上 下
75 / 82

人相の悪い男たちが待ち構えていました

しおりを挟む
「どうするのよ! こんな目立つことして! ピースケの存在が皆にわかっちゃったじゃない!」
帰って来た私を家に連れて帰るや否やマチルダが怒ってくれたんだけど。

「えっ、そんなこと言ったって、待ってても誰も来なかったし、レイラが気を失ってしまって慌てて帰って来たのよ」
私は言ったが、

「まあ、パティだから、仕方がないと思うけれど、下手したらあなたが狙われるのよ」
「えっ、狙われるってなんで?」
「だって、あなた、最強の古代竜にいう事を聞かせられるのよ。下手したら帝国の軍隊をやっつける事も出来るわ。みんなあなたを手に入れようとするわよ」

マチルダが話してくれるには古代竜は帝国では守り神として讃えられていて、その存在は神に等しいのだとか。その古代竜をペットにしている存在は下手したら皇帝陛下と対等の立場になるそうだ。
そして、皆が私が古代竜から下りるのを見てしまったという事は私がその立場になり得るという事で……

「そんな……」
私はそんな大それたことになるなんて思ってもいなかった。
肝心のぴーちゃんは帰ってきたら何故かそのまま小さくなって私の胸の中でスウスウのんきに寝ているんだけど……

「まあ、いざとなったらあなたは無敵だから良いけど」
「いや、マチルダ、どうしよう……」
私は混乱した。みんなが私を浚おうと襲ってきたらさすがに逃げ切れない。
いや、逃げようと思えば変身したらよいけど、三分間しか続かないのだ。絶対に追いつかれてしまう。

「まあ、だから私の庇護下に入れたんだけど、ちょっとバレるのが早すぎたのよね。まあ、良いわ。パティの事は私が守ってあげる」
胸を張ってマチルダが宣言してくれた。

「有難うマチルダ。恩に着るわ」
「まあ、大変だけど、頑張ってみるわ。だから私のいう事はちゃんと聞くのよ」
「判った」
そう、私は何も考えずにここで頷いてしまったのだ。




「で、どうしてこうなった?」
私は頭を押さえていた。

私達は今、帝国との国境付近の魔の森に来ていた。

「マチルダ様、前方200メートルにオーク発見しました」
「オークくらい自分たちで倒しなさい。それよりもフェンリルはまだ見つからないの?」
「はっ、白い影は全く発見できません」
「やっぱり、国境を超えないといけないかしら」
マチルダは暢気に言ってくれるが、

「良いのか、マチルダ、勝手に国境を越えて」
私の左横のジルが心配して聞いた。

「国境と言っても明確に分かれていないし、多少ならばれないだろう」
ブラッドが私の右横から言ってくる。

「そういうわけにはいくまい」
「ふんっ、格好つけているが、俺と違って貴様は帝国に入ると命の危険があるのかもしれんからな」
「な、何だと」
もう、二人して私を間にして喧嘩するのは止めてほしいんだけど。

それも、もうずうーっとだ。まあ、喧嘩するのは仲のいい証拠かもしれないけれど、何も私を間に挟んでやることないじゃない!

「大丈夫よ。帝国には許可を得ているわ」
マチルダが言ってきた。
「勝手な事を」
何故かそのことに対してジルが怒っているんだけど。

「気にしなくても良いわよ。私が魔物狩りでうろうろしているとしか報告していないから。あなたの事もパティの事も話していないわよ」
「ならいいが」
ジルが頷くんだけど。

私は確かに時の人かもしれないし、帝国に入ったら捕まえられるかもしれないけれど、ジルも元々帝国の子爵だ。マチルダの婚約者だから高位貴族だとは思うけれど。帝国に帰ったらまずい事でもあるのだろうか?

それにここにいるのが私にとって危険だったら、何もこんなところに来る必要はないのではないだろうか?


私は確かに身を守るために、マチルダに協力してほしいと言った。
でも、その後にすぐにマチルダが、じゃあ、北の魔の森に行きましょうと言ったのだ。
私はそれが何故必要な事なのか良く判らなかったのだが……

やっぱりこれってマチルダがフェンリルを捕まえてモフモフしたいだけではないのだろうか?

「パティ、どうしたの? 不満そうな顔して」
「だってこれと私を守るって事とどう関係するのかなって」
「ええええ! 良いじゃない。たまには私のいう事聞いてくれても。フェンリル捕まえられたらあなたにもモフモフさせてあげるから」
やっぱりそうだった。嬉しそうににやにやしているけど、絶対に自分のためじゃん。

私が切れようとした時だ。


「前方に人の集団がいます。お嬢様に面会を申し込んできていますが」
斥候の騎士が駆けこんで来たんだけど。

「やっとお出ましになったの」
マチルダが不敵な笑みを浮かべたんだけど。

ええええ!
貴方これを待っていたの?


広場に待っていたのは剣を構えた冒険者崩れの人相の悪い男達だったのだ。

*****************************************************

パティたちはどうなる?

今夜更新予定です
しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。

私の絶賛発売中の書籍化作品はこちら
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

7月5日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。



この次の新作はこちら
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447

前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。もう二度と会う訳はないと思っていたのに……
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...