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「わっかんねぇなぁ……
ホントに意味あるもんなのか?コレ」
拠点の長椅子に寝転んで。自称図面、他称落書きを疑いの目で眺めながら、ぼやく。
当の図面にやたら思い切り良く「図面!」と書かれているのが、かえって判断を難しくしていた。
(フツウならいかにも嘘くせぇが、なんせ描いたヤツがヤツだからなぁ……)
性根が曲がりきった、この建築家のことだ。彼のような至極まっとうな常識人では考えなぞ全く測りようもない。
「……まさか、あの雑貨屋の店主とつるんで俺を担いでんじゃないだろうな?」
疑いの矛先を持ち主に向ける。
根も葉もないことではない。
こういった類の知識に詳しいわけではないが、自称図面はどこからどう見ても子供の落書きのような意味不明の絵の羅列にしか見えなかった。
恐らく、いや、確実に、この道の専門家に見せても同じ結論に至るのではないか。
一応、お情け程度に普通の図面っぽいものも、ちょこちょこと描かれてはいるけれども、書き方が常軌を逸しているため結局要領を得ないことに変わりはない。
(どうして同じ場所に違う図を重ねて書くかねぇ)
垂直の繋がりを表しているつもりなのだろうか。重なった線はそれぞれ違う色の墨で描かれているが、気が狂いそうなほどに見づらい。
紙の劣化か墨の重なりで破れてしまったものか、一部欠損を補っている箇所もあった。
「ひっど~い!そんなつもりならバレないようにもっとウマくするわよ!」
ドン、と勢いよく料理を卓に置きながら抗議してくる。トゥフォンとは対照的にやたらと元気だ。
もっとも、さもありなん。
彼があの茨と必死になって格闘している間じゅう、声援を送るだけでほとんど何もしなかったのだから。
並より体力はあると自負しているさしものトゥフォンも、あの果てどない伐採地獄は堪えた。
出口求めて手当たり次第に切って切って切って回って、
結局、あの空間の八割の茨は切ったのではないだろうか。
回転木馬に勝るとも劣らない度を超えた悪質さだったが、宣告通りに出口があっただけマシだったと考えるべきなのかもしれない。
脱出までに一体、どのくらい掛かったのやら。
正確なところは分からないが、這々の体で引き返して拠点に帰り着いた頃には、東にあった日がすっかり落ちていた。
「……否定はしないんだな」
どっかり寝そべっていたトゥフォンが、のそっと身を起こす。
手際良く用意された夕食は、一応、彼のことを気遣ってのことなのだろう。質素ながらも栄養価の高い献立だった。
しかも、これが結構おいしい。そこだけは、この案内人の褒められるところだった。
「そりゃこんなご時世だもの。必要とあらば一通りのコトはするわよ」
「へぇ、逞しいコトで。その意気で早いトコこっちの仕事も完遂して欲しいもんだね」
肩をすくめるトゥフォンに、
「モチロン。やってやるわよ」
不敵なまでの力強さでイーシャが応えた。
ホントに意味あるもんなのか?コレ」
拠点の長椅子に寝転んで。自称図面、他称落書きを疑いの目で眺めながら、ぼやく。
当の図面にやたら思い切り良く「図面!」と書かれているのが、かえって判断を難しくしていた。
(フツウならいかにも嘘くせぇが、なんせ描いたヤツがヤツだからなぁ……)
性根が曲がりきった、この建築家のことだ。彼のような至極まっとうな常識人では考えなぞ全く測りようもない。
「……まさか、あの雑貨屋の店主とつるんで俺を担いでんじゃないだろうな?」
疑いの矛先を持ち主に向ける。
根も葉もないことではない。
こういった類の知識に詳しいわけではないが、自称図面はどこからどう見ても子供の落書きのような意味不明の絵の羅列にしか見えなかった。
恐らく、いや、確実に、この道の専門家に見せても同じ結論に至るのではないか。
一応、お情け程度に普通の図面っぽいものも、ちょこちょこと描かれてはいるけれども、書き方が常軌を逸しているため結局要領を得ないことに変わりはない。
(どうして同じ場所に違う図を重ねて書くかねぇ)
垂直の繋がりを表しているつもりなのだろうか。重なった線はそれぞれ違う色の墨で描かれているが、気が狂いそうなほどに見づらい。
紙の劣化か墨の重なりで破れてしまったものか、一部欠損を補っている箇所もあった。
「ひっど~い!そんなつもりならバレないようにもっとウマくするわよ!」
ドン、と勢いよく料理を卓に置きながら抗議してくる。トゥフォンとは対照的にやたらと元気だ。
もっとも、さもありなん。
彼があの茨と必死になって格闘している間じゅう、声援を送るだけでほとんど何もしなかったのだから。
並より体力はあると自負しているさしものトゥフォンも、あの果てどない伐採地獄は堪えた。
出口求めて手当たり次第に切って切って切って回って、
結局、あの空間の八割の茨は切ったのではないだろうか。
回転木馬に勝るとも劣らない度を超えた悪質さだったが、宣告通りに出口があっただけマシだったと考えるべきなのかもしれない。
脱出までに一体、どのくらい掛かったのやら。
正確なところは分からないが、這々の体で引き返して拠点に帰り着いた頃には、東にあった日がすっかり落ちていた。
「……否定はしないんだな」
どっかり寝そべっていたトゥフォンが、のそっと身を起こす。
手際良く用意された夕食は、一応、彼のことを気遣ってのことなのだろう。質素ながらも栄養価の高い献立だった。
しかも、これが結構おいしい。そこだけは、この案内人の褒められるところだった。
「そりゃこんなご時世だもの。必要とあらば一通りのコトはするわよ」
「へぇ、逞しいコトで。その意気で早いトコこっちの仕事も完遂して欲しいもんだね」
肩をすくめるトゥフォンに、
「モチロン。やってやるわよ」
不敵なまでの力強さでイーシャが応えた。
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