11 / 62
アル様に手をつないでカフェまで連れて行かれました
しおりを挟む
私達は公園のベンチに座って二人を待つことにした。
「そう言えば、昔、小さい頃にコイン投げのゲームをした記憶があるんだよな。どっかの邸宅でさ」
いきなりアル様が昔話を始められた。
「中庭みたいな所に、設置された得点の書かれた入れ物にコインを投げた記憶があるんだけど、俺は全然出来なくて、小さな女の子にバカにされた事があったような・・・・。その子、俺より小さかったから、投げるのが俺より前で、狙って投げるんだけど、全然違う所に飛んでいくんだ。でも、何故か得点の高いところに入って、『シルは凄いのよ』って叫んでいたような気がするんだけど」
とアル様が私を見て言うんだけど、えっ、シルって昔、私がシルフィって言えない時によく言っていた名前だけど、どう見てもお貴族様のアル様と私の接点があったなんて思えないんだけど。
「私も茶髪の男の子が『俺は凄いんだぞ、見とけよ』といって、コイン投げるんですけど、的の傍には飛ぶのですが、全部外して、なあんだ、たいしたことないんだと思った記憶があります」
「違うぞ。そのピンク頭の女の子は『何だ。全然出来ないのね』って俺を馬鹿にしたんだ」
アル様が訂正した。
「えっ、そんな失礼な事言いましたっけ?」
「今も結構言っているぞ」
「そんな事は無いと思いますよ。それに私は平民ですから、小さい時にお貴族様のアル様と接点なんて、ある訳ないと思うんですけど」
「でも、どう考えてもその失礼なガキはシルフィだぞ」
「えっ、そうですか」
私は不満そうに言うが、
「そうか、俺たちは幼なじみだったんだ」
喜ばしそうにアル様が言われる。
「いやいや、止めてくださいよ。高位貴族のアル様と幼なじみなんてあり得ないですから」
「そう言いつつ、今一緒にいるけれど」
「それはタチアナ様とクンラート様のお二人のためにいるだけで」
「誰のためだって」
そこにクンラートがぬっと現れた。
「ベーレンズ様」
私は驚いて言った。
「いいよ、もうかしこまらなくて、クンラートで。なあ、タチアナ嬢」
「ええ、私もタチアナでよろしくお願いしますわ。シルフィさん」
クンラートの横には、いつの間にかタチアナ様もいらっしゃった。
「えっ、いえ、そんな」
「いつからいたんだ?」
慌てる私を横に置いておいてアル様が聞かれた。
「お前らが楽しそうに恋人の泉にコインを投げているところからかな」
「本当にあまりも楽しそうでしたので、声をかけなかったのですわ」
二人が言うんだけど、私たちはお二人を待っていただけなのに。
「いやあ、しかし、恋人の泉に二人で手をつないでお祈りするなんて、いつからそんなに親しくなったんだ?」
「えっ、私達は早く来すぎてしまったので、お二人を待っている間の暇つぶしで」
「へえええ、暇つぶしで恋人の泉にコインを投げられたんですか」
「それも二人共見事に命中していたけれど」
なんか二人にからかわれているんだけど。
「まあ、良いじゃないか。それでは行こうか」
そう言って誤魔化すとアル様は私の手を引いて歩き出されたのだ。
「えっ、アル様、手?」
私がいうと、
「人が多いから迷子になったら大変だろう。それでなくても、シルフィは方向音痴なんだから」
そうアル様に言われると確かにその通りなんだけど、でも、男の人と手を繋いだことなんて最近は全く無くて、とても恥ずかしいんですけど。
それに、なんか周りの女の子の視線が怖いのですが。
恐らく、見目麗しい男に、何故、あんな地味でブサイクな女の子が手を繋がれて歩いているんだろうって思っていると思うんだけど。
真っ赤になった私の思惑なんて関係なしにアル様はずんずん歩いていかれたのだ。
「そう言えば、昔、小さい頃にコイン投げのゲームをした記憶があるんだよな。どっかの邸宅でさ」
いきなりアル様が昔話を始められた。
「中庭みたいな所に、設置された得点の書かれた入れ物にコインを投げた記憶があるんだけど、俺は全然出来なくて、小さな女の子にバカにされた事があったような・・・・。その子、俺より小さかったから、投げるのが俺より前で、狙って投げるんだけど、全然違う所に飛んでいくんだ。でも、何故か得点の高いところに入って、『シルは凄いのよ』って叫んでいたような気がするんだけど」
とアル様が私を見て言うんだけど、えっ、シルって昔、私がシルフィって言えない時によく言っていた名前だけど、どう見てもお貴族様のアル様と私の接点があったなんて思えないんだけど。
「私も茶髪の男の子が『俺は凄いんだぞ、見とけよ』といって、コイン投げるんですけど、的の傍には飛ぶのですが、全部外して、なあんだ、たいしたことないんだと思った記憶があります」
「違うぞ。そのピンク頭の女の子は『何だ。全然出来ないのね』って俺を馬鹿にしたんだ」
アル様が訂正した。
「えっ、そんな失礼な事言いましたっけ?」
「今も結構言っているぞ」
「そんな事は無いと思いますよ。それに私は平民ですから、小さい時にお貴族様のアル様と接点なんて、ある訳ないと思うんですけど」
「でも、どう考えてもその失礼なガキはシルフィだぞ」
「えっ、そうですか」
私は不満そうに言うが、
「そうか、俺たちは幼なじみだったんだ」
喜ばしそうにアル様が言われる。
「いやいや、止めてくださいよ。高位貴族のアル様と幼なじみなんてあり得ないですから」
「そう言いつつ、今一緒にいるけれど」
「それはタチアナ様とクンラート様のお二人のためにいるだけで」
「誰のためだって」
そこにクンラートがぬっと現れた。
「ベーレンズ様」
私は驚いて言った。
「いいよ、もうかしこまらなくて、クンラートで。なあ、タチアナ嬢」
「ええ、私もタチアナでよろしくお願いしますわ。シルフィさん」
クンラートの横には、いつの間にかタチアナ様もいらっしゃった。
「えっ、いえ、そんな」
「いつからいたんだ?」
慌てる私を横に置いておいてアル様が聞かれた。
「お前らが楽しそうに恋人の泉にコインを投げているところからかな」
「本当にあまりも楽しそうでしたので、声をかけなかったのですわ」
二人が言うんだけど、私たちはお二人を待っていただけなのに。
「いやあ、しかし、恋人の泉に二人で手をつないでお祈りするなんて、いつからそんなに親しくなったんだ?」
「えっ、私達は早く来すぎてしまったので、お二人を待っている間の暇つぶしで」
「へえええ、暇つぶしで恋人の泉にコインを投げられたんですか」
「それも二人共見事に命中していたけれど」
なんか二人にからかわれているんだけど。
「まあ、良いじゃないか。それでは行こうか」
そう言って誤魔化すとアル様は私の手を引いて歩き出されたのだ。
「えっ、アル様、手?」
私がいうと、
「人が多いから迷子になったら大変だろう。それでなくても、シルフィは方向音痴なんだから」
そうアル様に言われると確かにその通りなんだけど、でも、男の人と手を繋いだことなんて最近は全く無くて、とても恥ずかしいんですけど。
それに、なんか周りの女の子の視線が怖いのですが。
恐らく、見目麗しい男に、何故、あんな地味でブサイクな女の子が手を繋がれて歩いているんだろうって思っていると思うんだけど。
真っ赤になった私の思惑なんて関係なしにアル様はずんずん歩いていかれたのだ。
21
お気に入りに追加
923
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる