信を持ち給え。それが死んでいった者への礼儀だ」
「…はい、…本当に、すみません… …ありがとう… ございます…」
最後の方は言葉にもならなかった。
「なぁ、少年。大事なのはこれからだ。今につながる未来なのだ。君は、君が救ったこれらの人々に責任を持たねばならない。わかるね? これから君が成すべきことが…」
俺はもう過ちを犯したりはしない。帝国軍は以後、もっと激しく襲い掛かってくるだろう。ならば、今の俺にできることは…。
「…もうこれ以上の犠牲は出したくありません。俺は、俺はここにいる皆を守ってみせます。俺のすべてをかけて…!」
「よう言った、少年。我々もできる限りの協力を約束する。一緒に戦ってくれるな?」
「勿論です。今の俺に何ができるかはまだわかりません。ただ、今だけは… 俺のために犠牲になった人たちへ… 泣くことを許して下さい… その後はもう振り返りはしません。だから、どうか今だけは…」
こうして、このダーフの村は帝国に対し反旗を翻すこととなった。クーニフ歴36年13月、とても寒い日の出来事だった。
俺はアルクさんに聞き返した。
「ああ。今でこそ変化を遂げているが、特徴から言うと間違いなくベースは帝国軍のドラグナー”ファハン”だろう」
アルクさんは帝国の兵装を書き溜めたノートをめくりながら、続けて言った。
「ドラグナーはね、時として使い手の力によって大きく姿形を変化させる時がある。おそらくだが、ライヴ君自身の力を吸収して今の姿になったんじゃないかな? それは魂の形を反映すると言われている。話には聞いていたが、こういう事だったとはね…」
「その”ファハン”は、かなり強力なドラグナーなんですか?」
「ドラグナーの力はね、ライヴ君。その乗り手の力に比例するんだよ。それが姿を変えたとなれば相当なものだ。期待していいと思うよ。だがね、過信は禁物だ。これは何事にも言えることではあるのだが、どんなに協力な兵器でも必ず弱点はあるし、隙を作れば一気に畳み込まれる。だからね、私はこう思うんだ。君のドラグナーに新たな名前を付けようかとね」
「名前… ですか?」
「そう。もし私が名付けるとしたならば、初心を忘れることがないような名前をつける」
「例えば?」
「そうだな… 新兵の・ファハンとね」
「レクルート・ファハン…」
アルクさんはゆっくりと煙草をふかしながら、言葉を付け加えた。
「これから君はどんどん強くなるかもしれない。それに従って名前を付け替えるといい。だが決して忘れるな、一瞬の驕りが君の命を脅かすということを」
「…いい名前ですね。”初心忘るるべからず”、か。その言葉、しかと胸に刻みました」
「ハハハ…。君は実に気持ちのいい少年だ。そういうところは本来のライヴ君とはやはり、違うのだろうな」
「そう… なんですか?」
「ああ、残念だがね。彼は君ほどの許容力に欠けている。年齢相応の、ただの少年にすぎない」
「リーヴァ… 大丈夫でしょうか?」
「アレは大丈夫だよ。リーヴァは柔軟性にかけては抜群だ。すぐに違和感にも慣れるさ」
「あの式典用のようなデザインになったことについては?」
「それだけ君の精神が規範的で、曇りのない魂の持ち主だということさ…」
◇ ◇ ◇ ◇
「皆さん、ようこそ。この未知なる神話の世界へ。壮大なるクーリッヒ=ウー=ヴァンの世界へ。ブレンドフィア=メンションです。ご機嫌はいかがですか?
