上 下
13 / 82

若奥様のネックレスを盗んだことにされて地下室に幽閉されました。

しおりを挟む
私はいきなり、メイドにならされて姉の下に配属されたのだ。

その少し上の姉、スカーレットは最悪の性格だった。

私に今まで自分のやっていた以上の仕事を次から次に私に押し付けて来たのだ。

そして、自分はのほほんと、自室でくつろいでいるのだ。

あんたも少しは働きなさいよ!

私は余程叫ぼうかと思ったのだが、料理長らが言うには、スカーレットは物心着いた時から侍女としてずうーっと働いており、ほとんど遊んだこともないのだとか。
特に二番目の姉が高位貴族の元に働きに出た三年前からは一人で侍女をさせられていたそうなのだ。

「だから、パティが入ってくれて、少し浮かれているんだよ!」
他の使用人達はそう言ってくれるが、やらされるのは私なのだ。
長い間見てきた姉の身になるのは判るが、逆にやらされる私の身にもなってほしい!

私はそう叫びたかった。

毎日本当に大変だったのだ。

朝は日の出と同時に起き出してまずは廊下の窓拭きだ。
これが結構重労働なのだ。
高いところの窓は脚立を持ってきて、拭かないといけないんだけど、その脚立の重いこと重いこと。

でも、誰も手伝ってくれないのだ。
庭師のおじいちゃんは腰を少し痛めつけているし、料理長とその見習いは朝の準備で忙しい。
スカーレットはなんと寝ているのだ。3年ぶりの朝寝だとかなんとか言いながら……

そして、7時に朝食。この時は時間がないのでかきこんで食べるのだ。

7時半に若奥様、バーバラ様の朝の用意の手伝いだ。

お貴族様は本当に朝が遅いのだ。

下手したら8時9時起きもザラだ。

でも、たまに、バーバラ様も早く起きていることがあって
「遅いわよ。パティ」
と文句を言われるのだ。
その日は一日中グチグチ言われる。
たまには許してくれても良いじゃないと思わないでもない。
同じ男爵家の娘なのに、片や若奥様、片やメイドだ。
立場がまるで違うのだ。何か理不尽だが、そこは私のほうが若いということで強引に納得させた。
私自身を!

奥様のカーラ様の手伝いはスカーレットがするので私は免除されているが、カーラ様のほうが起きるのは基本的に遅いので、スカーレットはその分眠れるとふんでいるのだ。

そして、それが終わると若奥様と若旦那さまの給仕でこれは私が料理長らとする。

その後は私は即座に洗濯だ。

これは館の全員分で本当に大変なのだ。
当然洗濯機なんて便利なものはない。

横を流れる川の水を使って足で踏んで洗濯するのだ。
夏だから良いけれど、冬はどうなるんだろう?
私は足がしもやけあかぎれだらけになる未来しか見えなかった。
当然スカーレットは手伝ってくれない。

そして、洗濯が終わるかどうかの時に昼時だ。
洗濯が遅くなってしまうと、私の食事が無いことなんてザラだ。
何の仕事もしていないスカーレットが私の分も食べてしまうのだ。
最初になかった時に私は切れたが、待遇は改善されずに、今に至っている。
最近は一日二食が普通になっている。

そして、12時に男爵様ご夫婦と若夫婦の食事だ。
この時はスカーレットと私で給仕する。
スカーレットは旦那さまと奥様の前で仕事しているとアピールしているのだ。
その後はスカーレットは編み物という名の休憩。
私は廊下や、食堂、客室などの掃除だ。
スカーレットは旦那様の執務室や奥様との寝室だけを掃除している。
私は5倍以上範囲が広いんだけど……

そして、夜ご飯だ。今度は旦那様らのほうが早くてこれを皆で給仕する。
ケインさんとスカーレットと私で給仕する。
さすが男爵家の食事、ディナーは別格だ。
夜のまかないもディナーほどではないが、豪華だった。
このまかないがなければ私はひもじくて死んでいた。

そして、夜の若奥様の準備を手伝ってやっと私のお役御免だ。

それからシャワーを浴びると下手したら12時を回っていることもある。

私はバタンキューで寝たと思ったら翌朝になっているなんてこともザラだった。



そんな時だ。私は夜遅くまで起きていて、翌朝寝坊してしまったのだ。

完全にやってしまった。

「パティ、何しているのよ!」
遅れて走って行った先にいたバーバラ様はお怒りモードだった。
今日一日、また針のむしろだ。

私がうんざりした時だ。

「あれ、ないわ」
突然バーバラ様が叫びだしたのだ。

なんでも父上からの形見のダイヤモンドのネックレスが見当たらないのだとか。

私もそれはよく見かけたことがある。前回使った後は確かにバーバラ様の衣装戸棚の宝石入れの中に確かに入れたのだ。

それがないとバーバラ様が言うんだけど。

そんな訳はない。

どこかに紛れ込んでいるのに違いないのだ。

私とバーバラ様が手分けして必死に探した。

でも、出てこなかったのだ。

「どうしたのです」
あまりにも私達が騒がしいので、カーラ様まで見に来られたのだ。

「お父様の形見のダイヤのネックレスが無くなっていて」
「パティ、あなた本当に知らないの?」
カーラ様がさも疑うように私に言うんだけど、知らないものは知らないのだ。

私達が必死に探していた時だ。

「バーバラ様。お探しのダイヤのネックレスはこちらですか」
そこに顔を出したスカーレットが見慣れたダイヤのネックレスを差し出したのだ。

「良かった。どこにあったの?」
バーバラ様がホッとして聞くと

「パティの衣装棚の中に紛れてましたけど」
意地悪そうに言うスカーレットの言葉に私は驚いた。

「な、なんですって、パティ、あなた私のネックレスを盗んだの?」
バーバラ様も怒って私を見るんだけど。

「いや、そんな事しないですって」
私は必死に言い訳しようとしたが、全員が私を睨みつけたんだけど。

そんな馬鹿な……

いくら言い訳しても新参者の私は信じてもらえなかった。

私は地下室に閉じ込められてしまったのだ。

**************************************************************
どうなるパティ
続きは今夜更新予定です。

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』
ウエブページ https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

レジーナブックスの書籍説明ページ 
https://www.regina-books.com/lineup/detail/1056603/9532

全国の書店で絶好調発売中です。
ぜひともお盆にでもお読み頂ければ嬉しいです!

下記にリンクもあります
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...