無勢な僕等は裸で、

 容姿端麗な写真部員のスミレと、周りに上手く馴染めないでいる園芸部員のヒナギク。

 二人は恋人同士だからこそ、毎朝一緒に手を繋いで通学し、昼休みはハナバナが屯する中庭で駄弁り、放課後は共に公園の東屋で宿題をする。

 しかし、そんな他愛もない行動により、なぜだか彼らは周りから蔑ろにされていた。

 デンシャの止まらない駅。
 商品が並ばないコンビニエンスストア。
 ハナを写真に収めれば「そんな汚いのを撮るなんて悪趣味」だと罵られ、周りは揃って虫の死骸や動物の糞尿を写真に収めている。
 近所のぺっとしょっぷでは、ごきぶりや複数の目玉や触手を持つ奇怪な生き物たちが当たり前のように並ぶのに反して、多くの人が気持ち悪いと毛嫌いするウサギやイヌ、ネコは動物園にも送られずに殺処分されていた。  

 そんな『普通』と呼ばれる多勢な世間とは真逆の価値観を持つ無勢な彼ら。
 ヒナギクは、次第に他人との価値観の差異に苦しみ始め──。  

「オレと裸で生きるか、それとも、皆んなと同じ嫌いな服を纏って生きるか」

 これは今際まで歪みを刻む二人の、すこし不思議な物語。
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