さて、本日も英雄:ライヴ=オフウェイについて語るわけですが、彼の駆るドラグナーについて、です。20年ほど前に発掘されたオベリスクにはこうあります。
『一度動けば一騎当千。下士官兵の駆るドラグナーにもかかわらず、次々と武勲を重ねていった』
それほど強かったわけです。その根拠のひとつが前回に触れた剣術”イアイ”にあるのかもしれません。ですが、果たして齢16の少年にそのようなことができたのでしょうか? かく言う私もイアイを嗜んでおりますがなかなか難しく、ハイスクール時代に段位を取って県大会で5位に入賞するのがやっとでした。それほどまでに剣術とは、イアイとは難しいものなのです…」
「彼… ライヴ=オフウェイが駆ったレクルート・ファハンはある意味スペシャル騎でした。そのベースとなったファハンとはフォルムも大きく異なり、スマートで機動性に富む機体だったと描かれています」
超古代考古学者のアンスタフト=ヒストリカ教授は、そう語る。
「神話における神鋼機兵は、非常に柔軟な搭乗型のロボットです。出土した文献や資料などを見ても、操縦については全く解読不能です。ただ分かっているのは、搭乗者のイメージする通りにドラグナーは応えてみせた、ということだけ。もっとも、あれだけ大昔に今を超えるようなテクノロジーがある事自体が眉唾ものではあるのですが、ちゃんと歴史に刻み込まれている。これは公然の事実です。ならば、それが”あるもの”と認識したほうが自然なのですよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「今夜はえらく荒れた天気だね…」
リーヴァがポツリと呟く。
俺達がドラグナーを鹵獲した日から既に3日が過ぎた。その間、俺は時間を見つけてはドラグナーに乗る練習をするという日課ができていた。そのドラグナー… 下士官用の汎用陸上型・ドラグナー:ファハンをベースに進化した新たなドラグナーに、俺達はレクルート・ファハンと名付けた。進化前には小さな触覚のようだったアンテナらしきものは二本の大きな角状になり、ずんぐりむっくりとしたフォルムもスマートな人型へと変化した。何よりも大きく変わったのは、背中のブースターの形状で、一枚の甲殻生物の羽根を思わせる形状だったものが、二枚の羽根を思わせる形状になったことだった。
そう、ベースとなったファハンの面影をやや残しつつも、新たなドラグナーとして進化を遂げたのである。
このような変化を起こすというのは文献などに残されるだけで、実際にそのようになったのは珍しいケースのようだった。俺の一日のスケジュールには朝のストレッチ・居合と殺陣の稽古に加えて、このレクルート・ファハンの操縦が加わったのだった。
「ああ、本当に荒れた天気だね」
リーヴァの言葉を受けて、俺もポツリと呟く。それまでの好天気だった3日間とはうって変わって、バケツを引っくり返したような酷い雨だった。時折稲光が俺達を照らし、曇天の空が唸りを上げる。そして雷が近くに落ちると、その度に小さな悲鳴を上げるリーヴァがいた。
「あは… 大丈夫、大丈夫なんだから」
「強がっていても、やっぱり女の子なんだな。そんなに腕を強く握ったら痛いよ」
「それ位我慢なさい! 男なんでしょ? …きゃ…!?」
ドド… ン! 地面が揺さぶられる。これは本当に近くに落ちたのかもしれない。さすがの俺も、一瞬ビビってしまった。
「…な、情けないわね。そんなにビックリしちゃって…」
「音と振動にびっくりしただけだよ。リーヴァほどじゃない」
「強がりを言ってるのはライヴもじゃない。あたし、わかってるんだから… きゃッ!?」
「ハハハ、本当に怖がりだな… おっとッ!」
俺達がそのように時間を過ごしていると、部屋の戸をノックする音が聞こえた。バージルおばさんだった。
「仲がいいわね、本当に妬けちゃうわ。ところで、ふたりとも。身支度を急ぎなさい」
意外だった。外はこんなに荒天なのに、身支度とは。一体何があった?
