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笠野月人という生徒会長
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「……ってことなんだが、いいか?」
亮介から聞いた作戦はこうだ。
緊急会議と題し、全校集会を開く。勿論、生徒も学校の先生も呼び出すことにする。そしてそこにこの映像を流す。大まかにこういう流れだ。
月人会長も案外ノリノリで、
「先生方…………いや、我々の敵には僕から集まってもらえるよう呼びかけるよ」
とのこと。
しかし、この作戦に了承を得なくてはならない人がいる。
千冬だ。
「……うーん」
今回の作戦は、要は自分がいじめられているシーンを全校生徒の前で垂れ流しにする行為だ。千冬にとって勿論気持ちが良いものではないはず。
千冬は長考した後に、
「いいよ」
と言ってくれた。
「いいのか? 本当に嫌だったら、辞めるぞ?」
「うん、だって、この映像見たら、先生たちも認めるしかないし。それにこのまま、春樹が犯人なんて、絶対可笑しいもん」
千冬は画面の中でニッコリ微笑む。
「あ、今日は、千冬が好きなアイス買ってきたんだ」
「え! ほんと? やったー」
俺はそれを写真で撮る。
すると、アイスはスマホの中に複製される。
「どう? お味は?」
俺はそう尋ねると、
「美味しい! 味覚もばっちりだね」
と嬉しそうにバクバク食べる千冬。
その姿の俺は癒されつつ、俺もアイスをいただく。
最近分かったことだが、この不思議で怪しげな『TAKIINROOM』の複製には限界がある。あまりにも大きなものは複製できないのだ。
今のところ出来る最大のサイズはベッド。
それより大きな例えば家まるごととかは出来ないような仕様になっている。
後、千冬はトイレに行きたくならない様子だ。
勿論、洋服や水は複製できるが、お風呂やトイレに一切言っていない。
「……トイレ、大丈夫?」
って前に聞いたら、
「女の子にそんなこと聞く?」
と返され何も言えなかった。
もしかしたら、知らないとこでしているのかも知れない。
まぁ、ともあれ、作戦は予定通りに進めることが出来そうなので、亮介にラインを入れておく。
これで、先生共の腐った性根を叩き直してやる!
そう決意を固めていると、亮介から直ぐに返信が来た。
『千冬にどうやって確認を取ったんだ? 連絡着いたのか?』
しまった。完全にミスをしてしまった。
そう思えば、亮介には千冬と連絡が取れていないことになっていたのだ。まずい。
すると電話が鳴り響く。案の定亮介からだ。
「……千冬どうしよう!」
「え、私もどうすればいいか分からないよ」
千冬は現在、行方不明、ということになっているが、そのことを亮介は知らないはず。ならば、
「千冬! 今から説明することをやってくれ!」
「……もしもし」
『おぉ! やっと出た!』
「……どうした?」
俺は何を言われるか予想が付くが敢えてそう言った。
『千冬と連絡とれたのか?』
「…………あぁ、何なら今横にいるよ?」
『なに!? ちょっと声、出せるか?』
ほら来た。ただここで千冬にはある演技をしてもらう。
「…………もし…………もし………………?」
『…………大丈夫か』
「………………うん」
『…………そうか、春樹から聞いていると思うが動画こと、すまない…………。あれ、聞こえるか?』
「………………」
作戦通りお互いが無言になったところで、俺が出る。
「悪いな、千冬はまだ、誰かと話せる精神状態じゃないんだ」
『そうなのか? 無理行ってすまない』
「いいよ。取り敢えず千冬からの了承は得ているから」
『わかった、連絡ありがとう』
どうやら、窮地を切り抜けられたようだ。
俺はほっと胸を撫でおろす。
「どう、だった?」
千冬は心配そうに俺に尋ねてきた。
「最高だった。もしかして女優向いてるんじゃない?」
「そ、そこまで?」
千冬は困ったような、でも、何処か嬉しそうな表情で笑った。
次の日。
俺が呑気に飯を菓子パンを頬張っていると、
【えー、緊急で五時間目は全校集会となりました。速やかに体育館へとお集まりください】
とスピーカーから流れた。
声は校長先生のようだ。
このタイミングでこのアナウンス。
間違いない、例の作戦だ。
教室で友達とじゃれている亮介を見ると、明らかににやついる。俺は速攻で駆け寄って、
「今日なら今日って言ってくれよ?」
「すまん。昨日深夜まで月人会長と連絡してて、俺も実は今日だとは思わなかったんだわ」
「え、亮介も知らなかったの……?」
「まぁな。てか、月人会長以外知らないんじゃないか? 実先輩は知っていた可能性はあるがな」
それなら、俺が知らないことも頷ける。
そもそも、このチームはそれぞれの思惑があった。一人だけ信用できない人物はいるが。それは置いといて、月人会長は教師陣に対してかなりご立腹だった。
そして、その教師陣に一泡吹かせるチャンスともなれば、それは次の日は実行に移す気持ちも分かる。
が、それにしても早すぎる。
全校集会なんて、生徒会長の権限だけではどうすることも出来ないはず。どんな手を使ったのだろう。
まぁ、そんなこと俺のような凡人がいくら考えても答えは出ないだろうから、今は取り敢えず黙って体育館に行くとしよう。
体育館には本当に全校生徒が集まっていた。
そして、ステージの上には校長先生と生徒会長。
「……えー、今日は生徒会長から、どうしても全校生徒に伝えなくてはいけないことがあるみたいなので、このような場を――」
