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元側妃視点5 アンネの娘の暗殺に失敗し危機に陥ったので、再び魅了を使おうと決心しました

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アンネの小娘の女王への戴冠式が、アンネの小娘の死ぬ時だった。そして、我が息子がこのスカンディーナ王国の国王になる時なのだ。

ここまで苦節15年以上、私の苦労が報われる時が来たのだ。

私は嬉々として、暗殺成功の知らせを今か今かと待ち構えていたのだ。

思えばエスカール王国から、この国の王妃として嫁いできたはずが、いつの間にか側妃にされて、国王にも全く相手にされずに、耐えること2年。ブルーノと組んで弑逆に走らせたものの、何故かブルーノの魅了が切れて、私に反抗して追放されて、何とか新スカンディーナ王国を建国して耐えること15年。この時のために、どれだけ耐え忍び、我慢してきたことか。

その努力がやっと報われる時が来たのだ。

エスカールの魔術師を借りて、選りすぐりの騎士を集めて襲撃させたのだ。必ず成功するはずだった。私はそれを信じて疑わなかったのだ。

しかし、待てど暮せど吉報は入ってこなかった。


そして、ぼろぼろになった魔術師が城に運び込まれてきたのは翌日の昼過ぎだった。

「どうしたのだ。オロフ」
担ぎ込まれた魔術師の元、兄の国王と慌てて駆け寄ると

「襲撃は完全に失敗しました」
その息も絶え絶えな魔術師から衝撃的な結果が伝えられたのだ。

「あれだけの魔術師を向かわせたのだぞ。完全に失敗などありえんだろう」
兄は怒りだした。

「女王に槍が当たりましたが、女王は槍を弾き飛ばしました」
「まさか。槍は転移で送ったのだろうが。それを止められたというのか?」
「はい。女王は凄まじい魔力を持っており、我が魔術の多くは敵女王にやられました」
「そんなバカな。まさか、奇襲作戦が漏れていたというのか?」
「陛下、直ちに国にお戻りください」
しかし、魔術師は兄の言葉に答えることなく、それだけ言うと事切れていた。

「おい、オロフ、しっかりしろ」
兄がいくら叫んでも、二度と魔術師は目を開けなかった。

謁見の間はシーンとした。

私はまさか、襲撃が完全な失敗に終わるとは思ってもいなかったのだ。投入した魔術師の数は50人を下らないのだ。それ以上の優秀な魔術師をアンネの小娘はオースティンから借りていたのか?


「申しあげます」
そこへ兄の元へ斥候兵が駆け込んできた。報告書をエスカールの外務卿に渡す。

「アンネローゼに対する襲撃は完全に失敗に終わったとのことでございます。こちら側の宰相は拘束されました。また、我が国の外務卿代理もアンネローゼ側によって今回の襲撃犯として拘束された模様です」
「何だと。我が国の外務卿代理は関係ないという体で送り出しただろうが」
兄が言うが、

「問答無用で拘束された模様です」
「外務卿、直ちに私の名前で抗議を行え」
兄が外務卿に命じていた。
「陛下。それ以前に問題がございます」
「何なのだ」
「アンネローゼ側は今回の襲撃がエスカール主導で行われたと大大的に主張しており、各国の軍営がが慌ただしくなっているとの報が各国から入っております」
「はああああ、今回は我が国は魔術師を貸しただけだぞ」
「その魔術師が各国王族を攻撃したとアンネローゼ側が主張しているそうです」
「そのようなことはないと外務を通じて各国に伝えろ」
兄は慌てて指示を飛ばしだした。


「申しあげます」
今度は我が国の斥候が報告に来た。

「何事だ」
「はっ、アンネローゼ側の大軍がムホスを出撃したとのことでございます」
「直ちに全軍迎撃用意を整えなさい」
「はっ、判りました」
斥候兵が慌てて出ていった。

「兄上。こうなったらこの地で敵を叩くしかありますまい」
私はまだこの時は負けるとは露ほども思っていなかった。全く。




翌日、私は集まっていたスカンディーナの多くの貴族がいなくなったことに気付いたのだ。

「どういうことなのです。これだけの貴族がいなくなるとは」
私は侍従に叫んでいた。

挨拶もなしに三分の一の貴族がいなくなっていたのだ。このようなことは本来許されるものではなかった。

「申し訳ありません。知らぬ間にいなくなっておりました」
「はああああ、そんな言い訳が通用するわけはないでしょう。全ての城門の警備を厳重にしなさい。勝手に帰るものは領地を没収すると伝えるのです」
私は侍従相手に命じたのだ。これで新たにいなくなる貴族は出ないはずだし、逃げた貴族共も返ってくるだろうと私は楽観視していた。

しかし、翌日にはその侍従までもがいなくなっていたのだ。その上、兄までもが自国が危なくなったから帰ると言い出したのだ。ドクラス王国との国境に大軍が集結しだしたとの報が入ってきたのだ。

もはや踏んだり蹴ったりだった。

しかし、兄は2万の軍を残していってくれたのだ。

それと我軍の貴族たちの軍の2万が合わされば、4万になり、なんとか、アンネローゼの攻撃を抑えられると思っていたのだ。

しかし、我軍の兵士たちは貴族とともに夜陰に紛れて次々に逃走を始めたのだ。

そして、アンネローゼの大軍が現れた時、我軍は既に3万人を切っていたのだった。

こうなったら仕方がない。私はブルーノに使ったのと同じ手を使うことにしたのだ。

なんとしても魅了で敵の大将を味方につけると心に決めたのだ。そのためならばどんな屈辱も飲もうと。
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