「帝国軍がこの隠れ家を見つけたらしいの。あと数十分もしない内に奴らがやって来るって。だからすぐに準備をして。ここから逃げるわよ」
「一体どうして帝国軍が…」
「わからない。でも、おそらくだけど… 先日あなた達がドラグナーを見つけた周辺に帝国兵の姿を見たって人がいたの。多分、そこから足がついたんじゃないかしら」
俺はハッとした。そう言えば、レクルート・ファハンを乗りこなす練習をするのに、全くと言ってもいいほど警戒をしていなかった。もしかしたら、それでこの場所がバレたのかもしれない…。そうだった。大事なことを忘れてしまっていた。俺達は隠れ潜んでいなければならなかったのだ。
「バージルさん、まさか、俺…」
「起きてしまったことは仕方ないわ。とにかく無事に逃げ延びることよ」
「…お母さん…」
「いい、リーヴァ。あなたはライヴくんと一緒に例の洞窟へ逃げなさい。そこに子供たちが集まることになっているわ。それからライヴくん。あなたもどうか、この娘を守ってあげてね」
「ち、ちょっと待って下さい。洞窟に集まるのは子供たちだけって、まさか…」
「…勘がいいのね。そう、私たちは別の方向に逃げるの。あなた達が逃げる時間を稼がないといけないから。多分、これが最後になるかもしれないわ。だから、約束。どうかこの娘を守ってあげてね」
バージルさんはリーヴァと俺にキスをすると、手短に声をかけた。
「いい? 振り返っちゃ駄目よ。あなた達だけは絶対に生き残るの。そして他所の土地へ移りなさい。このダーフ村は今日が最後…。残念だけど、これも運命よ。さぁ、いきなさい!」
真っ暗な土砂降りの雨の中、俺達は走った。森の中を走り抜けた。ふと後ろを振り返る。…火の手が上がっていた…。
「くそッ!」
俺はリーヴァの手を引きながら、足を早めた。今回のことは俺の責任が大きいかもしれない。もしあの時にドラグナーを拾わなければ、関わっていなければ今のような状況には至らなかったかもしれない。でも…。
「リーヴァ、急ぐぞ。俺はあの人達を守らなきゃならない!」
「ライヴ、あなた、まさか…!?」
「ああ、今回の責任は取らなきゃならない。できるだけ早くドラグナーに乗って、みんなのところへ戻らないと…」
「勝てると思ってるの? まだ練習を初めて3日よ? それに実戦経験だって…」
「……」
俺は敢えてリーヴァの言葉を無視した。そして洞窟の前までたどり着くと、既に生き残った子供たちが集まっていた。皆不安そうだった。泣いている子もいた。隠れ家の方に目をやると、濛々と煙が立ち上っていた。俺には急がなくてはいけない理由があった。
「…みんな、本当にすまない。今回のことはすべて俺の責任だ。そのツケは必ず返してみせる」
そう言うと、俺は洞窟の奥に隠してあるレクルート・ファハンの元へと急いだ。本体を覆い隠してある大きな布を開き、コクピットによじ登る。キャノピーを開き、自分の身体をその中へと滑り込ませた。各センサーを体中に取り付けると、俺は静かに深呼吸をする。
「応えてくれ、レクルート。俺はどうしてもあの善良な人々を助けなきゃならない。頼むから応えてくれ。…レクルート・ファハン、起動!」
『我、起動せり。主が意思のままに…!』
俺が洞窟の外にまで出てくると、子供たちの視線が一斉に集まった。
「大丈夫だ。俺が助けてみせる」
それだけ言うと、前傾姿勢を取り足元のダッシュローラーをMAXで回転させた。
「行くぜ、相棒!」
『御意!』
キュイ… ン
