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お嬢様の危機に婚約者が誘拐犯に立ち向かいましたが、一撃でのされてしまいました

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私ははっと目を覚ました。

確か、デービーに眠り薬を注射されたのだ。

「痛い!」
起き上がろうとして、両腕を後手に縛らているのに気付いた。

ここは、大きな倉庫のよう所に転がされていたのだ。

「よう気付いたかい、嬢ちゃん」
そこにはケントがいた。ほかに数人の男がいるが、知らない顔だ。デービーはいなかった。

「いろいろ情報ありがとうな。おかげで良い作戦が建てられたぜ」
ケントは笑って言ってくれた。

「じゃあこの縄を解いて」
私が言うと

「解くわけないだろう。お嬢ちゃんは誘拐犯の片割れとして色々使い道があるんだよ」
「騙したの?」
「騙したなんてもんじゃないさ。元々おめえの事は信用なんてしていないし」
まあ、元々使い捨ての要員という事だろう。

「もうすぐ、お嬢様も連れて来られるぜ」
「こいつも一緒に娼館に売るのか」
「いや、こんなガキ、売れないだろう」
「そうだな、どう見ても童顔だしな。お嬢様みたいに胸もないし」
男たちは好き勝手に言ってくれる。むかつくが、しばらくは安心という事だろう。お嬢様も連れて来てくれるそうだし。

まあ、いくら酷いことをされたローズお嬢様とはいえ、アラサーよりも年いった私が娼館に売られるならいざしらず、いや、決して売られたいわけではないが、13歳の女の子がおもちゃにされて売られるのは私としては許せない。

でもどうしよう?
見る限り中には10人はいる。外の見張り等も入れたら20人位はいるだろう。
それを生活魔法だけで退治できるかというと無理だ。絶対に沙季様にならないと……。
でも、出来たらお嬢様らに知られたくない。
お嬢様がこの部屋から連れ出されようとした時に変身しようか?
でも出られるのか?

そうこうするうちにお嬢様とブラッドリー様が後ろ手に縛られて連れて来られたのだ。

「ちょっと、何すんのよ」
お嬢様は突き飛ばされて転げて叫んでいた。

「本当だ。商品は大事だぜ。丁重に扱わないと」
後ろからデービーが注意する。

「デービー!」
お嬢様はデービーを見て驚いていた。

「ローズお嬢様は大切な身代金をもらうための人質だ。丁重にしろよ」
「あなた、裏切ったの?」
「裏切ったもくそも、俺は元々こいつらの仲間だ」
お嬢様の問いにデービーが答えてくれた。

「そんな」
お嬢様は絶望的な声を出した。

「そこのお嬢様が虐めていた女にいろいろ教えてもらったんだよ」
デービーは言わなくてもいいのに私を指さして余計な事を言ってくれる。
「パトリシア、あんたもグルだったの?」
お嬢様がこちらを見て叫ぶが、

「何言っているんですか? お嬢様に閉じ込められた食糧庫でこいつらがお嬢様を攫おうとしているのを聞いたんです。お嬢様に言おうとしたら、お嬢様がデービーの前で、私が食糧庫に閉じ込められていたことばらしてくれたんじゃないですか」
私がお嬢様に言う。裏切り者にされた場合私が職を失う。それだけは避けないと。

「だからって、その前に言いなさいよ」
「言っても私より、デービーーのいう事を信じたでしょう」
「それは」
お嬢様が絶句してくれた。やっぱり言わなくて良かった。

「まあ、俺はお嬢様には信頼されていたって事か」
デービーはそう言うと笑ってくれた。

「それでも話してくれたらよかったじゃない」
お嬢様は涙目だ。

「大丈夫です。お嬢様。騎士団にはちゃんと伝えてありますから」
私が言うと、
「やはり貴様が裏切ってくれたのか」
デービーは何故か余裕で笑っていた。何故余裕なんだよ?

そう言うとデービーは倒れていたブラッドリーを蹴り上げたのだ。

「うっ」
と唸ってブラッドリーは地面に叩きつけられる。

「ブラッドリー様!」
心配してお嬢様が声を上げるが、デービーは無視してもう一度ブラッドリーを蹴り上げる。

「気絶しているふりしても起きているのは知っているんだよ」
デービーは叫んでいた。

ブラッドリーが目を開ける。

「お前んとこの騎士団だろ。いろいろ嗅ぎ回っていたのは」
デービーが笑って言った。

「だからこの新しいアジトにしたんだよ。前のアジトに言っても俺たちは誰もいないぜ」
何かブラッドリーが唇を嚙んでいる。こいつの部下も大したことは無いのか? 私はがっかりした。

「という事で、助けは来ないんだよな、お嬢さん」
デービーはローズお嬢様の所に行った。
そして、顎を掴む。

「放してよ」
お嬢様が首を振るがびくともしない。

「こうしてみるとガキにしては可愛い顔しているじゃないか? そっちの侍女に比べるとな」
デービーは下碑た笑みを浮かべた。

「まず、お前をじっくり味わってやるか」
「えっ、ちょっとやめて!」
お嬢様が拒否しようとするが縛られていて何もできない。

デービーが薄ら笑いをして、お嬢様の服に手をかけようとした時だ。

「ローズに触るな!」
ブラッドリーは叫ぶや、立ち上がった。何故か縛られていた手が解けている。
そして、デービーにつかみかかろうとした時だ。

横にいた男が手をかざしたのだ。

ダン!

その手からは衝撃波が放たれてブラッドリーを直撃してブラッドリーはぼろ雑巾みたいに弾き飛ばされていたのだ。

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ここまで読んで頂いて有難うございます。
続きは明朝です。


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