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プロローグ 王太子視点 魔王に襲われたところをミニ聖女に助けられて恋に落ちました

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数多ある話の中からこの話選んでいただいてありがととうございます。

********
魔王が復活したかもしれない。
私はその時丁度その場所にいた。

私はこの国の王太子パーシヴァル・フィールド。

その時は王都は晴れていた。
俺はその時はまだ10歳になっていなかった。お付きの者とちょっと下町に散策に来ていたのだ。

庶民の生活を見るのも勉強になると、俺はたまに側近たちに街に連れ出されていたのだ。まさかあんなことになるなんて思ってもいなかった。側近たちもああなるとわかっていたらその日は王都なんかに行かなかったろう。

それはいきなりだった。

とある道を歩きながら、王都で人気のカフェだと説明を受けた店からいきなり凄まじい悲鳴が聞こえたのだ。側近たちは慌てて私を囲んで後ずさった。一人が様子を見に走った。

カフェの扉がぶち壊されて悲鳴を上げて傷だらけの女が飛び出してきた。

「どうした?」
その側近ケインが聞こうとした時だ。

その女とケインが一瞬で弾き飛ばされていた。

「えっ」

俺は何が起こったか、よく判らなかった。


扉から出てきた男はヘラヘラ笑っていた。
そして手をこちらに振りかざした。

「危ない!」
私は護衛たちに押し倒されてのしかかられた。

次の瞬間、その護衛もろとも弾き飛ばされていた。

次に気づいた時には全身血まみれだった。側近たちの呻き声しか聞こえず、私はなんとか立ち上がった。

「殿下、逃げて」
側近の一人が叫んだ。

でも、目の前に狂った男がいるのに、無理だった。
男が俺に向けて手を付き出した。

ヤバイ!

子供心に思った。

絶体絶命のピンチだった。

私は側近に足を引っ張られてこけた。

男の放った衝撃波が襲う。

直撃は免れたが、風圧で飛ばされる。

地面に叩きつけられた。

激痛に体中走り流石に今度は立てなかった。

笑いながら、男がこちらに歩いてくるのが目に入った。


もう終わりだ。と観念した時だ。

視界のはしにこちらに駆けてくる7歳くらいの女の子が写った。見た感じ金髪の可愛い女の子だった。

でもなぜこっちに走ってくる。バカなのか。逃げろよ。
俺は思った。


気の狂った男もにたりと笑った。

「死ね」
そう叫びつつどす黒い奔流を放出した。闇魔術だ。

こいつ、何者だ。俺は更に恐怖を感じた。闇魔術使うやつなんて、魔王くらいしか知らない。最もここ1000年は魔王も出ていないはずだった。


この攻撃を受けたら、女の子は死ぬと思った。

その時だ。

「ヒール!」
女の子が癒しの魔術を放った。

いや、癒やしの魔術はこいつを倒してからだろう。
さすがの俺もそう思った。

しかし、少女はなんと癒しの魔術で闇魔術を弾いたのだ。

そんなバカな。なぜ癒しの魔術で闇魔術が弾かれる? 俺には訳がわかんなかった。

男もキョトンとしている。

「ヒール!」
しかし少女は手を上げて再び癒しの魔術を放ったのだ。いや、だから、男を退治してからだって。
俺のおもいとは反対に、そのヒールで男は吹っ飛ばされていた。

え?何故?

闇魔術の使い手を弾き飛ばすなんて聖魔術くらいしか思いつかなかった。

でも、ヒールは癒やし魔術だ。

違うんだけど。

もう訳がわかんなかった。おそらく少女はまだガキ過ぎてヒールと聖魔術の違いがわからないんではないだろうか?

「ヒール」
再度少女が叫んだ時、闇魔術の使い手は出てきたカフェまで弾き飛ばされていた。

俺にもこの少女が聖女だということはわかった。それも凄まじい力の聖女だ。


次に少女は倒れている俺たちにヒールをかけてくれた。

「俺よりも先にあの男にトドメを刺さないと」
俺は叫んでいた。

女の子が戸惑ったみたいだった。

そうだ、こんな小さい子にトドメを刺ささすよりは俺がやらないと。俺が思ったときだ。

凄まじい闇魔術が少女を襲った。
小女は一瞬で服がボロボロになり顕わになった素肌も傷だらけになった。
横にいた俺も弾き飛ばされていた。


やられたか。

慌てて少女を見ると少女は男と対峙していた。

そう、何故か小女は立っていたのだ。

俺には彼女が金色に光輝いているように見えた。



「ヒール!」
少女が手を上に上げて聖魔術を発動した。
闇の魔術師はその聖魔術で弾き飛ばされていた。文字通りにボロ切れのように。




「貴様覚えてろよ。この魔王様が必ず仕返ししてやるからな」男は叫んでいた。

えっ、やっぱり魔王だったんだ。千年ぶりの魔王宣言だ。

まあ、魔王にしてはえらい弱い魔王だが・・・・

小女は手を上にあげていた。あたかも女神様のように。

神々しかった。

俺にはそこに万物の創造主の女神が立っているように感じた。


「エリアヒール!」
次の瞬間、俺の女神は手をその自称魔王に向けて振り下ろしたのだ。凄まじい金色の浄化魔術の奔流が自称魔王を捕えると空の彼方に魔王を弾き飛ばしたのだった。

幼心に彼女はとても凛々しく美しかった。

と言うか格好良かった。

その凛々しい姿に俺が恋した瞬間だった。

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