ダッシュローラーのモーターが回転する音が軽やかに聞こえてくる。でも、まだだ。まだ遅い。俺は背中のブースターも開放させて、更にスピードを上げた。雨粒が視界を遮る。だがそんなことを言ってる場合ではない。俺自信の目玉に雨粒が当たっている訳じゃない。ほんのちょっと、前が見づらいだけだ。
後5分… 後3分… あと少し… 現場はだんだんと近付いてくる。近付くに従って、現場の凄惨さが見えてきた。
そこは、火の海だった。倒れている人々は鮮血を垂れ流し、焼かれた遺体は炭化して”人”であった面影を残している。そして何よりも我が目を疑ったのが、ドラグナーが人を嬲るように殺していくさまだった…。
「ど畜生めらがァァァッ!」
俺は大剣を振り上げると、火炎放射で火を振りまいているドラグナーの目前に立ちふさがった。
『-なんだ、このドラグナーは?-』
『-見たことがない機体だな-』
『-どうだっていい。敵ならば倒すまでだ!-』
聞こえてきた。敵ドラグナー同士の通信が、まるで頭の中を駆け巡るように聞こえてきたのだ。
敵ドラグナーはどうやら3騎。後は一般兵士のようだった。追記しておくと、敵のドラグナーはレクルートが変化する前の、まさにそれであった。このことは、ひとつの仮説が成立する。俺が乗っているファハンを手がかりに、こいつらはこの場所を特定したということだ。この事は同時に、責任はこの俺にある事を示していた。
雨の中、炎は消えることもなく轟々と燃え盛っている。おそらく俺の世界の焼夷弾と同じで、特殊な油を用いているのだろう。その炎の明かりを頼りに、各機体に割り振られた機体番号を読み取っていく。
001・002・003の3騎。うち、火炎放射を行っているのが002、他は剣を装備している。
俺は手近にいた002を指向し、一気に間合いを詰めた。そして大きく剣を振りかぶると、そのまま剣を振り下ろした。
『-馬鹿め、動きが大きすぎるんだよ!-』
「…馬鹿はソッチだ…」
俺は大剣を振り抜かず、腰溜めに構えそのままコクピットを貫いた。
『-マシュー!?-』
『-この野郎…!-』
残っているのは001と003。内、近いのは001の方。俺は突き刺した大剣をぐるりとねじり、横に薙ぎ払った。哀れ002は剣の勢いに負けて吹き飛ばされる。俺は姿勢を低くしたままで、001に正面から突っ込んだ。
『-甘ぇんだよッ!-』
001は冗談からの一撃を食らわそうと振りかぶり、振り下ろした。俺は真っ向からその剣を下から右へと弾き、その勢いを活かしたまま袈裟懸けに切り伏せる。001は左腕ごとキャノピーが破壊され、血まみれの搭乗員が露出した。俺は返す刀で横に薙ぎ、001はそのまま沈黙する。そして、レクルートの瞳が残る003を指向する…!
『-ヒ…ッ!?-』
003は少しは物を考える頭があったようだ。瞬時に間合いを取り、その剣を正眼に構え直す。俺もまた、体験を下段に構えた。そして両手から右手に剣を持ち替え、その腕を広げてみせる。
地上で俺達を見つめる兵士たちは戸惑っていた。突然現れた白く輝くドラグナーが、次々と味方のファハンを倒していくのだから。そうやって見ると、アルクさんの言うとおりこのファハンは下士官兵用の機体のようだ。でも、そんなことはどうだっていい。今は目の前の敵を切り伏せることが第一の目的なのだ。
俺は両腕を開いたまま、ジリジリと間合いを詰める。
『-うがぁぁぁあぁあッ!-』
003が剣を中段に構えて突っ込んできた。俺は右足を軸に超信地旋回を仕掛けながら、003の剣を弾く。その勢いを活かしたまま背中から袈裟懸けに切りつけた。これでファハン特有の背面ブースターとともに本体まで届く深いダメージを与えたことになる。そして再び構え直すと、中段背後からコクピットを貫き通した!
