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王宮からやってきた王妃様と水の掛け合いをやってしまいました

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青髪の山姥は完全にファネッサ先生を怒らせてしまったのだ。あのファネッサ先生を怒らせるなんて、なんて勇気があるんだろう。私は感心してしまった。

しかし、なんと山姥はそれから送られた学園長からの召喚命令を無視してしまったのだ。完全に舐めた態度だった。


「本当に凄いわね」
食堂でその話を聞いて私は感心していた。

「単なる馬鹿よね。トイレ掃除するのが嫌だから休むなんて」
タチアナが馬鹿にしたようにいう。

「えっ、そんな理由で休んでいるの?」
私は驚いて聞いた。

「正式な理由は風邪だそうだが」
「そんなわけないですよね」
アル様の言葉にタチアナが言い切った。

「公爵家のご令嬢のタチアナ嬢がやっているのに、いい気なもんだよな」
「侯爵も遅くにできた子供だから甘やかしているんだろう」
アル様とクンラートが言っていた。そうか、山姥は甘やかされて育ったのか? それであのわがままなのだ。うちは怖い母がいて徹底的にしごかれたから・・・・甘い親が羨ましいと思ったのは内緒だ。

「それ聞いて、ファネッサ先生がブチ切れて、誰かを呼ぶそうだけど」
クンラートが面白そうに言うけれど、呼ぶって誰を呼ぶんだろう?

「王宮の女官長くらい呼ぶんじゃないか。流石に王宮の女官長の来いという命令には逆らえないだろう」
アル様が言うけれど、ファネッサ先生は王宮にまで影響力があるんだろうか?

「元々、王宮に勤めているものの多くは先生の指導を受けているし、王妃様もこの学園出身だから指導を受けているはずよ」
まあ、そうだよね。それだけ先生は古株なんだ。でも、そうすると私達の母も先生の指導を受けたということで・・・・。あんまり先生に逆らうのはやめておこうと私は思った。何かの拍子に母に私のことが伝わらないとは限らないし、君子危うきには近寄らずだ。



「そこ汚れている」
「はい」
「ここなんて全然じゃない」
「何でそんなところまで」
私がトイレに来てみるとなんと山姥が来ていたのだ。

そして、その指導しているのが、黒髪きつめの美人だった。何処かで会ったことがあるような人だった。

「はい、マイナス1点」
「ええ、そんな」
「いいの? 王妃様にはそのままお伝えするけど」
女は威張りくさって言ってくれた。

「えっ、いえ、すいません」
山姥は慌てて謝った。
なるほど、山姥も王妃様には逆らえないみたいだ。まあ、話聞く限りとんでもない人だしね。
そう、私はよく判っていなかったのだ。

「で、あなたはトイレ掃除をファネッサ先生に命じられた平民の女の子で合っている」
「はい」
女の言い方がムカついたが、この人は王宮から派遣されてきた女官長かなにかなのだろう。

「私はファネッサ先生から依頼されたルイー、いや、ルイです。王宮では王妃様付きの女官です」
女は言ってくれた。

「判る、私の言うことに反したら、即座に王妃様に言いつけますから」
女は言うんだけど、私は別に王妃様に睨まれてもどうってこと無いんだど。
私は少しムッとして女を見た。

「こんなのがアルの相手なの」
私には女がブツブツ呟くのが聞こえなかった。


「何その態度。さっさと掃除しなさい」
私のムッとした態度に女は切れていった。偉そうに!
今日はタチアナが委員会で遅くなるのだ。こんな女と山姥と3人でやるのか・・・・私はうんざりした。

ダラダラしながら動き出すと、
「あなた何ダラダラしているの? もっとさっさと動きなさい」
早速女が言ってくる。

「はーい」
私はいい加減に返事してブラシを動かそうとした。

一応私なりに一生懸命磨く。

「何やっているのよ。全然じゃない。もっと丁寧に」
女が言うけれど、これでも丁寧なのに。

「そんな事言われても、判りません。何なら見本見せてください」
私が言うが、

「何故私がそのようなことをしなければいけないの。王宮では自分で考えて行動するのよ。あなたも学園生でしょ。自分で考えて行動しなさい」
そう言うと私に便器を指さして指示する。

そうしながら女は私の目の片隅でゴミを落としたのだ。わざとだ。
「ちょっとあなた、こんなところにゴミが落ちているわよ。拾いなさい」
女の言葉に私はカチンと来た。

「判りました。ウィンドウ」
風で飛ばしてもろ女の顔にゴミを叩きつけたのだ。

「ちょっとあなた、何してくれるのよ」
女は切れていた。

「ええええ、ゴミを落とされたので、元に戻してあげただけですけど」
私は笑って言った。

「ほううう、じゃあ、私が掃除の基本を見せてあげるわ」
女は便器に近づくと
「ウォーター」
手を私に向けて水魔術を放ってくれたのだ。私はずぶ濡れになった。

「あーーらごめんなさい。手が滑ってしまったわ」
わざとらしく女は笑って言ってくれた。

上等じゃない。的を外すのは私のおはこなんだけど。

「じゃあ私も。ウォーター」
私は便器に向かって水魔術を放出した。でもそれは当然前に飛ぶわけはなく、もろ女にぶっかかったのだった。
女はびしょ濡れになっていた。

それを唖然と山姥が見ていたんだけど。

「な、何を」
「すいません。私ノーコンで狙った所に行かなくて」
私が女に笑うと

「ふーん、そうなんだ、ウォーター、御免、手が滑った」
私は正面から水をもろにかかってしまったのだ。コイツ絶対にわざとだ。
私もプッツンキレた。

もう許さない。お互いに水魔術で掛け合いを始めた。

「ちょっと止めて」
「煩いわね」
「どきなさいよ」
可哀想に山姥は私達の攻撃でずぶ濡れになっていたけど。

「ちょっと何やっているんですか」
大声で誰かが入ってきた。でも、その人は女が放った水魔術をモロに受けてしまったのだ。
そのずぶ濡れになったのはファネッサ先生だった。
やばい完全に切れている。でも、今回かけたのはこの威張っている女だ。さすがの女も青くなっている。

へーん、ざまーみろ。
私はそう思ったのだ。でも次の瞬間地獄に落とされることになるとは思ってもいなかった。


「妃殿下これはどういうことですか」
私はファネッサ先生の言葉に固まってしまった。

嘘ーーー、この人王妃様だったの。

そんなバカな。私は今まで王妃様相手にしたことを思い出していた。知らずとは言え王妃様に水魔術をわざとぶっかけていた。

私は王妃様相手になんてことしてしまったのだ。これは下手したら処刑されるのでは・・・・

私は珍しく真っ青になったのだった。

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