校長先生が話している途中なのに、月人会長はマイクを奪い取った。
そして。
「みんな! 真実を知る覚悟はあるか!」
そう叫んだのだった――。
亮介から聞いた作戦はこうだ。
緊急会議と題し、全校集会を開く。勿論、生徒も学校の先生も呼び出すことにする。そしてそこにこの映像を流す。大まかにこういう流れだ。
月人会長も案外ノリノリで、
「先生方…………いや、我々の敵には僕から集まってもらえるよう呼びかけるよ」
とのこと。
しかし、この作戦に了承を得なくてはならない人がいる。
千冬だ。
「……うーん」
今回の作戦は、要は自分がいじめられているシーンを全校生徒の前で垂れ流しにする行為だ。千冬にとって勿論気持ちが良いものではないはず。
千冬は長考した後に、
「いいよ」
と言ってくれた。
「いいのか? 本当に嫌だったら、辞めるぞ?」
「うん、だって、この映像見たら、先生たちも認めるしかないし。それにこのまま、春樹が犯人なんて、絶対可笑しいもん」
千冬は画面の中でニッコリ微笑む。
「あ、今日は、千冬が好きなアイス買ってきたんだ」
「え! ほんと? やったー」
俺はそれを写真で撮る。
すると、アイスはスマホの中に複製される。
「どう? お味は?」
俺はそう尋ねると、
「美味しい! 味覚もばっちりだね」
と嬉しそうにバクバク食べる千冬。
その姿の俺は癒されつつ、俺もアイスをいただく。
最近分かったことだが、この不思議で怪しげな『TAKIINROOM』の複製には限界がある。あまりにも大きなものは複製できないのだ。
今のところ出来る最大のサイズはベッド。
それより大きな例えば家まるごととかは出来ないような仕様になっている。
後、千冬はトイレに行きたくならない様子だ。
勿論、洋服や水は複製できるが、お風呂やトイレに一切言っていない。
「……トイレ、大丈夫?」
って前に聞いたら、
「女の子にそんなこと聞く?」
と返され何も言えなかった。
もしかしたら、知らないとこでしているのかも知れない。
まぁ、ともあれ、作戦は予定通りに進めることが出来そうなので、亮介にラインを入れておく。
これで、先生共の腐った性根を叩き直してやる!
そう決意を固めていると、亮介から直ぐに返信が来た。
『千冬にどうやって確認を取ったんだ? 連絡着いたのか?』
しまった。完全にミスをしてしまった。
そう思えば、亮介には千冬と連絡が取れていないことになっていたのだ。まずい。
すると電話が鳴り響く。案の定亮介からだ。
「……千冬どうしよう!」
「え、私もどうすればいいか分からないよ」
千冬は現在、行方不明、ということになっているが、そのことを亮介は知らないはず。ならば、
「千冬! 今から説明することをやってくれ!」
「……もしもし」
『おぉ! やっと出た!』
「……どうした?」
俺は何を言われるか予想が付くが敢えてそう言った。
『千冬と連絡とれたのか?』
「…………あぁ、何なら今横にいるよ?」
『なに!? ちょっと声、出せるか?』
ほら来た。ただここで千冬にはある演技をしてもらう。
「…………もし…………もし………………?」
『…………大丈夫か』
「………………うん」
『…………そうか、春樹から聞いていると思うが動画こと、すまない…………。あれ、聞こえるか?』
「………………」
作戦通りお互いが無言になったところで、俺が出る。
「悪いな、千冬はまだ、誰かと話せる精神状態じゃないんだ」
『そうなのか? 無理行ってすまない』
「いいよ。取り敢えず千冬からの了承は得ているから」
『わかった、連絡ありがとう』
どうやら、窮地を切り抜けられたようだ。
俺はほっと胸を撫でおろす。
「どう、だった?」
千冬は心配そうに俺に尋ねてきた。
「最高だった。もしかして女優向いてるんじゃない?」
「そ、そこまで?」
千冬は困ったような、でも、何処か嬉しそうな表情で笑った。
次の日。
俺が呑気に飯を菓子パンを頬張っていると、
【えー、緊急で五時間目は全校集会となりました。速やかに体育館へとお集まりください】
とスピーカーから流れた。
声は校長先生のようだ。
このタイミングでこのアナウンス。
間違いない、例の作戦だ。
教室で友達とじゃれている亮介を見ると、明らかににやついる。俺は速攻で駆け寄って、
「今日なら今日って言ってくれよ?」
「すまん。昨日深夜まで月人会長と連絡してて、俺も実は今日だとは思わなかったんだわ」
「え、亮介も知らなかったの……?」
「まぁな。てか、月人会長以外知らないんじゃないか? 実先輩は知っていた可能性はあるがな」
それなら、俺が知らないことも頷ける。
そもそも、このチームはそれぞれの思惑があった。一人だけ信用できない人物はいるが。それは置いといて、月人会長は教師陣に対してかなりご立腹だった。
そして、その教師陣に一泡吹かせるチャンスともなれば、それは次の日は実行に移す気持ちも分かる。
が、それにしても早すぎる。
全校集会なんて、生徒会長の権限だけではどうすることも出来ないはず。どんな手を使ったのだろう。
まぁ、そんなこと俺のような凡人がいくら考えても答えは出ないだろうから、今は取り敢えず黙って体育館に行くとしよう。
体育館には本当に全校生徒が集まっていた。
そして、ステージの上には校長先生と生徒会長。
「……えー、今日は生徒会長から、どうしても全校生徒に伝えなくてはいけないことがあるみたいなので、このような場を――」
校長先生が話している途中なのに、月人会長はマイクを奪い取った。
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