「撤退ー! 総員撤退ー!」
兵士たちから声が上がる。俺は肩で息をしながら、薄れ行く意識と戦っていた。あれだけ激しく振っていた雨も、既にやんでしまっている。かろうじて生き残っていた村人たちも、おそるおそるレクルート・ファハンに近付いてきた。俺はキャノピーを開くと、コクピットから颯爽と飛び降りようと試みた、が。
…俺の意識は完全に途切れ、そのまま深い眠りについてしまった。
俺が意識を失ってからどれほどの時間が経ったのだろう。ふと、目をさますと、見知らぬ部屋の中で、俺はベッドに横たわっていることに気がついた。その傍らにはリーヴァが眠りについている。俺はてっきり、重苦しい空気の中で目をさますことになると思っていた。その意に反してとても静かな、そんな目覚めだった。
「リーヴァ…」
俺はそっと声をかけてみる。
「…目を覚ましたのね、随分と遅いじゃない…」
…リーヴァの様子が少し、おかしい。その眼は泣きはらして、赤くなっていた。
「…何があった? 俺が眠っている間に、何があった?」
「眠っている間じゃないわ。村が襲われた時に、…そう、襲われた時に、お母さんが…」
「バージルさんがどうした?」
「…死んだわ」
俺の背中に衝撃が走った。あの優しかった女性が、バージルおばさんが犠牲になっていただなんて、俺は思いもよらなかった。
「…仕方がなかったのよ、そういう運命だったんですもの。でもね、でも…」
リーヴァの瞳から大粒の涙が溢れてきた。
「どうしてお母さんだったの? あんなに優しかったお母さんが、どうしてあんなにむごたらしい殺され方をしなければならなかったの! …ねぇ、教えて? 何故…」
「…リーヴァ…」
俺は言葉もなかった。俺の軽はずみな行動が今回の結果を産んだ事実。それがこのような形で現実になるとは思ってもみなかったのだ。
「…目を覚ましたようだね」
アルクさんが部屋に入ってきた。
「あれのことは残念だった。私も正直いって、本当に残念な結果となってしまったと思わざるを得ない」
「アルクさん…」
アルクさんもまた、焦燥しきっているのがわかった。そのような中で、可能な限り感情を押し殺しているの見て取れた。
「だがね、君はできることをやってのけた。君がいなければ、我々はおそらく誰ひとりとして生き延びることはできなかっただろう。確かに犠牲者も出た。だが、そのことよりも、数多くの生存者を救ったという事実の方を大切に、誇りに思ってほしい」
アルクさんはぎこちなく、それでもニッコリと笑ってみせた。この世界の人々は本当にどれほど虐げられてきたのだろう。こういう出来事が日常茶飯事だとでも言うのだろうか、その微笑みに、俺はどれだけ答えられたのだろう。
「…立てるかい? 今、君の回復を待っている人が大勢この部屋の外で待っている。君の元気な姿を見ようと集まっている」
「……」
「それだけの偉業を、君は成し遂げたのだ。もう一度言う。君は誇りに思っていい」
「…アルクさん…」
俺はベッドから降り、立ち上がった。そして促されるまま部屋の外へと足を運んだ。
ワッと人々がどよめいた。そしてあっという間に、俺は村の人々に取り囲まれた。
「ありがとう。君のおかげで、私の娘が無事でいられた。本当にありがとう!」
「ウチもだ。家内が怪我だけで済んだのも、君のおかげだ。もし君が間に合わなかったら、死んでいたはずだった!」
「俺もさ。片腕を失ってしまったが、生き延びることはできた。君の奮闘がなければ殺されていたところだ!」
村人は口々に感謝の言葉を俺に浴びせかけた。この時になって、初めて俺の目に熱いものが溢れてきた。
「…皆さん、すみません。俺が不甲斐ないばかりに…」
「何を言っている。自信を持て、少年。君がいなければ、ここにいる全員が無残に殺されてしまっていた。君が救ったのだ」
老人が俺の肩を叩きながら言った。
「きっかけはいくらでもあった。遅かれ早かれ、兵士たちは私達を見つけ出し襲っていただろう。それは過ぎ去った経緯にすぎない。それよりも君が救った命に自信を持ち給え。それが死んでいった者への礼儀だ」
「…はい、…本当に、すみません… …ありがとう… ございます…」
最後の方は言葉にもならなかった。
「なぁ、少年。大事なのはこれからだ。今につながる未来なのだ。君は、君が救ったこれらの人々に責任を持たねばならない。わかるね? これから君が成すべきことが…」
俺はもう過ちを犯したりはしない。帝国軍は以後、もっと激しく襲い掛かってくるだろう。ならば、今の俺にできることは…。
「…もうこれ以上の犠牲は出したくありません。俺は、俺はここにいる皆を守ってみせます。俺のすべてをかけて…!」
「よう言った、少年。我々もできる限りの協力を約束する。一緒に戦ってくれるな?」
「勿論です。今の俺に何ができるかはまだわかりません。ただ、今だけは… 俺のために犠牲になった人たちへ… 泣くことを許して下さい… その後はもう振り返りはしません。だから、どうか今だけは…」
こうして、このダーフの村は帝国に対し反旗を翻すこととなった。クーニフ歴36年13月、とても寒い日の出来事だった。
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