上 下
13 / 16

佐々木亮介と言うの友達Part2

しおりを挟む
「そういやチーム名とかどうする?」
 解散し、それぞれ教室に戻っていると亮介は俺にそんなことを聞いてきた。
 正直、どうでもいいので、
「なんでもいいよ」
 とだけ言っておいた。

「じゃ、チーム春樹でどう?」
「安直な上にしんどい」
「なんでもいいっていったじゃん」

 そんな会話をしていると、亮介は何か言いたそうにもじもじし始めた。
「なんだよ?」
「いやさ、千冬は大丈夫なのか? その、今回みたいなことがあって、どんなに明るい性格だろうと、怪我までしてんだろ? 結構しんどいと思うし。春樹なら家隣だから、なんか知ってんのかなって」
 
 そもそも今回の件で一番の被害者は間違いなく千冬だ。
 それに、俺の目的は罪を認めさせ、千冬に謝らせることにある。
 だとすれば、この事件の中核にいる千冬のことを気になっても仕方ない。

「……連絡はない」

 亮介を信用してないわけじゃないが、千冬は今、俺のポケットの中にいる、なんて言ったところで、ついに頭がイカれちまったか、と思われるだけだ。
 なので、正直に伝えることはしない。

「……そうか、千冬はきっと、春樹のこと信頼してるから、気持ちが落ち着いたら連絡があると思うんだ、そのときは……!」

 亮介は背中を思いっきり叩く。
 俺は油断していたこともあって、うっかり転びそうになったが、どうにか留まった。

「なにすんだよ!」
「景気付けだよ、ちゃんとやれよ!」

 ガハハ、と豪快に笑いながら何度も背中を叩く。
 亮介は高校で出会い、未だ三ヶ月と言うの短い時間の付き合いでしかない。
 しかし、亮介と言う人間は驚くほど、俺の心にすっと入ってきた。
 そして、何より、どうしようもない俺をこんなにも前向きにさせてくれる。

「……ありがとな」
「は! お礼は全部終わってからな! ジュース奢れよ?」
「あぁ」
「序にキンタマ揉ませろよ?」
「なんでだよ! あれ痛いんだぞ!」
「はははっ!! そう言うや、今のお前、調子いいぞ?」
「……は? どういうことだ?」
「いいのいいのー」

 そんなこと言いながら亮介は手をフリフリする。
 よく分からないが、ただ言えることは亮介が友達で良かったということ、それだけだ。

 教室に到着すると咲は何食わぬ顔でスミレとお喋りをしていた。

「…………」

 スミレと目が合うがガン無視。
 こいつ、ある意味肝が座ってやがる。
 俺は憤りを感じていると、

「♪~!」

 俺のポケットでアラーム音が鳴り響く。
 皆の視線をより一層感じつつ、スマホを開くと、画面には拗ねた様子の千冬がいる。

「……千冬が鳴らしたのか?」

 俺は小さな声で話す。
 スマホに話しかけている変やつと思われないよう。
 千冬がここにいることがバレないよう。

「そうだよ、言いたいことがあってね」
「なんだ?」
「……咲ちゃんには気をつけたほうがいいよ」

 そんなことは言われる前からわかっている。が、千冬はそれ以上に感じているのだろう。
 チーム春樹(仮)に参加する理由が不透明な上にそもそも、千冬をいじめた一人だ。
 何なら、謝ってほしいぐらいだ。
 あの場で謝れ!!って怒ってもいいけど、それでは何の解決にもならん。
 というか千冬がスマの中にいるのにどうやって謝らせるべきか、正直、難しい。

「……わかったよ。でもこれから言いたいことあるときは音を鳴らすんじゃなくて、振動で頼む、携帯没収とかになったら、終わるからな」
「……わかったよ」

 千冬はそれ以上何も言わなかった。
 


 何事もなく、学校を終え、帰宅すると、ラインに連絡が入った。
 【チーム春樹】というグループに誘われたようだ。本当にこと名前でやるのか? 恥ずかしいし、結構嫌だ。
 そのグループに入るとこれからの方針について会議があった。
 まず、初めにやることは、学校が責任を俺に擦り付けたことを認めさせることだ。
 皆は千冬に殴られたことを説明させることが早いと言ったが、それは、できない。
 何故ならスマホの中にいるからだ。
 だとすれば何か他の方法はないだろうか。

 皆良案がないまま、今日の会議は終わった。

 それから二日後。
 俺と亮介の元にある男が現れた。
 名前は草場太一(くさばたいち)。彼は俗に言うヲタクで、両ポケットにライトノベルをツッコミ、毎日アニメの話ばかりしている。
 女子から当然のようにキモがられているが、俺はそうは思わない。
 というのも、俺だって、ゲームやアニメ、漫画やライトノベル好きだし、それを否定させることの悔しさは当然知っている。
 だから、彼のような生き方には寧ろかっこよさすら覚える。 
 俺のように適当に空気を読んで生きてきたやつより、よっぽど、まともだ。
「あ、あの、取引しないか?」
「……なんのだ?」 

 亮介の最もな指摘に太一はうろたえる。
 亮介は家の男子の中でもかなり陽キャでリーダー的存在だ。 
 太一とはあまり、肌感が合わない様子だ。

「俺、お前らがいま、欲しいであろう動画持ってるよ?」

「……ほう?」

 動画ってなんだろう?
 このタイミングでエロ動画ってわけじゃないんだろうし。
「ち、千冬ちゃんがスミレから殴られてる動画、あるよ」
「まじか!」

 それは間違いなく希望だーー。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

My Angel -マイ・エンジェル-

甲斐てつろう
青春
逃げて、向き合って、そして始まる。 いくら頑張っても認めてもらえず全てを投げ出して現実逃避の旅に出る事を選んだ丈二。 道中で同じく現実に嫌気がさした麗奈と共に行く事になるが彼女は親に無断で家出をした未成年だった。 世間では誘拐事件と言われてしまい現実逃避の旅は過酷となって行く。 旅の果てに彼らの導く答えとは。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

友情と青春とセックス

折り紙
青春
「僕」はとある高校に通う大学受験を 終えた男子高校生。 毎日授業にだるさを覚え、 夜更かしをして、翌日の授業に 眠気を感じながら挑むその姿は 他の一般的な高校生と違いはない。 大学受験を終えた「僕」は生活の合間に自分の過去を思い出す。 自分の青春を。 結構下品な下ネタが飛び交います。 3話目までうざい感じです 感想が欲しいです。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

今日の桃色女子高生図鑑

junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。 ちょっぴりエッチな感じで。 X(Twitter)でも更新しています。

足跡

冬生まれ
青春
気付けばいつも、その足跡は隣にあった…。

処理中です...